中野吉之伴フッスバルラボ

選手のサッカーに取り組む姿勢とクラブが求める共通理解の言語化との関係とは?

 フライブルガーFCは「どんなサッカーを求めるのか」

その命題に対し、クラブは「極端なまでの攻撃サッカーの追及」という方向性を打ち出したわけだが、それは解放されたサッカーへの渇望の裏返しなのかもしれない。

その内容は以前のコラム「ドイツサッカーの環境から考える選手成長に対する在り方とは?」で書き綴った当時ユースコーディネーターを務めていたマリオ・ビットのコメントから垣間見られる。

「我々はオフェンシブで魅力的なサッカーに挑戦し続けたい。トップチームは現在6部。目標はまず5部昇格で、ゆくゆくは4部昇格も視野に入れたいと思っている。でも、それ以上に大切なのが『自分たちが目指すサッカーを具現化し、育成にも落とし込んでいくこと』だ。

将来的な理想の状況はトップチームの選手全員を自前の育成で育て上げることだ。そのために大切なのがサッカーを楽しめる環境を練習から作ることだよ。人は一日に約3万回思考すると言われる。そして、そのうちポジティブな思考をする割合が多ければ多いほど、物事の習得スピードは上がっていくとされているんだ。

我々のクラブでは練習中の笑いを奨励している。何をやっていいわけではないし、他の子どもの邪魔をしていいというのではないよ。規律というものはちゃんと求めている。しかし、新しいことにチャレンジしたり、すごくいいプレーが出たりしたときに笑顔が出るのは最高じゃないか。他と同じことをするのではなく、我々はもっと柔軟にもっと創造的に、子どもたちのアイディアを受け入れられるようなクラブでありたいんだ」

子どもたちがグラウンドに来る。はやる気持ちを抑えきれず、最後はダッシュでやって来る。スパイクを履いてボールを持つと、すぐに駆け出す。全力でボールを追いかけ、体をぶつけ合い、ゴールを狙い合う。でも、いつの頃かそこに《待った》をかける大人が現れる。

うまくなるためにはこうしなさない。
成功するためにはあれをしてはダメ。
静かに話を聞きなさい。
無駄口を聞いてはいけない。
言われたことをしっかり守りなさい。
一日中サッカーのことを考えなさい…等々。

もちろん規律は大切だ。プレー面においても、人間関係においても。サッカーのメカニズムを知り、簡単な戦術から学んでいくプロセスは欠かせない。そして、トレーニングにマジメに取り組むのは必須だろう。でも、マジメに向き合いたいと思ってやっている姿と、マジメにやらないといけないと思ってやっている姿は同じではない。そこに気がついているだろうか。

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