中野吉之伴フッスバルラボ

【質問】「なんで日本代表は強くならないんですか?」中野「日本代表も日本人選手も間違いなく強くなっている。でも強くなることと勝てるようになることは違うと思う」

▼ 読者の質問にお答えします!Vol.4

なんで日本代表は強くならないんですか?
成長してると思いますか?
日本サッカーのアイデンティティーてなんですか?

もう2か月くらい前になるが、Twitterでこんな質問をいただいた。

なんで日本代表は強くならないのか。

皆さんの中にもそう思っている方は多いのだろうか?

ドイツで暮らしている僕には、正直日本代表の試合を見るチャンスはあんまりない。最後に見た試合はロシアW杯のベルギー代表戦だ。なので、納得してもらえる答えが出せるかはわからないけど、すごく面白いテーマだと思うので、考察してみたい。

そもそも強くなるって何だろう?成長するって何だろう?

どうなれば強くなったと思ってもらえるのだろう?

W杯の結果で過去の成績を上回ったら?

W杯の試合で周囲を納得させるだけのパフォーマンスを披露したら?

解釈の仕方でいろいろな答えがあるだろうが、僕としては、日本人選手の全体的なレベルとしても、海外に来る日本人選手のクオリティにしても、そして日本代表に関しても、間違いなく良くなっているし、成長していると思う。

ただ、それがイコールそのまま勝てるようになる、いいサッカーができるようになる、そして代表チームの好成績につながるのかというとそれはまた違う話だ。

他国の成長スピード、そしてそのためにつぎ込んでいる時間的、金銭的、マンパワー的投資は日本以上だったりする。育成にしても、強化にしても、ゲームのようにスムーズにクリアできたりはしないし、そう簡単に歯車をきれいに嚙合わせることはできない。

サッカーは相手あってのスポーツだから。

一つずつ考えてみようと思う。まず日本人選手について考えてみよう。日本人選手や日本代表に対する欧州での評価は決して低くはない。僕がこれまで知り合ってきた現地の指導者で、日本人選手や日本サッカーについてネガティブなことを口にした人はいない。

試合に変化をもたらせるだけのポテンシャルを持った選手が多いし、フィジカル能力に関しても日本人自身が思っているほど悪くはないとみられている。

そして規律を守り、チームのためにプレーすることができるという点は、僕ら日本人が思っている以上に貴重な能力だということをわかってほしい。

こうした「日本人らしさ」を取り上げると、「そうだろう、そうだろう」と納得する人がたくさんいる一方で、「そんなことはわかっている。でもそれだけなのか?」という見方をする人もでてきたりする。

でもこれって世界的に見たら当たり前のことではないし、それを過小評価するのは違う。

チームとしてやるべきことが決まっている中で、そのことをおろそかにして自分のプレーをどう出すかばかり考えている選手は欧州だって、いや欧州でこそ使われない。結果を出すのは大事だけど、結果を出すことしか頭にない選手を監督は起用したりしない。

規律正しさをチームにもたらすこと自体はどう考えてもポジティブなことでしかない。「だからいつまでも個の力で相手の組織を突破できる選手が出てこない」という足かせになるわけではないし、規律正しくプレーできることと”個の力”とやらを対局に置くことはそもそもサッカー的な発想ではない。

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