中野吉之伴フッスバルラボ

バイエルンがサイバートレーニングを導入した理由はCLのためだけではない?ブロイヒ「クラブが持つ最大の資産こそが選手」

▼ バイエルンの好コンディションを支えているサイバートレーニングとは?

欧州チャンピオンズリーグ準々決勝でバルセロナに8:2という大差で勝利したバイエルン。

中盤で無尽蔵に走り回ったドイツ代表MFレオン・ゴレツカは「僕らは足を止めることなく前に出続けた。あのプレッシングはすごいものがあったと思う」と前線からの勇敢な守備を勝利の要因の一つに挙げていた。

相手陣内から襲い掛かる。かつてのバルセロナであれば、疾風怒濤のプレスをかいくぐり、ズレを生み出し、逆にチャンスへとつなぐこともできたのかもしれない。本来であれば、極端なまでにショートパスをつなぎながらチャンスを創造するのがクラブフィロソフィー根幹の一つだったはず。

だが、ここ最近はそうしたサッカーが影を潜め、あまりにもメッシへの依存度が極端に高くなってきてしまった。世界最高プレーヤーのメッシはそれでもなんとかできるだけのものはある

それに、勝てているうちはそれが正論となってしまう。警鐘を鳴らす人がいても、抜本的な改革にはどうしても踏み出しにくい。だがこの日はバイエルンのプレスをかいくぐるどこか、まんまと餌食になってしまった。

中盤センターに多くの選手を配備したことでより狙われやすい状況を自分たちで作りながら、そこからの打開策がない。ごまかしてきたことがごまかしきれない。

そうしたバルセロナの弱点をわかっていたからこそ、バイエルン監督のハンシィ・フリックはゆるぎない信念で自分たちのサッカーをおし進めさせた。

試合の序盤、ミュラーが先制点を奪ったものの、直後にアラバのオウンゴールで同点に。その後しばらくは前がかりになった守備の裏をつかれて連続でピンチを迎え、いやな空気になりかけていた。

だがそこでフリックは一度引いて守備を落ち着かせるのではなく、前線でのプレスのタイミングと仕掛けた時の収縮スピードを修正。そこをやり通すことができれば主導権を握ることができるという確かな自信があった。

まさにその狙い通りの形でチームはどんどん追加点をあげていく。

前監督ニコ・コバチの元では完全に戦力外扱いを受け、放出も時間の問題と考えられていたジェローム・ボアテングは「監督の信頼を感じることができたことが1番の要因」と自身復調の理由を挙げ、「ハンシィ・フリックの元、僕らはハッキリとしたゲームプランを持っている。バイエルンミュンヘンにとって彼という存在がいることが、間違いなく大きな勝利だと思う」と話していたが、チームがそんな監督のゲームプランを遂行できるからこそ、歴史的な大勝劇も生まれた。

新型コロナウィルスの影響で通常練習ができなくなった時にはフリックだって、どうすればいいか悩んだことだろう。不確かな未来しか見えないときだからこそ、考えなければならないことがあった。そして自分たちの力で創造的に道を作り上げていくことが求められていた。

そんなフリックの支えとなったコーチの一人が、フィットネスコーチのホルガー・ブロイヒだった。選手が一か所に集まって一緒にトレーニングができないならば、オンラインでいつでも質の高いトレーニングができるように、「サイバートレーニング」専用施設を作ろうとクラブに提案し、実際に作り上げたというわけだ。

こちらに関しては先日ナンバーに寄稿した記事にも記載があるので、まだの方はそちらをまず参考にしていただきたい。当フッスバルラボでは、そんなブロイヒによるサイバートレーニングがなぜ生まれたかについて、さらに掘り下げて紹介したい。

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