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中野吉之伴「子どもと育つ」

年の瀬に思う時間の大切さ。スケジュールに押しつぶされないようにしたい

2019年も残すところあとわずか。

師走というのは日本独特の感覚だろうか。ここドイツにおいては年末に向けてのあわただしさというのはあまり感じないなぁと思っていた。でもそれは私が単純に、この時期あわただしくしなきゃいけないものが比較的少ないからだろう。年末年始にかけて実家で過ごそうとする人はドイツでも多いわけで、帰省ラッシュで道路も電車も混むわけなのだから。それに家では大掃除を行ったり、年末年始に向けての買い出しやら準備やらでやっぱり大変だったりもする。日本独特、ドイツ特有とされるものはあるけど、それに固執して物事を複雑に考えすぎて、解釈をこじらすのはもったいないことなのだ。

そう思ったのにはそれなりに訳がある。私たちは何をもって「忙しさ」を感じるのだろうとふと考えてみた。今年もいろんなことがあった。私個人でいえば仕事の面で大きな変化があり、収入がガクっと下がったのが3月のこと。加えて昨年12月に様々な諸事情で引っ越しをしたことで月々の家賃がそこそこ上がっていた。どうすればいいんだろうと悩みに悩んだ時期もあった。試行錯誤しながら新しいやり方を模索し、そのために4月急遽一時帰国して、人生の諸先輩方に相談に乗ってもらったりもした。このWEBマガジンもリニューアルをうたって、動画を取り入れたり、テーマを考えたりとしてきている。すべてがドンピシャにはまったりはしない。失敗だってたくさんした。でもいろんな方の支えがあって、家族からのすごいサポートがあって、何とか形になってきたのが今年の終盤だったのかなと思うのだ。

答えというのはその瞬間でぱっと見つかったり、出てきたりするものではない。少なくとも私の場合はそういうことが多い。大事なのは、「すぐ出るものではないからどうするのか?」という問いと向き合うことだ。自分には成し遂げたいものがあり、それが信じるに足るものだという理由を明確に持っている。そのために何をすべきかを考え、いま自分ができることは何かと掘り下げていく。がむしゃらな取り組みだって必要だけど、適切な方向性と解釈が伴わないと、ただどこまでも間違った道を歩んでしまう。そうしたゴールに向けてのプロセスが間違ってなければ、いつかどこかで巡り合うことができる。それは「人に」であったり、「機会に」であったり、「環境に」であったり。

時間というのは大切なキーワードだなとあらためて思う。まい進するための時間、没頭するための時間、落ち込むための時間、振り返るための時間、自分を取り戻すための時間、心を解き放つための時間。「自分はできている」という勘違いを人間だれしも抱えている。それは普通のことだ。そこに気づいて、自分のやり方を微調整するための機会というのは本当に大事だ。

先日のことだ。クリスマス後に私は家族でシュツットガルトに旅行にっていた。友人家族とサッカーをしたり、友人宅で美味しい食事をごちそうになったり、温泉にいってまったりしたり。3日目にちょっと郊外にある室内遊園地にいった。子どもたちはここで遊ぶのを楽しみにしていたし、どこで何をするのかを行く前から楽しそうに話していた。笑顔がまぶしい。私も楽しみにしていたし、一緒に遊ぶつもりでいた。

最初しばらく一緒に遊んだ後、子どもたちは二人でそれぞれやりたいアトラクションへと向かった。私と妻はカフェでコーヒーを飲みながらしばしゆっくりとした時間を過ごす。ロッククライミングに挑戦する子どもたちの動画を取ったり。前回来た3年前と違い、一番上のゴールまでたどり着いた息子の姿を見て、成長したなぁとじんわりしていた。お昼ご飯を食べた後に、子どもたちはそれぞれまた遊びに行くというので、私はやり残しの仕事を少し片づけようと思い、「1-2時間仕事をしてきていい?」とみんなに許可を取って、園内の一角にあるテーブルと電源があるコーナーでパソコンを広げて原稿を書いていた。

1時間くらいして1本の原稿がほぼ仕上がったくらいの頃に次男が近くにきて、「僕もここでちょっと休む」という。残りを仕上げてさて、最後1時間弱一緒に遊んでからホテルに向かうかと思って次男に声をかけたら、こちらの話と全然違う答えを返してきた。つい怒ってしまった。後から考えればほんの些細なことだ。でも、その時は「なぜこちらの話を聞いてなかったのか?」「なぜ今やろうとしているのと関係ないことを聞いてくるのか?」というのに反応してしまった。怒りはすぐに悲しみに変わった。

なんでここまで来て自分は仕事をしていたんだ。

「ほんの1-2時間だから大丈夫」って思っていたし、子どもたちも「別にいいよ」っていってくれた。でもそういうことではない。一度集中して原稿に取り組んで、その次の瞬間すぐに頭を切り替えて、のんびりするというのは困難な作業だ。そんなことをわざわざしなきゃいけない状況ではないはずなんだ。

私にはスケジュールがあるし、締め切りがある。年内に挙げておきたい原稿が残っていた。それはどこかでストレスとなり、プレッシャーとなり、自分の神経を摩耗させている。「大丈夫」「別に疲れてない」とも思っている。でも、本当に大丈夫なときを私を知っている子どもたちからすれば、時折私は心から「大丈夫?ちゃんと寝ている?」と心配させてしまうような生活をしていることを認めなければならない。やらなければならないことを円滑に進めていくために、常に先のスケジュールまでの展開を気にして毎日を送る。様々な媒体での原稿のことだけではなく、このWEBマガジンの更新があり、家事があり、子どもたちの行事があり、サッカーのトレーニングと試合がある。だからいろんな予定と課題を「こなす」ために、頭を回転させ、スマホ片手に情報を頭の中でさばいていくことが必要になる。

そうしたことに時間と労力を費やすことは大切だし、だから多くの仕事や課題をクリアすることができているわけなのだが、だからと四六時中気持ちが追いやられていては一つ一つを大事にすることが難しくなる。どれも一生懸命にやっているし、片手間にやっているつもりはない。でも余韻に浸る時間も余裕もないまま、細かいスケジュール表のように気持ちを細切れにしていくことはよろしくない。休むこと、リラックスすることは作業ではないのだから。どんなことでも、どんな時でも、余白は残しておかなければならないのだ。じゃないと予定外のことにすぐ気持ちが揺さぶられる。

室内遊園地での話に戻ろう。あえてこの日に仕事をするべきではなかった。でもすぐ気持ちが落ち着くわけではない。20-30分間一人にさせてもらった後、帰りのバスの時間を1本遅らせて、あと1時間一緒に遊んでから帰ろうと家族にもちかけた。最後「遊ぶために遊ぶ」んじゃなくて、「遊びたいから遊んで」笑って帰ろうって。すごい角度で落ちていく滑り台を一緒に滑った。「こえぇぇ」といって一緒に笑った。バイクにまたがってやるシューティングゲームでスコアを争った。この後の予定のこととか、今夜原稿書こうかどうかとか、そんなことを一切考えないで、今その瞬間を大事にして。そうしたら心がほどけていくのを感じた。そして思った。何かにがんじがらめになっていたんだなって。何度もこうした経験をしているのに、気がつくとまた取り込まれてしまう。怖いものだ。

気をつけよう。気持ちがささくれないようにありたいし、それができるような時間の過ごし方をしたい。やらなきゃいけないことに押しつぶされないように。難しいけど、時にはまたはまり込んでしまうかもしれないけど、でも、今回子どもたちに気づかせてもらったこの感触を忘れちゃだめだ。伝え手として、純な感度を持ち続けていくために。そしてそれ以上に一人の人間として、生きることと向き合っていくために。

2019年、日本一時帰国時にいろんなところに足を運び、現地で様々な活動をしてきた。ドイツでもいろんな方と知り合い、交流をすることができた。縁がどんどん太く、幅広くなっていくことに喜びを感じている。私に共感してくれ、ともに活動をしようとする方がどんどん増えてきている。本当に素晴らしいし、もっともっと続けて、広げていきたい。だからこそ、真摯で謙虚な気持ちを忘れてはならないのだ。

こちらからえり好みなんてしない。いつだって自分の全力で向かっていく。足がもつれて転がることだってあるだろう。大変なことなんか普通に起きる。苦労があるのは当たり前。嘆きたいときは嘆いていいし、愚痴りたい時は思いっきり愚痴ればいい。そしてそこから踏ん張って、立ち上がっていくことが大切なんだ。休む時は休む。遊ぶ時は遊ぶ。他のことは考えない。昨日は家族と一緒にハリーポッターを見たけど、すごくよかった。途中ツイッターのチェックはしてしまったのはまだまだだけど。オンとオフ。気持ちの切り替え。目的へのプロセス。どれもこれもサッカーと一緒だ。人生は面白い。人生は意義深い。いろんなことがあればあるほど、彩鮮やかになっていく。失敗を恐れてしまったら、その鮮やかさを目にすることもできない。濃紺くっきりした絵も、淡い微妙な違いを楽しむ絵も、どちらも素敵ではないか。

2020年、きっとまたいろんなことが起きるだろう。予定をいくら立てても、予定通りにいかないことの方が多いだろう。振り回されてイライラして、ズーンと沈むときなんかたくさんあるだろう。それでもきっと私はまた歩き出す。もっといろんな世界が見たいから。皆さんと見ていきたいから。頑張ろう。頑張りましょう。

新年もどうぞよろしくお願いいたします。

中野吉之伴

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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