中野吉之伴フッスバルラボ

年齢の縦割りと横割り。子どもが子どもと育つ風景

水曜無料コラム担当のゆきのです。みなさま、楽しい年末年始を過ごされたでしょうか?本年も『中野吉之伴 子どもと育つ』をよろしくお願い申し上げます!

年末年始、中野吉之伴から2本の無料コラムがアップされていますので、未読の方はチェックしてみてくださいね。

年の瀬に思う時間の大切さ。スケジュールに押しつぶされないようにしたい

新年のご挨拶と一つのパスミスからみんなが学んだ大事なこと

日本の子どもたちは6日月曜日から新学期を迎えたのではと思いますが、私たちの住む州では6日が祝日だったため、7日火曜日が新学期でした。16日の祝日は“Heilige drei Könige東方の三賢者 の日と呼ばれ、3人の賢者が生まれたばかりのイエスのもとを訪れて誕生を祝い、贈り物を捧げたとされることにちなんだ、キリスト教の祝日です。

この日、子どもたちは教会に集まっていくつかのグループに分かれ、三賢者や天使の衣装を着て家々を回り、玄関先でキリストが生まれたことを告げ、今年1年間が良い年であるようにと祝う歌を歌います。訪問を受けた家では子どもたちにお土産のお菓子を用意、いくらかの募金をするのが習わし。この祝日をもって、11月下旬頃から続く様々なクリスマス関連の行事が一通り終わることになるので、ドイツではクリスマスの飾りは17日以降に片づけるのが一般的です。ドイツお正月を過ごす日本の方は、お正月なのにまだクリスマスツリーがあるの?と変に思うかもしれませんね。

写真 : Saarbrücker Zeitung

我が家の子どもたちも、この東方三賢者のお祭りに友人たちと参加してきました。我が家の近所の教会には子ども会があるので、その子ども会メンバーで当日参加できる子どもたちが、数グループに分かれて教区内にある家を11軒全て訪問します。正式なキリスト教徒ではない我が子たち(日本では神社にもお寺にもお参りに行きます…)でも、行事の趣旨に賛同して協力できるなら、もちろん参加OK。朝から歩き詰めになりますし、知らない家の玄関先で歌ったり、決められたセリフを暗唱したりとなかなか緊張する大仕事。初参加の次男は大丈夫かな?と心配しつつ送り出しましたが、杞憂だったようです。夜には「ちゃんとできた!」という達成感いっぱいで帰宅し、地域の行事に一人前に参加できたことを、本人はもちろん私たち親も本当に誇らしく思いました。集めた募金はシリアやレバノンの難民キャンプに送られます。子どもたちの集めてきてくれたお金が、困難な状況下にある子どもたちのために正しく使われて、彼らが安心して学んだり遊んだりできる環境が少しでも守られるようにと心から願っています。

この教会主催の子ども会ですが、基本的に運営には大人はノータッチです。もちろん多額のお金の管理や車の運転など、行事の裏方的作業には大人が関わりますし、万が一の際の責任を引き受けるのは大人の仕事です。でもそれ以外の行事の企画や運営は全て子どもたちが中心となって行います。子どもと言っても最年長のリーダーグループの子たちは10代後半~20代前半。ドイツでは18歳で成人なので、その前後の年齢にあたるお兄さん・お姉さんたちがリーダーとなって、年間を通じて様々な行事を企画してくれます。

大人は、遠くから見守るけれど手も口も出さない。様々な年齢の子どもがいる中で、子どもたちが自分たちの頭で考え、自分たちの力で助け合って行動する。ルールは自分たちで決めて自分たちで守る。そんな子ども会には、学校のクラスやサッカーのチームのように、同じ年齢の者だけで作られた「横割り」の集団にはない力があります。

我が家の長男にとって、年長の友達である子ども会のリーダーたちは、とても頼りになる憧れの存在。次男にとっても、子ども会は長男よりもさらに23歳年上の子どもたちと遊んだり、自分より年下の子どもたちと遊んだりと、家族や学校の中だけではなかなか作れない人間関係を見つけて楽しく過ごしているようです。

Green Planetさんによる写真ACからの写真

日本でも、登下校や、学校での活動の一部が縦割りで行われることがありますが、実は、ドイツの多くの幼稚園や保育園、そしてごく一部の小学校でもこの縦割りのクラス分けが採用されています。私たちの子どももこの縦割りクラスの保育園に通い、自分より小さい子とも大きな子とも関わり合いながら卒園しました。その後は「普通」の横割りクラスの学校に進学し、サッカークラブでも生まれ年ごとにチーム分けをしているので、もう一度この縦割りの子ども社会に加わることができて、親としてはとても嬉しく思っています。

もちろん、なるべく同程度の年齢の子どもたちを集めて行動したほうがスムーズに行く場合も多くあると思います。でもこの子ども会は、全体が一つの目標に向かって進むような集団ではありません。重要なのは子どもたちが能動的に自分たちの力で楽しい居場所を作り出せるかどうかどうかということ。そして、普段所属している学校やスポーツチームなどの団体とは別に「ここに来れば居場所がある」と思える安心感があることなのではと感じています。

dronepc55さんによる写真ACからの写真 

少子化・核家族化が進むにつれて、子どもが幅広い年齢の子どもと関わりながら成長する機会はドイツでも日本でも少なくなってきています。そんな中、この子ども会のような年齢を超えたゆるやかなつながりを持てる場があることは、子育てをしている親にとってはとても有難い存在です。

大人より自分に近い存在だけれど、自分より多くの経験や能力を持った人として年上の遊び仲間ができること。自分よりも年下の遊び仲間とも、同じ場や時間を共有して楽しめるように考えて気を配ること。大人が「仲良くしなさい」「小さい子には優しくしなさい」なんて言わなくても、子どもたちがごく自然にそのように振る舞っていることに、私はとても感動してしまいます。時には羽目を外すこともあるのはもちろん知っていますが、そこにはある程度目をつぶりながら、子どもたちを信じて子どもたちだけで過ごす時間を大切にしたいと思っています。子どもだけの縦割り社会を通じて、彼らは親や先生からは絶対に学べない大切なことを吸収しているのですから。

今週もありがとうございました!来週もよろしくお願いいたします。

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