中野吉之伴フッスバルラボ

梅村「学校だけじゃなくて、いろんなコミュニティで風通しが悪いってことですよね?」

 ▼今月のインタビューは北海道教育大学大学院生の梅村拓未(24)くんをお届けしたい。

北海道出身の梅村くんは、岩見沢市のスポーツクラブ『sports life design iwazawa』で活動している。同クラブでは、ドイツ・ハイデルベルク発祥の『バルシューレ』と呼ばれる運動プログラムを子どもたちに提供し、サッカースコールも開講しているそうだ。

梅村くんは昨年7月から1年間、本場でバルシューレを学ぶために留学中。私とは共通の友人を介して、つながりが生まれた。一度ハイデルベルク近郊のマンハイムで昼食を一緒に取りながらいろいろな話で盛り上がった。話をしていると、素直な見識を持ち、ドイツでの活動も意欲的だったことが伝わってくる。帰国前にフライブルクにも来て、私が指導するフライブルガーFCやSVホッホドルフの練習を見学させてほしいとのことだったので了承した。先日我が家に2泊して子どもたちとも意気投合し、楽しく遊んでいた。

そんな梅村くんとのディスカッションを紹介したいと思う。サッカー、教育、ドイツと日本と、様々なテーマをもとに互いの立場、視点が興味深く交差した内容になったので、ぜひご一読願いたい。

梅村「ドイツに来てみて、すごく『認知』を大事にしているなって感じることが多いんです。日本だと、その認知に関するトレーニングメニューって見たことがなかったんですけど、オシムさんとかやっていましたよね?」

中野「オシムさんはね、間違いなく取り入れていた。というか、当時はそこまで気づいていなかったと思う。例えば今、認知関係の勉強をしている人がオシムさんのトレーニングを見たら、奥深さにすごくビックリすると思うよ。こんな意図もあったんだとか、どんどん出てくると思う」

梅村「あのとき、『考えるサッカー』というのがモチーフみたいになっていましたけど、そういうわけではなかった?」

中野「考えるだけじゃないということだね。認知ってその前のところだからね。オシムさんのは色とか道具とかルールを使わないようなトレーニングにも、必ず認知・決断という要素が取り込まれていたと思うんだ。代表の練習を何度か見たことがあって、例えば見た目にはシンプルな3対1からシュートをやっているんだけど、『どうすればより高い可能性を見出すことができるか』を要求していた。3対1だから、パス2本くらいで揺さぶればすぐにシュートまで持ち込めるんだけど、でもオシムさんは『誰でもできることを誰もができるような形でやって何の意味がある?』みたいなアプローチをしていたのが印象的だった。

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