中野吉之伴フッスバルラボ

ハーゲドルンさんとの質疑応答「次世代の指導者の方々が、年代に応じた最適な取り組みということをどんどん実現していってくれると信じている」

前々回のコラムではミッテルライン地方サッカー協会の専任指導者ベレーナ・ハーゲドルンさんからのレクチャーの様子をお届けし、B級ライセンス講習会における指導者育成のあり方を紹介した。今回はそのレクチャー後に行われたハーゲドルンさんとの質疑応答をこちらでアップしたい。

ドイツにおいて、地方の協会として、どんな取り組みを大切にしているのか、また彼女自身がサッカーをどのように受け止め、向き合っているのか。そこにはとても興味深い答えがあると思うのだ。

【質疑応答】
勝つ・負けるということをどうとらえているのか?サッカーに向き合うという話がありましたが、そのなかでチームが勝つ・負けるということを、いつ頃いうようになるのかという点は?
「成人サッカーともなると難しくなるのもわかります。お金もいろいろと動く。チームの成績うんぬんでスポンサー獲得に影響を及ぼすということもありますから。

ただ育成段階では子どもたちの成長に向き合うということが何よりも大事です。育成においては間違いなく選手をどのように育成するのか、彼らがどのように成長するのかという点が最も重要です。試合に出られないと成長しませんよね。ではそのためにできることは何でしょうか。

みんなが試合にでられるような試合環境を整理することが大切です。彼ら、彼女らがつねに成長できるチャンスを得られているかどうか。そのためにどんなアプローチがとられているか。

ドイツでもまだまだ多くの監督が勝ちにこだわってしまうという現実もあります。U15やU13チームどころか、U10やそれこそ幼稚園チームでも勝つことで喜びを見出す人はどうしてもいます。1-0で勝つだけでは満足せずに、5-0、10-0で勝つためのサッカーを強いる指導者もいるわけです。

自己満足に浸る指導者はどうしたっているんです。でも、その代償としてベンチにはプレーすることが許されない選手がいまでもたくさんいるわけです。彼ら、彼女らはどうなりますか?試合に出なければ成長するなんてことはない。サッカーへの気持ちもどんどん薄れていってしまう。

それは悲しい現実として実際にあることだけれども、自分たち協会のスタッフはそういったことへのアプローチを大事にして、何のために育成をするのか、何のためにサッカーをしているのか、何のために指導者がいるのかというところを掘り下げて、強調し続けていきたいです。

だからこそ、いま指導者育成において、育成年代ではどんな指導者が求められていて、どのように子どもたちと向き合うべきかを辛抱強く伝えていくことが非常に重要なのです。そうすることで、次世代の指導者の方々が、年代に応じた最適な取り組みということをどんどん実現していってくれると信じています」

(残り 3713文字/全文: 4843文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

日本サッカーの全てがここに。【新登場】タグマ!サッカーパック

会員の方は、ログインしてください。

1 2
« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ