中野吉之伴フッスバルラボ

一貫性のあるコンセプトを築き、選手育成を大切にする。生まれ変わろうとするフライブルガーFCのチャレンジ

フライブルガーFCが自分たちで取り組みだした育成改革。

・古豪
・伝統
・名門
・元ブンデスリーガクラブ

そうした言葉や肩書きは、時に諸刃の剣になる。自分たちの現状を冷静に分析し、問題点を洗いざらいにする上で足かせになる。そうした意識が頭の片隅に少しでもあると、わかっていてもなかなか問題点に気づけなかったり、気づけてもなかなか着手できなかったりする。変化のためには、何らかの刺激とキッカケが必要だ。フライブルガーFCにとっての、それは一人の監督の就任だった。

2009年、トップチームの監督として迎えられたラルフ・エッケルトは7部リーグに降格したクラブをすぐに6部へと昇格させた。それだけではなく、彼はクラブが抱えていた慢性的な問題点を見抜き、根本的な構造改革が必要だと主張した。このクラブは何のためにある? 誰のためにある? どんなクラブを求めている? どんなサッカーを目指している? 5年後、10年後のビジョンはあるのか?

「いつかまたいいクラブへ」
「いつかまた上のレベルに」

そうした抽象的な言葉だけで逃げてはならないのだ。では、「いいクラブとは何だ?」「上のレベルとは何だ?」というものを問い詰めなければならない。彼はクラブ首脳陣と長い時間をかけ、これからどういった取り組みをすべきかを整理していった。エッケルトがまず最初に作ったのが年代別のコンセプトだ。

Fussball mit Konzept(コンセプトを持ったサッカー)。

これをスローガンに、一貫性のあるクラブ育成を目指す最初の一歩を踏み出した。それまでのフライブルガーFCでは、年代別のチームごとにそれぞれのサッカーに取り組んでいた。よく言えば、指導者の特徴を信頼した、悪く言えば、現場に放任という形だ。前回のコラムでも触れたが、それぞれのチームがそれぞれ勝つことを考えて練習をし、試合に取り組んでいた。地元ではSCフライブルクに次ぐ強豪クラブ。正直、立地条件的にもライバルクラブが地域に多く存在するわけではない。高いレベルでプレーしたいが、SCフライブルクでプレーするまでではない選手は、自然と試合環境を求めてここにやってくる。彼らに選択肢はそもそも多くはない。乱暴に言えば、放っておいてもいい選手は集まってくる。

そうした環境に甘えていた。

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