中野吉之伴フッスバルラボ

マスク着用義務化。スポーツ時もマスク?サッカーも?

こんにちは。ドイツ・フライブルクからメルマガ編集・管理のゆきのが週1回お届けしている無料コラム。今回は、一昨日月曜日から実施されたドイツのマスク着用義務について書きたいと思います。

写真:Badischer Zeitung

ドイツでマスクを着用する。これだけで、ドイツに住む我々アジア人にとってはかなりインパクトがあります。日本や韓国など、これまでもマスクをする習慣のあった国々にしてみれば、感染症の流行時にマスクをするというのは当たり前のことにも感じられますが、欧米にはその習慣はありません。かつて大規模な感染症が流行したときに一時的にマスクが使用されたこともありましたが、コロナ以前のドイツでマスク姿といえば、医療関係者や工業用の防塵マスクくらい。街中でマスクをして歩いている人は全く見かけませんでした。

これまでも、冬の風邪の流行る時期や花粉の時期、こちらに住む日本や韓国、中国系の人からは「本当はマスクをつけたいけれど、周囲の目が気になってできない」という声が漏れていました。コロナウィルスの感染が広がり始めた時期は、一部でアジア人に対する差別的な目線もあり、ヨーロッパ社会の中で明らかに「異物」であるマスクをすることは、差別を助長するのではないかと、なおさら怖くてマスクなんか着けられないと思っていました。

学校が閉まり、飲食店や娯楽施設も閉鎖され、食料品店やドラッグストアだけが1.5mの社会的距離厳守の上で営業することになった3月半ば頃から、ちらほらとマスク姿の人が現れるようになり、そこから1カ月少々で、あっという間に着用が義務になるほど浸透しました。花粉症だけど周囲の目線が怖くてマスクができなかった友人は「これで堂々とマスクができる!」と喜んでいます。

cheetahさんによる写真ACからの写真

今ではネット通販で各種マスクが飛ぶように売れ、手作りマスク用のゴムひもが店から消え、Tシャツやストッキングを切るなどの代用案がネットで拡散するなど、日本と同じような状況が起こっています。医療用のマスクは優先的に医療機関に回さなくてはいけないので、それ以外の一般の人が着用するのはお手製マスクや、ホームセンターで手に入る工業用のマスクなどが中心です。色柄も何でもよく、マスクの準備が間に合わなければストールやスカーフなどで口や鼻を覆ってもよいとのこと。買い物のときに見かける人々のマスク姿はとてもカラフルです。

ブンデスリーガでは、試合再開を視野に入れて、試合中でも着用可能なマスクの検討が始まっています。激しい呼気や汗にも耐え、視界を妨げず、11の競り合いやヘディングのときにもズレたりしない…そんな高機能なマスクなんてあるの?そもそもマスクをしてサッカーなんて可能なの?と懐疑的なサッカー関係者も少なくありませんが、「マスクでサッカー」という、ほんの少し前なら冗談にすらならなかったであろうプランが、強い現実味を帯びているのが今のドイツです。プロからアマチュアまで、ドイツサッカーがいつ再開されるのかは、まだ全く明らかになっていませんが、もしかすると子どもたちもサッカーが再開されたらマスクでグラウンドに向かう光景が当たり前になったりするんだろうか、などと考えたりします。

ドイツのAmazonで「スポーツ マスク」で検索すると、こんなダース・ベイダー風のが出てきたりするんですが…

ドイツでは、コロナウィルス対策に関しては、様々な新しい規制や対策の導入が、良い意味で見切り発車で始まることが多いように思います。15年間住んでみて、私は、これまでのドイツ社会は比較的ゆるやかに慎重に変化していく社会だと思っていました。でもコロナに関しては、必要だと思われることや、すぐにでも実施したほうが良いと思われることは、とにかくまず早期にスタートさせることが肝心で、細かい改善や調整や検証は後からでもできる、というスタンスのようです。

もちろん、実施前に行政レベルでもある程度は調整や検証は行っていて、確証を得てから踏み切っているのだと思いますが、調整にばかり手間取っていて、なかなかスタートしないとか、市民生活レベルでの変化がたいして起こらない…ということは、コロナウィルス対策に関してはあまり起こっていません。

それゆえに、始まってから「ここはどうなの?」「こういう場合はどうなるの?」という細かいハテナが浮上することもあるようですが、なにしろコロナ対策は人命がかかっています。今、その場その場で最善と思われる策が驚くほどスピーディーに導入され、街の景色がみるみる変わっていくのは、それだけ状況が切羽詰まっており、待ったなしの状態であることの証でもあるように感じています。

今週もお読みくださりありがとうございました!来週もよろしくお願いいたします。

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