中野吉之伴フッスバルラボ

【ゆきラボ】本当だったら今頃ドイツは大騒ぎ。カーニバルの話

こんにちは!本日の「ゆきラボ」は寒波襲来中のドイツ・フライブルクからお送りします。現在、外気温はマイナス6度。今日いっぱい雪が続き、明日からは晴れるので、放射冷却現象でさらに気温が下がると天気予報が伝えています。近所の公園の湖も凍るんじゃないでしょうか……。

例年ならば、春を迎えるカーニバルを控えて、カラフルな仮想衣装やカーニバルのお菓子などで店頭がにぎわうはずなのが今の時期です。今週は、コロナ禍がなければ行われるはずだったドイツのカーニバル(ドイツでは「ファッシング」「ファスナハト」と呼ばれます)についてお伝えしたいと思います。

ヴェネツィアのカーニバルのマスク https://www.photo-ac.com/より

カーニバル、というと激しいリズムと大迫力の山車で有名なのがブラジル・リオのカーニバル。そして幻想的な衣装を身につけたイタリア・ヴェネツィアのカーニバルも有名です。一方、ドイツのカーニバルは、先に挙げた2つに比べると、世界的な知名度はそこまで高くないかもしれません。しかし、街全体が完全に別世界に思えるほど騒々しく盛り上がることにおいては、ドイツも負けていないのではと思います。特に、ケルンやマインツ、デュッセルドルフなどライン川流域ではその派手さや大規模さが大きな観光資源となっており、このカーニバルと連動して企画されている様々なイベントも多かったので、今年の中止によって1都市あたり数億ユーロ規模の経済損失が見込まれています。

ドイツ・フライブルクを中心とする、黒い森地方のカーニバルはこんな木彫りのマスクが伝統です

そもそもカーニバルってなんでしょう?キリスト教には、十字架にかけられたキリストの受難に思いをはせて、冬の終わりから春の初めころにかけて断食または食事制限を行うという習慣があります。この苦しい日々の前に、1週間程度派手なバカ騒ぎを思い切り楽しんでおいてから節制生活に入るというのが、元々のカーニバルの由来なのだそう。断食の後に楽しいご褒美があるのではなく、断食の前に思い切り遊んでおく…という発想が興味深いですね。

現在では、よほど厳格なキリスト教徒でない限り、一般家庭でこの断食や食事制限を行っているところはほとんどありません。一方で、その前の大騒ぎであるカーニバルは、カトリックの多い地域を中心にしっかり伝統行事として受け継がれています。

カーニバルの中心はなんといっても華やかなパレード。街の中心地が一日通行止めとなり、数え切れないほどの山車や、音楽隊、仮装した人々の列が市街地を練り歩きます。カーニバルの盛んな地域には、かならずカーニバルに参加するためのチームが多数登録されており、チームごとに衣装や小道具、演出が決まっています。

沿道は、これも思い思いの姿に仮装した黒山の人だかりで身動きがとれないほど混み合います。日々のエンターテインメントには事欠かないように思える現代であってもこれだけ盛り上がるのですから、娯楽の少なかった昔はこれがどれだけ特別で楽しみなことだったか想像がつきます。

仮装行列の人たちは、お菓子を配るだけでなく、こんな風にしょっちゅう沿道の人にからみながら進みます。小さい子どもはギャン泣きです

パレードの列からは、ときどき沿道の子どもたちに向かってお菓子が撒かれます。観客用に熱々のソーセージやワッフル、ホットワインの屋台もならび、街を挙げてのお祭りの様相を呈します。このパレード、基本的には「薔薇の月曜日」と呼ばれるカーニバル週間の後半に行われることが多いのですが、交通の混乱を避ける目的と、カーニバルをハシゴして楽しみたい観光客への配慮も兼ねて、現在では開催日をずらして行われることが多くなっています。

パレードと並んでお楽しみなのが、学校や園、職場などでの仮装です。私たちの住む地域では、カーニバル週間の初日に子どもたちが好きな格好に仮装して登園・登校してよいことになっていることが多く、教職員もこの日は仮装して出勤します。仮装のお題が決まっていることもあれば、完全に自由なこともあり、アメコミヒーロー、映画やアニメや漫画のコスプレ、動物の着ぐるみ、歴史ものや職業もののコスプレと本当になんでもあり。学校では授業はなく、教室でみんなでお菓子を食べたり、ゲームをしたり、学校を挙げての仮装コンテストに興じたりして一日を過ごし、翌日金曜日から約1週間のカーニバル休暇に入ります。子どもだけでなく大人も、本当に子どもに還ったように大はしゃぎをするので、職種や職場によっては、カーニバル週間は仮装で通勤できるところもあります。

カーニバルがあるから、ドイツのハロウィンはたいして盛り上がらないのだという声もあるほどのこのイベント。国を挙げての大騒ぎ・大ふざけイベントですが、今年は残念ながらその気配もほとんど感じられません。一部、オンラインでバーチャルカーニバルを楽しもうという試みもされているようですが、ぎゅうぎゅうの人混みのなかで大勢で非日常を楽しむという一体感がこのイベントの肝であるような気もするので、各家庭から画面越しでの参加では、それがどこまで盛り上がれるのか難しいところかもしれません。

今週もお読みくださりありがとうございました!来週の「ゆきラボ」もよろしくお願い致します。

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