中野吉之伴フッスバルラボ

海外生活の楽しさをようやく感じながらも、フライブルク引っ越しを決断した理由

 吉之伴の歩み Vol.4 

前回のストーリーはこちら

Vol.1「どうしてドイツへ?どうやってドイツへ?自分のルーツを振り返りながら、これまでの歩みをつづってゆきたい」

Vol.2「ドイツで”普通で”常識的な指導を初めて受けた時の衝撃と19年前の決意」

Vol.3「酔狂といわれようと、誰にでもできるけど、誰もしそうにないことに、人生をかけてチャレンジしたかった」

ドイツに渡って2か月弱。やっとやっと自分の住まいを手にした。スーツケースに荷物を詰め込んで、ユースホステルを行ききしなくてもいい。チェックアウト時間を気にして、朝早くから準備しなくてもいい。同室の宿泊客を気にせず、警戒せずに、ぐっすりと眠りにつくことができる。

台所とキッチン、トイレとシャワーは共用だけど、自由に使わせてもらえる。2か月ぶりに料理ができた。鍋でコメを炊き、肉野菜炒めを作って食べる。醤油はアジアショップで購入。日本に比べたら3倍くらいの値段はするけど、小瓶一本あればどんな食材もごちそうになる。

部屋の机で勉強ができる。ベットに足をのばして本を読んで、音楽を聴ける。そんな一つ一つのあたりまえが楽しくて、毎日がとてものびやかで、暮らすってこういうことをいうんだなと改めて感じた。

その頃から語学学校でも、仲良くなった日本人やイタリア人と飲みに行ったり、一緒に草サッカーをしたりと楽しみも増えたけど、たぶん偶然ではないと思う。ずっと抱えていたストレスがなくなって、僕の方に気持ちのゆとりができたのが大きいのだろうか。

そういえば草サッカーで思いだした。ミュンヘン市内にある広大な芝生がある公園で毎週土曜日に集まってサッカーやってるからおいでよ、といわれていってみたけど、もう国際色ごっちゃまぜ。名前を覚えることもできないし、誰が何人かもよくわからないままだったけど、でもボールが一つあって2チームできたら、そこは立派なサッカー場だ。

日本だと知らない人同士でプレーをすると、お互い遠慮し合ったりとか、逆にイキってしまって空気感悪くなったりしがちけど、ドイツにきてからはそういうところで気を配らなきゃいけないことが少ない気がする。

「サッカーしよう」ということばがちゃんと共通語になっている感じがあってすごい楽しい。

だれがどんなプレーをしてというのをそれぞれみんななんとなくわかっているし、みんな本気だし、ずるいことだってするし、でもちゃんと怪我しないようにとか、ボール触れてない人にはパスを回してあげようとか、ちゃんと気を使ったりもする。一つ一つ前もって、説明しあわなくても、自然とスタートして、自然とサッカーになっていく。

そんな共通理解があるというのが僕にはとても素敵で、感動的なことだった。

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