中野吉之伴フッスバルラボ

友人来訪、サッカーキャンプ。2020年夏休みの話

こんにちは!ゆきのです。夏休みから戻り、先週末からフッスバルラボは通常通り始動しております。通常の水曜更新から1日遅れてしまいましたが、今週もドイツ・フライブルクから無料コラムをお届けします。

今回は最近の記事を振り返りながら、夏休み中の日常に起こった出来事をいくつかご紹介したいと思います。

先日、シュトゥットガルトに住む友人家族が遊びに来てくれ、我が家と2家族でフライブルクの市内観光や食事を一緒に楽しみました。元々の予定では地中海へバカンスへ行くつもりだったところ、旅行先でのコロナウィルス感染拡大状況が悪化したためキャンセルとなり、旅先をドイツ国内に変更して立ち寄ってくれたのです。

シュトゥットガルト市の高台にある公園から、ネッカー川を挟んで反対の高台を臨む景色。右中央に見えるのがメルセデス・ベンツ・アレーナ

シュトゥットガルトといえば、フッスバルラボの読者のみなさんにとっては、過去に岡崎慎司選手や酒井高徳選手、細貝萌選手ら日本人選手が在籍し、現在は遠藤航選手が活躍するVfBシュトゥットガルトが真っ先に浮かぶのではと思います。しかし生活者目線で見るシュトゥットガルトは「坂の町」です。市の中心地や観光スポット、スタジアム周辺は比較的平らな土地が広がっているので気づきにくいのですが、周囲を山や丘陵に囲まれているため、少し観光ルートを離れると、どの方角に向かっても、坂また坂のアップダウンの激しいエリアばかり。

8月に入ってすぐのコラムで、ドイツの子どもが通う自転車教習所の話を書きましたが、友人家族によれば「このあたりでで自転車通学する子どもなんてほとんどいないよ。坂ばっかりで本当にきついから、みんなバスかトラム」とのこと。自転車教習も実施されていますが、その後実際に乗る機会はとても少ないのだそうです。

傾斜地に建つ趣のある教会。こんな風に建物の端と端で1階分くらいの差がある建物が、シュトゥットガルトにはとても多い

自転車ユーザーが多いフライブルクに住み、コロナ以降さらに自転車中心の生活になった私たち家族からすると、「ほとんど自転車に乗らない生活が当たり前の街」での暮らしぶりは、改めて聴くとなかなかカルチャーギャップを感じる話でした。特に長男の通う学校には、体育館のような巨大地下駐輪場があるほどなので、同い年の友人の「うちの学校に駐輪場なんて…あったっけ?自転車通学してる子、誰かいたっけ?」という話にとても驚いていました。ところ変われば暮らしぶりも変わる。同じドイツ、同じバーデン・ヴュルテンブルク州でも全然違う生活があって、簡単に「ドイツでは…」とひとくくりにはできないものだなと実感した次第です。

さて、子ども向けのイベントが軒並み中止となった今年の夏休みではありましたが、フライブルクでは地元プロクラブであるSCフライブルク、中野吉之伴が指導するフライブルガーFC、そしていくつかの民間サッカースクールが、ほぼ例年通りの内容でそれぞれサッカーキャンプを開催しました。「キャンプ」という名前がついてはいますが、宿泊はなし。朝から昼食休憩を挟んで夕方まで、一日サッカーのトレーニングやサッカーボールを使ったゲームに参加して帰宅する毎日が続きます。

「長い夏休み中、全然サッカーができないのはつまらない」「普段所属しているチームの仲間とは違うメンバーで違う内容のトレーニングをやってみたい」というスタンスで参加する子どもが多いこのイベント。主催側にも「夏休み中の強化メニュー」というコンセプトはなく、負荷をかけすぎずに、楽しむこと・普段の練習とは違うことを重視したメニューが35日間程度組まれます。

余白の時間が子供たちの成長には欠かせない。子どもたちがスケジュールにつぶされないように大人が気をつけなくてはならないこと

子どもに合わせて長期の夏休みを取れる親ばかりではないので、一日子どもを預かってくれるサッカーキャンプは、学童的な側面も持つありがたい場。基本的には和気あいあいとした雰囲気になるはずなのですが、今年我が家の子どもたちが参加したとあるサッカースクール主催のキャンプで、ちょっとした問題が起こりました。

次男「ずーっと、嫌なことばっかり言ってくる子がいるんだよ。その子のせいでみんなイライラしてる」

私「嫌なことって?」

次男「言いたくないくらい嫌なこと。人を侮辱したり、すごく失礼なことを言ったり。トレーナーも止めさせようとしてるけど、ぜんぜん止めない」

差別的・侮辱的な発言に対しては、たとえ子どもでも毅然と指導するのが大人に求められる態度です。彼を担当するトレーナーも、話を聞く限りきちんと指導しようと試みてはいるものの、「彼」はその言葉にも耳を貸さず、誰彼構わず参加者に暴言を吐き、攻撃的な態度を取り続け、一時的にトレーニングから外されては戻ることを繰り返している様子。

いったい「彼」に何があったんだろう?どうしたんだろう?と他人の子どもながらとても気にかかります。本当は参加したくないのに無理矢理連れてこられたんだろうか?何か他の理由でものすごくストレスをためているんだろうか?初対面の相手が極端に苦手で、他の子どもや指導者たちとの距離の取り方がわからないんだろうか?

わずか数日の交流の中だけでは、チームスタッフや周囲の子どもたちが、「彼」との付き合い方に落としどころを見つけるのは難しかったと思います。短期間のイベントだからこそ楽しめる非日常感がある一方、その短期間の間に問題が発生したら、解決するよりも波風が立たないような収め方を選ぶしかない場面もあったのではないでしょうか。トレーナーも、本来なら子どもたち全員のために使うべき時間を、彼一人のために割くことはできなかったようです。

結果、今回のサッカーキャンプでは、スタッフも子どもたちも誰もが「彼」を遠巻きにし、「彼」も最後まで周囲への攻撃を止めないままのキャンプ終了となったそうです。中野の先日のコラムにあったように、本当なら長い目で「彼」の振る舞いを理解しようとする人がいてほしいところなのですが……「彼」の中に今回のキャンプはどんな経験として残ったんだろう、と思います。

それぞれが持つ「その人らしさ」を見つけ、支え、育むために。トレーニングの中でパーソナリティも育める環境とオーガナイズを考えよう。

「彼」との件を除けば、我が家の子どもたちにとっては実り多きキャンプとなったようでした。日焼け止めの甲斐もなく真っ黒に日焼けして、毎日ニコニコと帰ってくる息子たちは本当に眩しかったです。欧州でも夏休み期間中に連日コロナウィルス感染者は増え続けており、秋からの見通しもはっきりしないままではありますが、大好きなサッカーができる数日間を彼らが純粋に満喫してくれたのは何よりでした。

今週もお読みくださりありがとうございました。次回もよろしくお願いいたします!

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