中野吉之伴フッスバルラボ

【ゆきラボ】「サッカー以上のものを」。サッカーの枠を超えたSCフライブルクの地域貢献

こんにちは!今週と来週の無料コラム「ゆきラボ」では、地元のブンデスリーガクラブ・SCフライブルクの地域に密着した取り組みを2回に分けてご紹介していきます。今までこのフッスバルラボでご紹介したものは過去記事のリンクも貼っておきますので、そちらもぜひ合わせてお読みください。

◆そもそもなぜ地域密着の取り組みを?◆

まず、社会的影響力の強い人物や団体は、その分だけ社会に貢献する責任を負うという意識が、もともとヨーロッパでは非常に強いです。SCフライブルク出身であり、地元愛の強さで有名なドイツ代表監督ヨアヒム・レーフは、一時期、フライブルク市のシンボルである大聖堂の修復資金集めのため、キャンペーンのアンバサダーを務めていました。

1513年に完成、第2次世界大戦の空襲にも耐えた大聖堂ですが、常に補修作業が続けられており、その財源は寄付と観光収入でまかなわれています

SCフライブルクには「サッカー以上のものを」というスローガンがあります。サッカーに関係することでも、そうでないことでも、フライブルクのプロクラブチームとして、地元のためにできることは積極的に取り組んでいこうという姿勢が明確に打ち出されています。

加えて、私たちのホームタウンであるフライブルク市は、人口20万人と決して大きな街ではありません。他の大都市圏からも離れており、ドイツの中でも人口密度の低い地域です。加えて、強力なスポンサーになってくれそうな大企業もないので、中小規模のスポンサーをできるだけ多く獲得しなくてはいけません。地元の住民や企業から愛されて、サッカー以上の価値を認められた存在になることは、クラブ運営上の必須条件でもあるのです。SCフライブルクの立地条件についてはこちらの記事もお読みください

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◆まずは体を動かすことから。学校の課外活動をサポート◆

ドイツの学校には、日本の運動部のような部活動はないのが一般的ですが、AGと呼ばれる課外活動グループはあります。授業時間外に行われる活動なので、学校の教職員は基本的にこのAGには関わらず、外部の講師が指導に当たることが一般的です。SCフライブルクは、学校で行われるこのAG活動にSCフライブルクの育成スタッフを派遣し、活動をサポートしています。

ドイツのサッカー人口は全人口の2割。なのに子どもの8割は運動不足?SCフライブルクの地域貢献とは

実は、スポーツ環境が整っているはすのドイツであっても、様々な事情から、子どもの約80パーセントが運動不足の傾向にあるという調査もあります。コロナ禍で行動が大幅に制限された2020年以降、その傾向は間違いなく強まっていることでしょう。

SCフライブルクのAG支援は、サッカーだけでなく、ボールを使った様々な遊びの場をAGの枠の中で提供し、これまで様々な理由でスポーツに取り組むきっかけがなかった子どもたちが、体を動かすことの楽しさを知り、遊びながら健康な心身を育む第一歩となることを目指しています。

◆サッカー未経験者も家族も楽しめるサッカーキャンプ◆

SCフライブルクは、毎年春休みや夏休みなどの長期休暇を利用してサッカーキャンプを開講します。「キャンプ」という名前ではありますが、宿泊はなし。休暇中で使われていない、地元のアマチュアサッカークラブの施設が会場として使用されます。

同様のサッカーキャンプは、他の民間スポーツクラブなどでも開催されていますが、SCフライブルクのサッカーキャンプは、普段それぞれの所属チームで子どもたちが行っているのとは違う体験を提供することに主眼が置かれています。中には「普段は水泳クラブだけど、サッカーも好き。夏休みで水泳が休みだから来てみた」というような参加者も普通におり、決してサッカーの強化合宿のようなハードなイベントではないことがわかります。ボールやゴールを使った様々なゲームやトレーニングを通じて、子どもたちはどのスポーツにも通じるような体の使い方やチームプレイを自然に学んでいきます。

友人来訪、サッカーキャンプ。2020年夏休みの話

キャンプ最終日には、家族も参加しての野外ゲーム大会が開催されます。私も一度参加したことがあるのですが、まるでちょっとした運動会のようでした。親子混合のグループ同士で、グラウンド上に設けられた様々な難関をクリア。ドリブル障害物リレーや、ストラックアウトなど、どれも日頃サッカーをしないような人でも気軽に楽しめるものばかりです。

真剣に楽しみながらも、点数や順位はないので、負けても失敗しても笑うことのできるこのゲーム大会。普段全くサッカーに縁のない生活を送っている私にとっては、子どもたちが難なくこなしている(ように見える)ボールコントロールが、実際にはいかに難しいことなのか、思い知らされる機会にもなったのでした。

いかがだったでしょうか。来週のゆきラボでも、引き続き地元に愛されるSCフライブルクの多彩な取り組みをご紹介していきます。

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