中野吉之伴フッスバルラボ

フットボナウトとホッフェンハイム。最新トレーニング機器導入の決断要因は「勇敢に」「革新的に」というクラブ哲学

▼ホッフェンハイムのラファエル・ホフナーさんインタビュー完全版

スポーツとイノベーションはどんどん密接な関係になってきている。ドイツにおいてその先任者といえるホッフェンハイムは積極的に革新的な技術の導入を進めてきた。少し前まではデータ解析や動画分析などはまだ一部のマニアな世界のものと思われていたかもしれないが、今ではどのブンデスリーガクラブも本格的にアナリストを雇い、様々なシーンで必要とされている。トップチームだけではなく、育成においても有用な活用法をそれぞれが模索しており、サッカー界においてアナリストの存在はすでに欠かせないものになってきている。

2015年、フットボリスタの本誌特集用にスポーツイノベーション部門チーフのラファエル・ホフナーさんを取材し、さらにフットボナウトの体験もさせてもらえた。見るとやるとでは大違い。たった一度少しだけやっただけなのに、すごく興奮を覚えた。そのことは今も感覚として残っている。ハイテクイノベーションをテーマにしながら、話は人のあり方、接し方、かかわり方についてに広がっていく。技術があればなんとかなるわけではない。最終的にはやはり人の取り組みが重要になる。そんなことを改めて感じさせてもらえた。本誌に寄稿した原稿でも非常に興味深く、示唆に富んだホフナーさんの言葉をお届けできたと思うが、実際にはほかにもいろんな話を交わしていたので、今回は当時のインタビュー全文をこちらでアップしたいと思う。

中野「今日はよろしくお願いします。ホッフェンハイムでは様々な分野で新しい技術を導入しているというふうに伺っています。ホフナーさんはご自身のお仕事をどのようにみていますか?」

ホフナー「私たちがホッフェンハイムでやっていることは何か。私はスポーツイノベーション部門のチーフを務めている。ここにあるフットボナウトのようにすべてをSAPとの共同でやっているわけではない。これはベルリンのクリスティアン・グットラーが発明したものなんだ。私はこうした分野をさらに発展・成長させるために、こうしたスポーツとテクノロジーの融合、イノベーション、どんな装置が考えられるか、現在のあるいは将来の科学技術がどんな可能性をもたらしうるのかを検討するという仕事をしている。スポーツ選手をはっきりとした目的を持ってインディビジュアルにトレーニングを行っていくことが大切になってくる。そのためには普段のチーム練習に加えて、それぞれの選手に合った形で個人練習ができる方向を考えることが必要だということだ」

中野「その点でもSAPという世界有数のソフトウェア会社がバックにあるというメリットはやはり大きいですか?」

ホフナー「なぜ世界的に私たちが知られてきたのか。一つにSAPというパートナーがいることが挙げられるね。我々のスポーツ面への興味ももたらしているのも事実なんだ。私たちは8年間、自分たちで作り上げたデータ管理・分析用のソフトウェアを使用している。SAPは我々との共同作業でスポーツウォンというポータルを完成させた。私たちのサイドから、こうしたものが必要だという方向性を打ち出すんだ。私の仕事には指導者チームとそうした企業との間に入り、調整をすることも含まれる。今私たちはいい道を歩いていると思うが、目標はもっともっと大きいものだ。可能性はまだまだ広がっている。そのためにはSAPのようなパートナーが必要なんだ。パーフェクトな関係だ。所在地も隣り合わせだしね」

(残り 2944文字/全文: 4377文字)

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