中野吉之伴フッスバルラボ

【きちゼミ】認知トレーニングをするとどうなるの?脳内の働きを知ることで、子どもたちへの最適なアプローチを知ることができる!

▼ ドイツにおいて認知能力に関する研究はすごいスピードで進んでいる

09年にドイツサッカー協会公認A級ライセンスを獲得した僕は、10年から毎年7月に3日間開催される国際コーチ会議に連続で参加している。今年のは新型コロナウィルスの影響で中止となってしまったが、それでも毎年夏にこの会議に参加することは、大きな楽しみだ。

様々な情報をインプットし、周りの指導者とディスカッションをして、新たな知見を手に入れていく。そんな場があることは指導者としても、一人の人間としてもとてもありがたいものだと常々感じている。

そんな国際コーチ会議ではW杯や欧州選手権といった国際的なビックトーナメントがあった年はその大会の総括、ここ最近の傾向、今後への展望に関するテクニカルレポートが発表されるほか、ブンデスリーガ監督による講演やスポーツ科学の専門家による講義を聴講することができる。

そして僕がこれまでのずっと参加している中で、毎年必ずテーマに上がっているのが人間の心理に関する講義だ。

指導者がどのようにコーチングすることが求められるのか。それはなぜなのか。モチベーションとは何なのか。メンタルを高めるとはどういうことなのか。

そうしたことを学術的な観点から学べる意義は大きい。

そして近年特に重要視されているのが、認知能力に関する研究ではないだろうか。

国際コーチ会議でもたびたび講義がされているし、ドイツのサッカー指導者向け月刊誌Fussballtrainer(フッスバルトレーナー)ではほぼ毎号のように認知能力に関する記事がのっている。

なぜ認知能力に関して知ることが大事なのだろうか。

それはピッチ上で要求されるプレー精度と密接にかかわるからだ。

どれだけ足元の技術が優れていても、どれだけ足が速くても、どれだけ体が大きくても、それぞれの局面でいつどこでどのようにどんなプレーをなぜしなければならないのか、を知らないと、どんなに優れた武器を持っていても生きない。

インテリジェンス、賢さ、ずるさ、駆け引き上手。

いろんな言葉でサッカー選手に求められる要素が言い表せられるが、それがどんな能力のことを具体的に指示しているかを知ることが大事ではないだろうか。

人間は行動する前に認知をする。

目で見て、耳で聞いて、肌で感じて認知した情報をもとに、現状を分析し、解決策を模索し、可能性のある選択肢を見つけ出し、その中から最適な決断をするというプロセスをたどりながら行動に移る。

そしてそうした行動を繰り返すことで認知から実践へのプロセススピードが上がり、そうした経験を積み重ねることですぐに正しい行動へと移れるようになるわけだ。

信号を見て赤だったら、誰だってまず止まる。それは最初からそういうメカニズムが組み込まれているわけではない。

「信号機というのがあるのを知る」⇒「信号機には赤と黄と青のサインがあるのを知る」⇒「赤の時は渡ってはいけない合図だというのを知る」⇒「3色から今は赤というのを把握する」⇒「止まるという行動を取る」

僕らがする行動はすべてこうしたプロセスの積み重ねからできている。そして社会のなかでは、見たまんまその通りにやればそれでオッケーな行動だけではなく、状況に応じて今すべきことを考えなければならない局面があることを知っているはずだ。

サッカーでも同様で、状況を自分で整理して、自分で決断して、自分で実践できるようになることが重要だ。監督や両親が外から叫ぶ通りの行動をすればいいわけではない。それだといつまでたっても自分で判断して、最適なプレーを見出すことができない。

育成における目標が、「将来的にサッカー選手として、そして一人の人間として、自立して、自分の頭で考え、自分の足で歩いていける自主性を身につける」ことを非常に大事なことととらえるならば、小さいころから彼らがそうしたプロセスを繰り返せる環境を整えなければならないのだ。

WEB講習会「認知トレーニングってなに?頭の仕組みを知ることで、子どもたちが子どもたちらしく成長できる取り組みを試してみよう!」

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