中野吉之伴フッスバルラボ

池上正主催ドイツ指導者研修レポート「百聞は一見に如かず。それならドイツに行ってみよう」

▼池上正さん主催ドイツ指導者研修アテンド

8月20日(火)から26日(月)まで普段から親交のある池上さん主催のドイツ指導者研修をアテンドから担当した。最終日までいくつかの小さなアクシデントはあったものの、全体的にみれば順調に工程を進めてこれたと思われる。

この研修の一番の目的はグラスルーツにおけるドイツのサッカーへの取り組みを実際に間近で感じてもらうこと。昨今、様々な情報を手に入れることができる。私にしても、池上さんにしても自身の本の中で、あるいはいろんな媒体でのコラムを通して、「現場はどうあるべきか」を伝え続けている。全国を回って各地で講演会や指導実践を繰り返している。それぞれの会場にはいつも多くの方々が足を運んでくれるし、「なるほど!確かにその通りだ」と感銘を受けて、実際に自クラブで積極的に行動されている方々も間違いなく一定数いる。

ただ、多くはまだまだ変わらない。

クラブ内の1-2人がやり方を変えようとしても、それが他の指導者にまで伝播していかないという日本の現場の難しさ。そこには、言わんとすることはわからないでもないが、目の前の試合に勝つことにどうしても意識がいってしまう人の方が圧倒的に多いこと、そしてこれまでのやり方、あり方への依存度が多かれ少なかれあるのではないかと思うのだ。

ミスをすることを嫌がる気質、先天的にも後天的にも。それは新しいことへの取り込み時にも影響を及ぼすものだ。これまでやってこなかったことをやってみるということは、自分の中に経験がなく、だからうまくいかないことを考えて不安になってしまう。だからやり方を変えるとしても、あくまでも自分の持つフィルターを疑ったり、そこを大きく変えようとはしない。

こうした傾向を一気に変えるにはもう大きな衝撃を受けてもらうのが一番だ。だから、もう直接現場を見に行きましょう!と池上さんも立ち上がったというわけだ。

今回で3回目となる研修。第1回は2日間同行し、一緒にブンデスリーガの試合を観戦して、ドイツサッカーに関するレクチャーをさせてもらった。2年目はレクチャーに加え、通訳兼任で2日目から5日まで同行。旅行社が作成してくれた旅程通りに動き、道中参加者の皆さんといろんな話をしながら、こちらでの取り組みについてを何度も繰り返し伝えさせてもらった。

これはとても意義のある研修だと思っている。いろんな方が「研修」「視察」ということでドイツに来ていることは知っている。だが、トップトップのブンデスリーガの施設や練習・試合を見学して「すごい!すごい!」と感嘆するだけではなく、グラスルーツにおけるドイツサッカークラブのあり方、育成年代でのサッカートレーニングと試合環境、それに対してドイツ社会がどんな関わりをしているのか、育成指導者をどのように育んでいこうとしているのか、というところまで掘り下げてのものとなっているだろうか。表面だけではなく、裾野まで可能な限り幅広く、奥深く、と。

この研修をさらにもっといい形にできるんじゃないかなと思い、今回は旅程全てを私の方でアレンジさせてもらった。普通こうした研修ツアーとはあらかじめ旅程が定められており、その通りに動く。だがこの池上さんとの指導者研修は違う。

参加者が決まってから、旅程をアレンジする。参加者からのリクエストも受けて、それをプランに盛り込み、スケジュールを調整していった。ドイツは休暇期なので先方との連絡が取りにくい時期ではあったが、おかげさまでとても密度の濃いスケジュールを作成することができたと思う。

そこで何回かに分けてハイライト形式で研修内容について紹介していきたい。

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