中野吉之伴フッスバルラボ

突然のサッカークラブ練習解禁と、国際女性の日。女の子もサッカー「と」生きられる未来へ

こんにちは!毎週水曜更新の「ゆきラボ」です。

突然サッカーの練習が再開されました。8日月曜日の夜に監督から再開の連絡があり、翌火曜日からすぐに、ほぼ通常通りの練習が始まりました。スパイクやジャージを身につける子どもたちの姿も久しぶりなら、夕方の練習時間に向けて子どもたちが慌ただしく荷物をまとめて出ていく風景も久しぶりです。

長男に「久しぶりにサッカーができるってどんな感じ?」と聞いたら「1から10までの十段階で言ったら30くらい嬉しい」という迷言を残して練習に出かけていきました。

チームをグループに分けて人数を減らし、短時間ずつ、身体の接触を伴わない練習からそろりそろりと再開した昨年初夏のロックダウン明けに比べると、いきなり全員参加でほぼ通常の練習メニューが始まったのにもびっくりです。

4か月ぶりの練習から一夜明けて、今朝は息子2人とも筋肉痛に苦しんでいますが、屋外でチームメイトと思い切り体を動かして帰宅した子どもたちの晴れ晴れした顔を見て、私も何か長いこと忘れていた感覚を取り戻したような気分になりました。

写真 https://www.photo-ac.com/ イタリアではこの日にミモザの花を飾る習慣があるそうです

さて、そんな子どもたちの練習再開に向けて慌ただしく過ごした一昨日でしたが、3月8日は国際女性の日でした。女性の尊厳が守られ、自由かつ平等に社会参加できることを目指して始まったこの世界女性の日。世界経済フォーラムが毎年発表するジェンダー・ギャップ指数では、現在日本は121位、ドイツは10位となっています。ランキング上では確かに上位ではありますが、男女の賃金格差や、社会進出の度合い、子育てや介護の負担など、依然として多くの部分で不平等が残っており、まだまだ道半ばであることも事実です。

男子同様、女子サッカーも世界屈指の強豪国であるここドイツですが、かつてはドイツサッカー協会によって女性のサッカーが公式に禁止されていた国でもありました。1955年当時の禁止の理由は、「サッカーのような激しい競技は女性の心身を傷つけ、女性らしい優雅さや美しさを消してしまい、よき妻・よき母となることを妨げるから」という、とんでもなく非科学的でかつ男性目線なものでした。

禁止下であってもサッカーへの情熱を持ち続け、非公式にではあってもクラブチームや代表チームを結成し、練習や非公式戦を重ねてきた女性たちの努力と情熱によって、1970年代にようやくドイツサッカー協会も公式に女性サッカークラブの存在を認めますが、スパイクが着用できない、ボールは子ども用の小さなサイズ、晴天時しか試合ができないなど、男女同じ条件での試合やクラブ運営には程遠いものでした。1989年に初めてサッカー女子ドイツ代表がヨーロッパ選手権で優勝したときの報奨が、コーヒーの食器セットだけだったというのは有名な話です。

写真 https://www.photo-ac.com/ 当時の女子代表選手は「くれるなら食器じゃなくて新しいトレーニングウェアや時計が良かった」そうです。ですよね!

21世紀になり、性別関係なく、アスリートにはその功績に見合った待遇がされるよう、改善への努力は現在でも少しずつ続けられています。また、プレイヤーとしてだけでなくスタッフとしてサッカーに関わる女性も、少しずつですが確実に増えてきています。以前は男性一色だった試合中のベンチにも、報道陣にも、テレビ中継のリポーターやコメンテーターの中にも、女性の存在感が増してきました。

一方で、アマチュアレベルのサッカーでは、まだまだ地域差が大きいのが現実です。男子であればどの街にもほぼ必ずサッカークラブがありますが、女子だけでチームをつくれるほど競技人口の多い街や地域は限られています。我が家の子どもたちのプレイするチームにも女子選手は何人かいますが、男女混成チームが許されているのは日本でいう中学生年代まで。U-16以降になると、彼女たちは女子チームのある他のクラブに移籍しなくてはいけません。たまたま家から通える距離に女子チームがあればいいですが、チームが見つからずにサッカーを断念せざるを得ないケースも残念ながらあります。設備面においても、男女別の更衣室やシャワー室、トイレなどが整備されていない場所がまだまだたくさんあります。

また、いわゆる「お父さんコーチ」はたくさんいても、「お母さんコーチ」をグラウンドで見かけることは極めてまれです。それでも、体育大や教育大の女子学生などを中心に、若い年代のアマチュアサッカー女性コーチが、ようやく少しずつ増えてきました。いつか彼女たちが親年代になる頃には、お母さんコーチやお母さんプレイヤーとして、サッカー「と」生きることが、もっと当たり前の風景になっていることを心から願います。

好きなスポーツに取り組める環境があり、一緒にプレイできる仲間がいて、年齢が上がっても、自分の状況が変わっても、それに合わせて少しずつ関わり方を変えながら、長くその競技を楽しめるということ。そんな男子サッカーの「当たり前」が、性別に関係なく、女子サッカーでも同じように「当たり前」になりますように。

今週もお読みくださりありがとうございました!来週のゆきラボもよろしくお願いいたします。

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