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中野吉之伴「子どもと育つ」

ベルリンの壁崩壊30年、スポーツと平和を考える。

こんにちは。水曜無料コラム担当のゆきのです。

今日はまずこちらの動画をご紹介します。ドイツ代表監督であるヨアヒム・レーヴが出演する、フォルクスワーゲンのCMです。

レーヴの運転する車が、秋の深まるベルリンを走り抜けていきます。2019年の穏やかな街の風景に、ベルリンが東西に分断されていた時代の音声や画像が、ときおりフラッシュバックのように差し挟まれます。

突然、ピーという警告音とともに、障害物を感知して停まる車。急停車に驚いたような表情のレーヴ。

Autos können Mauern erkennen.
Menschen können sie überwinden.

車は、壁を感知できる。
人は、それを乗り越えることができる。)

というメッセージが流れて、車は再び走り出します。

車が急停車したのは、かつてベルリンの壁が存在していた場所でした。

来年に開催される欧州選手権と、ベルリンの壁崩壊30という2つの背景を元に制作されたこのCM、いかがだったでしょうか。ご存知の通り、次回の欧州選手権は12ヵ国で分散開催されるため、CM内では“国境のない欧州選手権”と表現されています。

1989年当時、私は小学生でしたが、ベルリンの壁崩壊を伝えるニュースのことはおぼろげに覚えています。息子たちは、当然東西が統一された後のドイツしか知らないわけですが、昨年家族で夏休みにベルリンを訪れた際には、先ほどのCM登場する壁の跡や、旧東ドイツ時代を象徴するような建造物などに触れ、歴史に思いを馳せる時間を作りました。

ドキュメントセンター「テロのトポグラフィー」。ここには、かつてナチス政権化のゲシュタポ(秘密国家警察)、SS(ナチス親衛隊)、SD(親衛隊情報部)の本部がありました。まさにナチスの中枢だった場所です。また、 2次大戦後はここにベルリンの壁が築かれ、現在も200メートルほどの長さに壁が残っています。東西ドイツ統一後、この場所は歴史の記憶を後世に伝え、惨劇を決して繰り返さないための資料館として使われています。

ナチス時代の建物は敗戦後に取り壊されたため、現存していませんが、東西ドイツ統一後に跡地の発掘調査が行われた際ゲシュタポ本部の地下牢の一部が発見されました。この地下牢は現在は屋外展示場として利用され見学できるようになっています。

カイザー・ヴィルヘルム記念教会です。ちょうど2018年の欧州陸上選手権開催前だったため、周辺はにぎやかに飾り付けされていましたが、教会そのものは第2次大戦中にイギリス軍による空襲で崩れたままの姿で保存されています。

2016年にはこの近くで開かれていたクリスマスマーケットを標的としたテロが起こり、その悲劇を伝える場所ともなっています。現場の地面には追悼のためのプレートが埋め込まれています。写真を撮るのは控え、家族で手を合わせ、黙祷してきました。

ベルリンを訪れたのには、もちろん動物園や博物館といった楽しい観光スポットを回る目的もあったわけですが、その合間に、子どもたちに過去の歴史を伝える時間を持てたことで、子どもの成長を強く感じることのできた旅になりました。彼らに何がどれほど伝わったのかは外からは推測するしかありませんが、真剣に理解しようとしてくれていたのは間違いないと思います。決して明るくも楽しくもなく、むしろ目を背けたくなるような出来事を伝える場でしたが、だからこそ、子どもたちの世代では決して繰り返してほしくない。過去の負の遺産に触れた日のことを、彼らがどうか心の片隅にでも記憶していてくれればと思います。

先日のラグビーワールドカップでも、スコットランド代表が選手・スタッフ全員で長崎の原爆資料館を訪れるなど、スポーツという枠を超えて、歴史の重みと向き合う姿勢を見せてくれました。

このコラムを書いているちょうど今日も、東京オリンピック世代の日本代表が、強化試合の行われる広島で平和公園を訪れたとのこと。原爆慰霊碑に献花したり、被爆者から体験談を聞くなど、平和に向けて思いを新たにしたとのニュースを目にしました。

子どもも大人も夢中にさせてくれるスポーツ。でも無邪気にボールを追いかけて走り回ることなんてできなかった時代が、ドイツにも日本にも確かにあったのです。その事実を受け止め、次の世代に引き継いでいくことの大切さを、改めて胸に刻むきっかけとなった1本の動画でした。

今週もお読みくださりありがとうございました!来週もよろしくお願いいたします。

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