中野吉之伴「子どもと育つ」

ダニエル・ニジェコブスキ(DFBプロコーチライセンスインストラクター主任)「指導者はいつ、どこで、どのようにアプローチすべきか」「選手は選手の決断を実践するという原則的メカニズム」

試合におけるコーチングとは?

指導者の役割は多岐に及ぶ。どの年代を見ているのか、どのカテゴリーのどのレベルの選手を見ているのかで、選手に必要な情報内容や情報量は異なる。サッカーを始めたばかりの小さい子に、サッカー歴10-20年の大人と同じことを求めるのは酷でしかない。だから、こちらからのアプローチの仕方はつねに考慮して変えられなければならない。だが、どんな時でも指導者がもつべき姿勢には変わりがあってはいけないのではないだろうか。それはどうすれば目の前にいる選手をより成長させることができるだろうという視線に基づいた考察だ。

今回は7月に開催された国際コーチ会議より、ドイツサッカー連盟(DFB)プロコーチラインセンスインストラクター主任ダニエル・ニジュコブスキの講演を取り上げてみたいと思う。

ニジェコブスキは監督がどのようにダイナミックにアプローチをして、選手・チームの動きを活性化させ、ポジティブな影響をもたらすことができるのか、についてまず話し出した。例に挙げられたのはブンデスリーガ2部のシュツットガルト監督ダニエル・ワルターが見せた、開幕戦での振る舞いだ。

ワルターに関してはあまり知られていないと思うので、ここで簡単に紹介しよう。選手時代はフェアバンツリーガ(6部リーグ)所属のASVドゥルラッハでプレーをしていた。当時からピッチ上で他の選手に指示を出し、勇敢なプレーを見せていたという。ワルターは「自分がピッチ上で実践できないことを、監督としてうまく選手に伝えていく才能があるかもしれない」と気づき、指導者への道を歩み始める。最初のポストはカールスルーエSCの育成チーム。その後バイエルン・ミュンヘンの育成指導者として移籍を果たす。当時移籍金は20万ユーロ(日本円で約2400万円)かかったという。それだけのお金をしっかりとかけて、質の高い指導者に投資すべきという意味をわかっているということでもある。ただ育成指導者の獲得にそれだけのお金が動くことは、やはり日本の現場から考えると驚きではある。

バイエルンの決断は間違っていないことはすぐに証明される。17年、ワルターはバイエルンU17をドイツ王者に導いた。その後4部リーグ所属のセカンドチーム監督の座につくと、2位に。3部昇格を果たした。翌シーズンは2部リーグのホルスタイン・キールに移る。昇格クラブながらザルツブルクからレンタルで来ていた奥川雅也ら若手を育てながら6位でフィニッシュ。そして昨季2部に降格したシュツットガルトが昇格へのキーマンとして迎え入れた。そんなワルターは試合中にどのように選手にアプローチをしているのだろうか。

壇上のスクリーンには2部開幕戦の映像が映し出された。対戦相手は同じように2部降格となってしまったハノーファー。監督はミルコ・スロムカ。かつてシャルケでも指揮を執ったことがあるベテラン監督だ。温厚で良好な人間関係を築き上げる腕に長けた指揮官として評価されている。

「これはどちらが良くて悪いという話ではなく」

ニジェコブスキはそう前置きをしたうえで映像をスタートさせ、両者の違いについてを説明しだした。そのくらい両者の立ち振る舞いは対照的だった。

(残り 2469文字/全文: 3787文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

日本サッカーの全てがここに。【新登場】タグマ!サッカーパック
1 2
« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ

日本サッカーの全てがここに。【新登場】タグマ!サッカーパック