中野吉之伴フッスバルラボ

新年のご挨拶と一つのパスミスからみんなが学んだ大事なこと

▼ 新年のご挨拶 

あけましておめでとうございます。昨年中も大変お世話になりました。

年末年始は家族や親しい友人家族と一緒に新年会を楽しみ、心からくつろげる時間を過ごすことができました。これで完全に英気を養いきったと思っていたところでちょっと体調を崩して、1-2日間休むということに。今日も本当はフライブルガーFCのU13チームが参加する室内サッカー大会に帯同する予定だったんですね。SCフライブルク、ホッフェンハイムといったブンデスリーガクラブのU13チームも参加する大会だったので、じかに見て、いろいろと経験を積みたいという思いはもちろん強かったものの、3日後の9日から日本へ一時帰国をして3週間各地を回るために、コンディション調整には気を配らなければならないという事情もあります。それにぼーっとする頭で無理していっても子どもたちや保護者に変に心配させたり、むしろ邪魔になるなと思ったので、アシスタントコーチのマヌにお願いして、家で休むことにしました。こうした時に無理せず休むことができるというのは、お互いにとって大事なこと。やはり心身ともに健康であるというのはとても大切なことですし、それは互いに助け合おうという空気作りをずっとチームやクラブとしてやってきているから、できていることなのかなとも思います。影口たたかれる環境だったら、足の引っ張り合いになってしまいますからね。

そういえば2日前にフットサル大会のセカンドラウンドに参加した時にこんなことがありました。4チームが総当たりで対戦し、上位2チームが次のラウンドに勝ち残り。最初の2試合を1勝1敗で終えていたうちのチームは、最終戦で引き分け以上でも大丈夫な状態でした。とはいえ、引き分けるために試合をするわけではなく、しっかりと狙いを持って戦い、チャンスを自分たちで作り出し、ゴールを決めるというのにこだわっていこうと臨んだんです。幸先よく1-0とリードし、試合の流れもうまく握れている。そんな中、ユリアン(仮)が自陣で痛恨のパスミス。ゴール前で完全にフリーの相手選手に同点ゴールを許してしまいました。がっくり肩を落とすユリアン。その後もチャンスを作るものの、変に焦ってしまい、無理をして強引にシュートに持ち込んではGKに防がれるというシーンが続いてしまいます。結局引き分けのまま試合は終了。次ラウンド進出にはなったとはいえ、なんとも後味の悪い終わり方に。

不満顔の子どもたちをすぐに集めると、私はこう声をかけました。

「いまこの瞬間に君たちはユリアンにどんな声かけをしてあげられるんだ?」

みんながスッとそっちを見て考えだしました。シモンがすぐに手を挙げます。

「ミスは誰にだって起こるよ」

ルーカスが続きます。

「あのあとも前を向いて一生懸命プレーしていたよ」

ドミニクはこう言います。

「僕らは一緒に戦っている。いいプレーがあったら一緒に喜んで、悪いプレーがあったら一緒に取り返すんだ」

悔しさを飲み込んで、チームメイトのために言葉をどんどんかけてくれるんです。私はうなづいてこんなことを言いました。

「それが大事なんだ。サッカーというスポーツではミスがいつだって、どこだって、誰にだって起こりえる。そうならないために練習をしているし、それを乗り越えるためにいろんな取り組みをしているよね。不用意なミスがあると失点につながってしまう。もちろん、あれはユリアンのミスだ。それはユリアンも受け止めなければならない。でもそれ以上に大事なのは、その後どうするかだ。そんなことがあった後で、僕たちチームがどう立ち上がるのかだ。誰にだって起こってしまうことだというのを忘れてはいけない。ミスをした選手のせいにするのは簡単だけど、フェアじゃない。負けたらだれだって悔しい。勝てる試合を引き分けたら納得だっていかない。でも君たちはそんな思いを飲み込んで、ユリアンのための言葉を探し出した。そんな僕らでいよう。また一緒に戦っていこう」

こういう経験が、彼らをしなやかにのびやかにしていくんだと私は思っています。こうした経験をどのように解釈して、どのように導く場にするのかが、大人には問われているのかなと思っています。ここから彼らともっと成長していくためにもね。

▼ 今年に向けての2つの目標

さて、17年11月にスタートしたWEBマガジン「中野吉之伴子どもと育つ」は3年目を迎えました。これまで以上に内容を充実させ、ドイツから実のある情報をお届けしていきたいと思っています。「サッカーとどのように生きていくのか」という私の命題と向き合いながら、それをどのようにそれぞれの舞台にアジェストさせていったら、みなさんのサッカーライフがより豊かで、より無理がなく、より充実したものになるのかを考えながら、届け方、伝え方をつねに模索し、正しい解釈力=解釈させる力というのをもっともっと身につけていこうと思っています。

有料WEBマガジンとして読者の皆さんに満足していただけるように、サッカーの技術・戦術のベーシックをもかみ砕きながらアプローチし、指導理論、トレーニング理論、国際コーチ会議でのレポートといった専門分野をお届けし、ドイツのグラスルーツから学ぶスポーツとの関わり方、こちらの指導現場で体験した子どもたちや親御さんたちとの交流など、現場のダイレクトの情報もどんどんお届けしていきたいです。

その中で具体的にいま頭の中に描いている今年の目標は2つ!

1:オンライン講座「『サッカー年代別トレーニングの教科書』を掘り下げてみよう」をコンスタントにアップ。

昨年11月27日に第1回をアップしたものの、12月は所用で時間が取れないままになっています。月に1~2回はコンスタントに続けてアップしていけるように、時間をうまく作りながら、やっていくつもりです。

2:会員の皆さんとのより積極的な交流

こちらから情報の一方通行にならないように、皆様からのフィードバックを受けられるような形を模索していきたいと思っています。オンライン上でよりオープンな形で交流していきたいと願っています。

編集のお手伝いをしてくださっているゆきのさんのコラムも大好評。私とは違った視点や解釈でドイツにおける子育てや教育、スポーツのあり方を描いてくれています。私も読みながら勉強になることが多いですね。ぜひこちらも楽しみにしていてください!

 

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ