中野吉之伴フッスバルラボ

現場にこだわる理由。スタジアムの熱さ、怖さ、もろさ、温かさ、鋭さを届けたい【ブンデスリーガ開幕戦観戦記】

▼ブンデスリーガが開幕した

正直日本人選手が少なくなったことで日本からの注目度は下がっているかもしれない。確かに一時期に比べたらブンデスリーガに所属する日本人選手の数自体は減った。現時点ではブレーメンの大迫勇也、フランクフルトの長谷部誠と鎌田大地、2部リーグを含めたらシュツットガルトの遠藤航、ザンクトパウリの宮市亮と5選手が所属している。10人前後いるのが通例だった以前までと比べたら、少ない。とはいえ大迫、長谷部は完全なチームの主軸、鎌田、宮市はレギュラー組。遠藤に関してはまだ加入後間もないのでバックアップの立場だが、けが人を多く抱えるチーム事情を考えると、ここから出場機会をつかめる可能性は十分にあるはずだ。それぞれがどんなシーズンを送るのか、とても楽しみだ。

また世界屈指のレベルを誇るリーグ、観客動員数世界一のリーグを日本人選手の一挙手一投足に追いかけるだけではもったいない。「日本人選手がいないから」という理由でバイエルン対ドルトムントの2強対決、ドルトムントとシャルケのルールダービーを見逃すのはもったいない。世界中が注目するビックマッチだ。あるいはユリアン・ナーゲルスマンが監督に就任したライプツィヒ、昨季オーストリアブンデスリーガのLASKリンツで旋風を巻き起こしたオリバー・グラスナーが指揮するヴォルフスブルク、ダイナミックで繊細なサッカーを披露するザルツブルクのマルコ・ローゼを迎え入れたボルシアMG、クラブアイデンティティの再構築のために基盤を作り上げなければならないシャルケのダビド・ワーグナーなどなど、それぞれ優秀で興味深い指揮官が今季はとても多い。

それにサッカーとは選手だけで行われるものではない。選手層の質と量、あるいは戦術論だけでは語ることはできないのがサッカーというスポーツの魅力だ。ファンの存在、スタジアムの雰囲気。試合の行方を左右させるほどの情熱のほとばしりがそこにはある。選手の力を無尽蔵に解放することがあれば、何もできないほど破滅に追い込むこともある。現場にこだわる理由はまさにそれだ。現場の熱さ、怖さ、もろさ、温かさ、鋭さ。そうした空気をできる限りストレートにお届けしたいと思っている。

当WEBマガジンでは試合当日のスタジアムの動画映像などをアップした記事をあげていこうと思っている。現場の雰囲気を楽しんでいただけたらうれしい限りだ。今回はブンデスリーガ開幕カードで観戦したバイエルン-ヘルタ、ブレーメン-デュッセルドルフ、フランクフルト-ホッフェンハイムの観戦記をお届けしたい。

▼開幕戦の雰囲気は独特

アリアンツアレーナへの最寄り駅にいつもの高揚感が戻ってきた。町中から乗った電車を降りて階段を上がると、応援グッズやソーセージを売る屋台が並んでいる。小さな子どもを連れたお父さんがその前に並び、どれを買ってあげようかと吟味している。初めての観戦だろうか。その子は興味深そうに周りをきょろきょろしている。手渡されたマフラーをうれしそうに首に巻くと、手を取り合ってスタジアムへ向けて歩き出した。

記者席につくと、立ち上がってウォーミングアップをしている選手を眺めていた。そして思った。3か月前、ここでフランク・リベリーとアリエン・ロッベンの二人が最後の試合を戦ったんだな、と。試合前に大きな声援があった。涙を浮かべたリベリーの映像が大型ビジョンに映し出された。ファンは温かい拍手をいつまでも、いつまでも送り続ける。そして、時代を築いた英雄のラストマッチは、それぞれが出場し、それぞれがゴールを決めるという、これ以上ない最高の形でフィナーレを飾った。

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