中野吉之伴フッスバルラボ

そのスポーツの本質を考慮することが、何のために、どんなトレーニングをすることが大切かにつながる

▼ 素振りって何のためにやるの?

片山和総との質疑応答動画の後編で最初に出てくるテーマは「素振りって何のためにやるの?」というものだった。日本だと当たり前のように野球選手は素振りに取り組む。それが悪いというわけではない。素振りがもたらすものも間違いなくある。

ただ、野球というスポーツに必要な動作という点から考えるとどうだろうか。

野球においてバットを使うのはボールを飛ばすため。そしてバットでボールをとらえたときには必ずそこに衝撃がある。その衝撃に対してどのようにバットを扱い、ボールをとらえるのかというのが必要な技術となるわけだが、素振りをいくらやってもこの衝撃に対する感覚を身につけることはできない。

サッカーにおけるリフティングの考え方と似ているかもしれない。

リフティングが何かをもたらすのは間違いない。でもリフティングそのものがサッカーに何かをもたらしたりするわけではない。それなのに小さい子どもたちにリフティング練習を、あたかも上達の必殺技みたいな感じで伝えるのは間違っているわけだ。

あくまでもまず考えるべきは、野球とは、サッカーとはどんなスポーツで、どんな技術が求められているのか。そのためにはどんな練習が必要なのだろうかという点だろう。そこの道筋を間違えてしまうと、せっかくそのスポーツが持つ楽しさ、奥深さを間違ってとらえてしまう人が増えてしまうのではないか。

今回の動画でもそれ以外に非常に興味深いテーマがある。例えば少年野球ではいまでも悲しい現場に出くわすことがあると片山は述懐する。

片山「ある試合を見ていたら、監督とおぼしき人がバッターボックスに立っている子に対して『どうせ打てないんだからさっさと三振して戻ってこい!』と声をかけたんですね。そうしたらベンチに何人かお母さんらしい人たちも座っていたんですが、その人たちがみんな笑ったんです」

どうかしてる。

何様のつもりなのだろうか。

そしてこうした悲劇が野球だけではなく、サッカーだけでなく、あらゆるスポーツで、日本のいたるところでまだまだあるという現実。

2020年は東京オリンピックもある。もう一度改めて、スポーツとは何か、子どもたちが、そして大人がスポーツを心から楽しめる、打ち込める環境にするにはどうしたらいいのかを考えなければならない。

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