ザ・J2クラブの水戸が首位。2000年に取材した「水戸vs浦和」から思うこと(J論)

中野吉之伴「子どもと育つ」

人の縁とは自然に出来上がるものではない。動き出してつながりあうことで初めて縁となる。【フリーコラム】

日本からドイツに戻って1週間。時差の影響はもうないし、こちらでの日常生活リズムに切り替わっている。ただのどを痛めしまい、なかなか咳が止まらない。今日はこれからお医者さんのところに行ってくる予定。体が完調でないと頭の働きも鈍ってしまう。日本各地を回りながら、「体と心と頭と人間関係のケアがとても大切」と力説しているのだから、まずは自分がしっかり実践しないと。

さて、滞在終盤は毎日のように予定があり、初めて訪れる場所でも観光する時間もなかなか取れなかった。正直各地の名所をめぐったり、一人でぼーっとする時間を取ったりというのも確かにしたい。島根に行ったのなら出雲大社は行きたいし、大分に行ったのなら別府温泉とかにも行ってみたい。でもそれ以上に現地の人と触れ合い、直接密に話をし、真剣に議論をして、自分たちのあり方を語り合えることの方が素晴らしいと思うし、事実素晴らしかった。どこも行くことができて本当に良かったと思っている。

現代は情報社会と言われている。ニュース系サイトを追えば最近の流行りはなんとなくわかる。ネットで検索すれば多くの情報に出会える。ユーチューブをめぐればいろんなトレーニングメニューを見ることもできる。

でも情報はそこにあるだけでは情報のままだ。自分のプラスにするために働きかけがなければならない。目の前にいろんな素材が並んでいても、その料理法がわからなかったら、そしてそれぞれに合った好みの味がわからなければ、本当においしい食事を提供することができないように、私たちはそうした情報を、どのように、どうした人を対象に、いつ、どんな形で提供するのかを身につける必要があるのだ。

できるだけ多くの人に届けたい。そうした思いをもってまっとうに記事やコラムと向き合っている人もたくさんいる。でも生真面目な取り組みだけだと敬遠されてしまう。ページビュー数を獲得しやすいキャッチーな見出しをつけて多くの人に関心を持ってもらい、読みやすくて、聞き入れやすくて、納得してもらいやすいコラムを書くことの大切さもあるだろう。でもそれだと中身がどうしても薄れてしまう。そうした葛藤の中でもそれぞれが最良のアクセスを見つけていかなきゃだし、みんなそうしようと取り組んでいるはずなのだ。そうですよね?それがないと、ただの惰性になってしまうからだ。

ではそうした術をどのように伝えていけばいいだろうか。いろんな人がいろんなやり方で試みている。ネットコラムにはいろんな”メソッド”や”○○式”が踊っている。なるほどと思われるものもたくさんある。ただどうしたって一方通行になってしまう。こちらから本当に伝わったかどうかを確認することもできないし、向こうから本当にこういうニュアンスでいいのかを確かめることもできない。できなくはないだろうけど、やっぱりやりづらい。

だから私はできるだけ自分の足で現地に赴き、直接交流できる機会を大事にしている。一回の交流で実際にできることは多くはないかもしれない。来てくれた方皆さんが満足して帰られるものを提供できているかと言われると、まだまだ精進しなければならないことは重々承知している。それでも、初めて見る子どもたちとのトレーニングでも自分ができる全力で向き合い、可能な限りすべての子どもたちの心と触れ合い、笑顔で伸び伸びと解き放たれた空気感の中でサッカーをしてもらい、その中でこそ本当に成長できるんだというのを実感してもらい、それを見て周りの大人が子どもたちにとって大切なものは何だろうかというのをもう一度じっくり考えるきっかけを持ってもらい、一緒にお酒を飲みながら、ご飯を食べながら、次のステップに向けて語らい合うというのは、とてもとても大切で意味があり、意義があることだと思っている。

私がこうした活動を始めたのは5年前。息子たちを現地の小学校で育てることを決意した時期だ。ドイツに腰を据えてやっていく一方で、日本における活動の可能性を探っていた。どうすればもっと深いところまで伝えていくことができるだろうか。執筆活動の枠を増やそうといろいろなメディアにあたったりもした。そうした中、知己の仲である宇都宮徹壱さんに「ドイツのアマチュアサッカーに関する講習会をやってみたいのですが、相談にのってもらえませんか?」と尋ねてみたところ、小澤一郎さんを紹介してもらえた。そしてAllenatore主催で開催してもらえることになった。14年1月12日東京の落合南長崎のボンフィンフットボールパークにあるセミナールーム。多くの参加者の中でドイツサッカーの現状を緊張しながらも熱っぽく話したことを今もよく覚えている。

「ドイツサッカー躍進の深層に触れる」(講演会リポート)

今思うとこの第一歩がやはり重要だった。この講演会に参加していただいたCPサッカーの松村健一さんとつながり、翌年帰国をした際に松村さんと一緒に新横浜で講習会を開いた。そしてこの講習会に足を運んでくださった尾崎真さんを通じて香川県高松市のサッカー指導者香川敬典さんとつながり、高松でのサッカークリニックが実現した。高松でのサッカークリニックに来てくれた徳島の日置浩一郎さんと縁ができ、徳島での指導者講習会が開催されるようになった。松村さんのチームの練習に参加した時に知り合った根津美満子さんとは日野市で一緒に活動するようになった。倉本和昌さんを引き合わせてくれたのも松村さんだった。

人の縁というのは不思議だという。私もそう思う。でも縁というのは名刺交換をするだけでは生まれない。自然発生的に、偶然にというものもあるかもしれない。でも私はどちらかが動き出し、もう片方がそれに応えるというつながりがなければ、心の結びつきにはならないと思う。だからこそ、自分から動いて、足を運び、心を込めて伝えていくということをこれからも続けていきたいと思うのだ。

SNSだって使い方次第で大きなつながりを自分たちで作り出すことができる。大豆戸FCの末本亮太さんとはツイッターでのやり取りがきっかけで交流を持ちことができた。長崎県佐世保市のフットサル指導者中嶋孝行さんにはツイッターでの僕のつぶやきに反応していただき、現地で講習会を開く運びとなった。大分中津市FCジュニオーズの浦本雅志さんは私の著書を読んでくれ、このWEBマガジンでも編集者として私を支えてくれている木之下潤さんと直接会って熱く語り合ったという話を聞いて、自分からコンタクトを取ろうと思った。それはお互いがそれぞれそれまでに行ってきた確かな活動があるからこその結びつきだったと思う。だからひかれあい、すぐに打ち解け合うこともできる。そうしたものはSNSでの発信や反応を見ていてもある程度は自ずとわかってくるものだろう。

今回の活動では茨城県桜川市のきたぐりユナイテッドの大山宏和さん、島根県雲南市大東FCの横山武志さん、長崎県長崎市長崎ドリームスの安生地智廣さん、熊本県熊本市でペルジャール事業代表を務める横山紀和さん、新潟県長岡市長岡SSSの本間一郎さんとはそれぞれまだ一度しかあってなかった間柄だったのに、快く僕の活動を受け入れてくださった。こうしたつながりがまた次の扉を開いてくれる。色々な人の支えがなければ今の自分はない。感謝の思いでいっぱいだ。

「ドイツが」「スペインが」「イタリアが」「ブラジルが。」いろんな声がある。学ぶべきものはたくさんあるし、そうした国から学ぼうとする気持ちは持ち続けていかなければならない。でももっと私たちは自分たち自身を見つめてみることが大切なんだと思う。日本にも素晴らしい取り組みをしている素晴らしい大人がたくさんいるんだ。お手本となり、見本となる存在がたくさんいるんだ。そうした人たちを知り、触れ合い、影響を受け、交流を持ち、自分たちの環境を自分たちでよくしていく。それはできることなんだ。そしてその先にあるものこそが本当の意味での日本サッカーなのではないかと思うのだ。

私たちに必要なのは「ジャパンズウェイ」という標語なんかじゃないんだ。

 

 

 

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