中野吉之伴フッスバルラボ

【きちゼミ】子どもたちが成長するための秘訣とは?アレンジを加え、難易度を調整しながらゲーム形式中心のトレーニングが大切だ!

SNSで探すといろんなトレーニングメニューを見つけることができるけど、自分のチームの子どもたちにとってどんな練習が最適なんだろう?

▼ 最適なトレーニングってなんだろう?

サッカーはやればやるほど奥が深いと感じるスポーツだ。様々な要素が様々に影響し合って、その中で認知と判断と決断と実践がかみ合っていかないと好プレーにつながらない。

技術、戦術、フィジカル、メンタル、認知

どれかだけでもダメで、だからと平均的にこなせるようになるのも望ましくなくて。それぞれの年代では成長に応じて取り込んでおいた方がいいラインがあるからそれも考慮しなきゃだし、でもそれが絶対ではなくてあくまでもそれを指針としながら、それぞれの子どもが最大限に成長できるようにサポートするのが育成指導者の大事な役割。

戦術やトレーニング理論、あるいはテクノロジーの分野ではどんどん研究が進んでいる。毎年恒例の国際コーチ会議に参加するといつも感じている。指導者として最新事情にもアンテナを張って、自分をアップデートしていくのはとても大切だけど、だからといって小難しい用語に振り回されてしまうと、それは本末転倒になってしまう点は気をつけなければならない。

理論は現場での取り組みをよりよくするために必要な知識であり、知恵だ。理論のために現場の現象が見えなくなってはダメなのだ。

僕がA級指導者ライセンス講習会での指導教官で、ドイツ指導者育成の第一人者ベルント・シュトゥーバーは次のようにいつも語っていた。

シュトゥーバー 私はトレーニング学の研究職ではない。だが、まずドイツのどこにでもある普通のアマチュアチームの監督が直面する状況を考えることが、まず第一だろう。成人チームであれば、みんな自分の仕事をしながら練習にくるわけなのだ。そこを考慮しなければならない。

何人練習に来るのかを悩まなければならない。そして、どれだけのグラウンドが使えるのかも考慮に入れる必要がある。一面全部を一チームだけで使えることはそんなにない。

まず、この前提条件を受け入れることがスタートだ。その上で、自分たちが持つ練習機会をどのように最大限に有効活用できるかを考える。考える起点はいつもグラウンドからの視点だ。

サッカーはいつでも『ピッチ上で何ができるか』がメインになる。コンディショントレーニングや技術トレーニングを分けて考えるのではなく、ボールとゴールを使っての4対4や6対6がスタート地点なのだ。

▼ メイントレーニングのほとんどはゲーム形式中心であるべき

友人で指導者仲間のクラウス・パプストと前回ディスカッションをした時に、トレーニングのあり方について話し合ったのだが、そこでの指摘が非常に重要だったと思うので、こちらも紹介したいと思う。

パプスト サッカーはシンプルだ。2つのチーム、2つのゴール、1つのボールで行うゲームだ。互いに狙うのはゴールを決めることと守ること。そのためにポジションがあり、それぞれのポジションは、どうやってゴールを決めて、どうやってゴールを守るのかに関わってくる。

トレーニングでもここは反映させるべきだ。だからゲーム形式が中心軸に来なければならない。1対1、2対2、4対4、数的有利、数的不利。ゲーム形式でのトレーニングをとにかくたくさんすることが大事だと思うんだ。

例えば僕は休暇でスキーをしに山へ行くことがあるけど、そこで開催されているスキースクールでは、子どもたちはみんなずっとスキーをしているよね。マウンテンバイクの教室があったら、子どもたちはとにかくずっとマウンテンバイクに乗って走っている。

子どもたちはそれをしたくて集まっているし、実践経験が何より成長の源だからだ。

サッカーでも同じなんだ。

もちろんウォーミングアップの時間に技術に特化した練習をしたり、コーディネーション系のトレーニングをボールなしでやったりもする。鬼ごっことか、そういうのも普通に取り入れるのはポジティブだと思うし、子どもたちも楽しいと思う。

でもメイントレーニングのほとんどと最後の時間はゲーム形式であるべきだ。

どんな練習でもゲームで終わる。大事なのは悪い練習をしたからゲームはしないとかはNGだということだ。ほかで準備に時間がかかったから試合時間は少ないよとかも僕的にはなしだ。最後の30分は、彼らの時間でいつだってゲームをやる。

ドリル練習で身につけるものは、ドリル練習の中でしかうまくいかないことが多い。試合になるとうまくいかない。負荷も状況も使い方も相手選手・味方選手の存在も、試合とドリル練習とでは状況が全く違うんだから。

ドリル練習中心でトレーニングをしたチームと、ゲーム形式中心でトレーニングをしたチームとを比較した研究があったんだ。

ドリル練習中心のトレーニングをしたチームはそれぞれのトレーニングにおいては上達していた。でも試合になると対応しきれない場面が多いというデータが出たんだ。もっと強いボールでとか、もっと素早くボールに寄せてとか、思わぬタイミングで相手が来たとかいろんな状況がでてくることに素早く対応することに取り組み切れてないからだ。

そして忘れてはならないのは、まだそこまでうまくない子だからこそ、ゲーム形式でトレーニングすることが重要だということだ。1対1から4対4までの少人数ゲームをとにかくたくさんやることだ。そっちの方が顕著に成長する。

これが成長の秘訣なんだ。

▼ イメージ通りのトレーニングを追い求めすぎない

トレーニングメニューが優越を決めるわけではない。選手を成長に導くためにどんなトレーニングを、どのように行うのかが重要だからだ。

イメージ通りにトレーニングができない理由が選手にあることもある。でも指導者のアプローチの仕方がずれていたり、合っていないことの方がずっと多いと思う。

要求のさじ加減、アレンジの仕方、難易度の調整、雰囲気作り、バリエーションの準備、ポイントの伝え方。

優れた指導者はその当たりのバランスを取るのが非常にうまい。

自分はどんなトレーニングをしているだろうか?

一人で振り返るのは難しいので、フィードバックしあえる環境があると互いにプラスになるのではないだろうか?

【WEB講習会】「子どもたちの成長スピードにあったトレーニングメニューを自分たちで作ってみよう」

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