中野吉之伴フッスバルラボ

テクノロジーを使うことが成長をもたらすんじゃない。より成長するために意図を持ってテクノロジーを活用するから意味があるのだ

▼「何のための技術か」への問いかけ

前回のコラムではホッフェンハイムとテクノロジーについて、スポーツイノベーション部門チーフのラファエル・ホフナーさんとのインタビューの前編をお届けした。

宝の持ち腐れという言葉がある。

どんなに優れたものでも、使いこなすことができなければ輝きをもたらさない。どれだけ最新機能を搭載したPCであっても、ただゲームに興じるだけでは使用する意味がない。逆に低予算の簡易タブレットでも用途がはっきりしているのならば、十二分に役に立つ。電子機器だけの話ではなく、人間同士の関係性においてもそうだろうし、トレーニング内容についてだって同じこと。

なぜ必要なのか。なんのためにするのか。そしてどのように使うのか。

その視点がぼやけてしまえば、ただやっているだけという自己満足の域を抜けることはできない。有名クラブや学校が行っているトレーニングだからいいわけでもないし、高額の最新機器だから選手を成長させるわけでもない。ホフナーさんとのインタビューを読み返してみると、私たちはどうあるべきかという点に関する示唆が非常に深く含まれている。フットボナウトという最新トレーニング機器がどうすごいのかという表面をなぞるのかの話で止まるはずがない。私にしても生きたディスカッションができる喜びがすごくあったのを思い出す。

後編もぜひ楽しんでいただきたい。

▼フットボナウトの仕組みとは?

中野「フットボナウトについてもう少し詳細な説明をお願いできますか?」

ホフナー「まず4つのタワーがあり、それぞれ2つの高さのボールが出てくる場所があ。32のエリアが周りにあり、これも上下にそれぞれエリアがある。つまり全部で64箇所ということ。流れはこうだ。選手はピッチの真ん中に立つ。シグナル音を合図に4つのタワーについているランプが光り、そこからボールが出てくる。同時に64のエリアのどこかも光り、選手は出てきたボールをコントロールし、そのエリアにパスをするわけだ。ベーシックトレーニングとして基本すべて2タッチで行う。つまりトラップしてパスというサッカーにおける基本的な形だ。これは操作一つでどのくらいの時間でパスをしなければならないかを変更できる。遅すぎるとライトの色が変わり、スコアに換算されない。そうすることで選手はすぐにもっと早くプレーをしないとというフィードバックを受けられる。これがファーストステップ。パス成功率、ボールが出てからパスを通すまでの時間など数値はすべて測られる。だがそれはあくまでも表面的なもの。大事なのは技術レベルを上げることだ。わずかな時間で状況を判断し、正確なプレーを素早く行うことができるか。瞬時に次のプレーに移行するためにはパーフェクトなボールコントロールが必要で、次のタッチで正確なパスを繰り出せるかが問われるんだ」

(残り 3930文字/全文: 5099文字)

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