【指導論】「本質的な」「ホンモノとは」と口にする人は多いけど、使い勝手のいい言葉で終わっていないだろうか?
▼ 指導者にとって大切な要素をいつでも考えたい
先日僕はNumber WEBでドイツの指導者育成についてコラムを寄稿した。
「「選手と指導者は違う」
これは、どんな指導者も口にする言葉だ。だが、選手時代に論理的な指導を受けてきた人物であれば、指導者としてのキャリアを歩み出しやすい」https://t.co/sM4PXofaNU
— 吉之伴@??サッカー指導者 (@kichinosuken) January 13, 2021
このコラムの中で次のような箇所がある。
現在DFBが取り組んでいることの一例として、様々なタイプの指導者の組み合わせというものがある。
例えば、ドイツ代表などで活躍した実績を持つ選手肌の指導者、プロコーチライセンス講習会で優秀な成績を収めた若手指導者、スポーツ生理学やフィジカル・メンタルなどを専門に学んだ学術肌の指導者と、そのような毛色の違う指導者を組み合わせたコーチングスタッフを作り出すことで、そこから生まれる化学反応をポジティブに働かせようという取り組みだ。実際、世代別代表などで試されている。
フッスバル・レーラーライセンス(日本におけるS級)インストラクターの主任であるダニエル・ニジェコフスキが「これまで戦術的、技術的な面にフォーカスしすぎていた。だが、我々は指導者の仕事をもっと総合力で考えなければならない」と口にしていた。
知識偏重の傾向が強くなっていた指導者育成において、特にプロ選手に関わるトップレベルにおいてはもっとギリギリの戦いを潜り抜けてきた肌感覚、大事な試合に向けてどんなふうに気持ちを盛り上げていくかのモチベーションマネージメント、そうしたところへのフォーカスをもういちどしっかりと取り戻さなければならないし、そのためにはプロ選手出身の指導者が持つ力をもっとダイレクトに活用できるような取り組みをしていかないと、というディスカッションが生まれてきている。
▼ トレンドを追うだけではダメ
これだけを聞くと、「なるほど、やっぱり元プロ選手がもつカリスマ性って大事なんだな」とか、「なんだかんだで気持ちだよ、気持ち!」と受け止めてしまう人もいるかもしれない。
だが、忘れてはいけないのは、なぜそうした考え方が今また浮上してきたのかというプロセスだ。
元プロ選手が指導者になる流れが求められるようになった背景には、それ以前にサッカーをより学問的に研究し、理論だった指導を実現するために、プログラミングされた指導者講習会を潜り抜けていた若手指導者が重用された時代があり、それ以前には経験ばかりが強調され、ブンデスリーガではいつも同じ顔触ればかりがシャッフルされ、老将ばかりが監督をするという時代があった。
どの時代のどの取り組みが優れていたかではなく、なぜそうした事象が起こり、なぜそのあとの変化が生まれ、何がうまくいき、何がうまくいかなかったのか、という全体像をきちんと把握し、トレースし、それを整理していかないと、結局表面的なことばかりしか理解できない。
ではどのような視点と解釈で考えることが求められるのだろうか。
そうした点を踏まえて、湯浅健二さんの「サッカー監督という仕事」のあとがきに、とてもドンピシャな表現があるので、一部引用してご紹介したい。
「たしかに誰でも監督にはなれる。だが、良い監督は少ない・・・・」
もう二十年も前のことになるが、私が参加していたドイツのプロサッカーコーチ養成コースを訪れた名将ハネス・ヴァイスバイラ―から、そんな言葉を聞いた。
「サッカーに関する豊富な知識など、良い監督になるための、ほんの小さなスタートラインに過ぎない。知識は当たり前だ。理論武装より、知識を現場でしっかり応用できるかどうかが問題じゃないか。
トレーニング法は新しいが、結局はそれを効果的にマネージできなかったり、勝負のかかった試合で選手たちを極限までモチベートできず、彼らの実力を十分に発揮させられなかったり、そんな監督が目につきすぎる。
有名選手が監督になっても、有名監督が来たとしても、グラウンド上で選手たちとつきあい始めたら、『ホンモノ』でない限り、すぐに化けの皮がはがれてしまうんだ」
僕ら指導者はよく、「本質的な」とか、「ホンモノの」という言葉を使う。それはいいが、でも本当の意味で「本質的なことってなんだ」「ホンモノってどういうことだ」というのを、深いところで思慮して、向き合っている人はどれだけいるのだろうか。
使い勝手のいい言葉で終わってしまってはいけないのだ。
今回、湯浅さんをお迎えして行うWEB対談ではそのあたりについても掘り下げて話をしていけたらすごく面白いと思っている。
僕らはホンモノの指導者だろうか。
あるいはホンモノっぽい指導者なのだろうか。
どうすれば、本質へ目を向けて、ホンモノの取り組みをすることができるだろうか。
ぜひ一緒に考えてみませんか?
▼ WEB対談のお知らせ
開催日:2021年 1月23日(土)
時間:19:00-21:00(日本時間)
タイムスケジュール:
19:00-19:45 中野と湯浅さんとで対談
19:45-19:50 休憩
19:50-20:40 参加者を交えてフラットな交流トーク・ディスカッション
20:40-21:00 少人数ごとに分けてのグループトークで振り返り
料金設定:
一般 2500円
学生 2000円
WEBマガジン “フッスバルラボ”会員 1500円
※リアルタイムでの参加が難しい人には、当日の様子を収録した動画を配信いたします。
ご希望される方は料金設定をお選びの上、必要事項のところに【動画配信希望】のむねをご記入ください。
限定公開に設定したYouTubeのURL当日使用する資料を後日お送りします。
お問い合わせ: kichinosuken@gmail.com
中野吉之伴
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