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中野吉之伴「子どもと育つ」

ドイツでの子育て、納得いかないこともいっぱいある。万年筆の話・前編

こんにちは。ウェブマガ編集・管理担当のゆきのです。

毎週水曜日の無料コラムでは、ドイツで子どもと暮らす中で見聞きし、経験し、考えたことを中心にコラムを書かせて頂いています。ドイツ生活にすっかりなじんだ面もありますが、一方で、日々成長する子どもとの生活に関しては日々試行錯誤。困惑すること、悩むこと、意味が分からずモヤモヤすることも多々あります。

今週は、そんな納得のいかないエピソードと、そこから私なりに考えたことをお届けします。サッカーの話からは少し離れますが、「ふーん、そういうこともあるのか…」という気軽な気持ちでお読み頂けたら嬉しいです。

9月に6年生になった長男が、新学期早々、万年筆を壊しました。ペン先から床に落としたそうで、無残に曲がっています……あぁぁぁ。購入した店に持っていきましたが、修理や部品の交換はできないそうで、同じものを買い直すことになりました。ドイツの文具店には、子ども向けのカラフルで持ちやすい万年筆を取りそろえたコーナーが必ずあります。お値段は1本10~25ユーロ程度(約1200円~3000円)。大切に使ってくれるならいいのですが、頻繁に壊されたり失くされたりすると正直痛い出費です……。

6年生で万年筆?と思われた方もいると思います。日本で万年筆というと、文具にこだわりのある大人の方が持つ物という印象がありますが、実はドイツの小学校では2年生から3年生にかけて万年筆の使い方を習い、その後の学校生活でずっと万年筆を使用していくのです。小学校に入学し、まずは鉛筆の持ち方、その後で文字や数字の書き方…というところまでは日本と同じなのですが、その後、ドイツの子どもはかなり早い段階で鉛筆をほぼ卒業してしまいます。作文も万年筆。算数も万年筆。小・中・高と、ずっと鉛筆やシャープペンシルを使い続ける日本に比べると、ドイツの子どもが鉛筆と消しゴムを使う時期は、小学校生活の序盤でほぼ終了します。その後はせいぜいメモをしたり、図工の時間に下絵を描いたり、算数で図形を書いたりするくらいでしょうか。代わりに筆箱には万年筆とインクカートリッジ、そしてインク消しがスタンバイすることになります。ちなみに現在のおじいちゃん・おばあちゃん世代が子どもの頃は、まだつけペンが使用されていたそうで、今でも文具店の片隅にはつけペンとガラスビン入りのインクがちゃんと置かれています。

万年筆で書かれた文字はもちろん消せません。専用のインク消しも売られていますが、消せるのは1回だけ。同じ箇所を2度間違えたらアウトです。修正液や修正テープもありますが、こちらも間違えれば間違えるほど紙は汚くなっていきます。まだまだ書き間違えるのが当たり前の小学校低学年に、なんでわざわざインクで書かせるんでしょう!?鉛筆と消しゴムなら、もっと簡単に消すことができるのに。

ドイツ語で「万年筆 小学生 なぜ」で検索してみると、同じような親御さんの悲鳴がわんさか見つかりました。なにしろ万年筆は繊細な文具です。そして相手は元気いっぱいの小学生。すぐ壊れる。すぐ失くす。書き間違えても鉛筆のようには消せない。手や服やノートがインクですぐ汚れる。書いたところはほんの少し濡れただけでにじんでしまうし、万年筆のキャップがきっちりしまっていなかったために、ランドセルの中身がインクまみれの真っ青に!という大惨事も、残念ながらよく聞く話です。悪戦苦闘しているのはうちだけじゃなかった。それにしても涙が出てきそうな話ばかりです…。

日本と同じように、ドイツでも手書きが必要な場面は減る一方。手書きの場面でも使われるのは大半がボールペンです。大人になっても日常的に万年筆を愛用している人なんて、ごくごく少数派です。単刀直入に「どうしてこのご時世に万年筆を使う必要があるんですか?はっきりした理由はあるんですか?」と質問した親御さんがいました。次男が小2だったときの保護者会でのことです。担任の先生は一瞬ののち、きっぱりと「理由はないです」と答えました。まさかの回答に静まりかえる教室。しかし、はっきりした合理的な理由は本当にないのかもしれません。というか、合理的ではないというところが理由なのかもしれません。

我々日本人にとって、筆と墨がもう日常のものではないように、インクとペンで書くという非日常的で特別なことを子どもにさせることで、例えば「伝統」や「文化」というものを伝えようとしているのでしょうか。確かに、そこには合理的な実用性の有無を越えた意義がありそうです。日本の子どもが毛筆で書写をするように、ドイツの子どもも万年筆の使い方を教わる、というわけです。

うーん、でも、それなら書写の時間を設ければいいのでは?日本に置きかえて想像してみると、「筆と墨が日本の伝統だから」と小2から全ての科目を筆ペンで書かせることになったら、ものすごく大変ですよね。特別感のある筆記具をどうして日常使いにしようとするのか…インクの染みと書き間違いだらけの子どものノートを見るたびに頭痛がします。鉛筆だったらこんな苦労なんかしなくていいのに。何でこんなことしなくちゃいけないんだよう…とモヤモヤしていたところへ、1つの興味深い記事を見つけました。次回へ続きます。

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