中野吉之伴フッスバルラボ

余白の時間が子供たちの成長には欠かせない。子どもたちがスケジュールにつぶされないように大人が気をつけなくてはならないこと

▼ 日本の子どもたちのスケジュールって大丈夫だろうか?

※フットボリスタに寄稿したコラムの転載

1月に日本に一時帰国したときに、各地でサッカークリニックや指導実践などを行ってきたが、子どもたちのスケジュールを聞くとやっぱり驚かされる。とにかく忙しい。次から次へと次の予定が入っている。

毎日の学校のほかに、サッカーの練習、スクールの練習、他の習い事、塾。週間スケジュールを見せてもらったら、ほとんどが塗りつぶされているんじゃないだろうか。特に都心部では、家でゆっくりできる時間っていったいどれくらいあるんだろうと心配になってしまう。

でも、それがおそらく一般的だということは、多くの大人は問題ないと思っている。そして子どもたちはちゃんとできているから大丈夫だと思っている。

では、なぜそんなにスケジュールでギュウギュウなのか。大人側の主張としては「子どもたちに成長してもらいたい」と思っているからではないかと思うのだが、これはあってるだろうか。ここがそもそも違うなら、もうどうしようもない。

成長してもらいたい。子どもたちが成長するサポートをしたい。だから可能な限りスケジュールを埋めて、成長の機会を作ってあげる。こういう思考図式になるのだろう、おそらく。

人はどうすれば成長するのか。果たして成長メカニズムをしっかりと理解しているだろうか。

負荷(練習や勉強に取り組む)→ 疲労(パフォーマンスの低下)→休養(コンディションの回復)→向上(パフォーマンスの向上)→負荷

大雑把に行ってこうしたサイクルが必要だ。練習などで疲れたところで十分な休養を取ることで回復し、負荷をかける前よりも全体的な能力が向上していく。

理想的には1回ごとの練習に可能な限り全力で取り組み、へとへとになり、でもちゃんと次の練習まで休める時間が取れること。能力の向上という点で見れば、それが一番効果が出る。

ただ、多くの場合、休養が十分に取れていないまま、つまりコンディションが回復しきる前に、そしてパフォーマンスレベルが向上する前に、新しい負荷をかけてしまうので、極端な話パフォーマンス・コンディションレベルは下がっていく。

ケガも増えるし、集中力、モチベーションもなくなっていく。加えて成長期の子どもたちには、成長に回すだけのエネルギーが必要だ。それなのに体の中に貯蔵されているエネルギーを使い切ってしまうような、スケジュールでは回復することで精一杯になってしまうのだ。

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