中野吉之伴フッスバルラボ

【ゆきラボ】廃止されるはずの夏時間が始まった

こんにちは!
今週の無料コラム「ゆきラボ」では、先日始まったばかりのヨーロッパの夏時間についてお伝えします。

2021年3月27日(土)から28日(日)にかけての深夜に、冬時間から夏時間への切り替えが行われました。深夜2時になると時計の針が1時間進み、深夜3時になります。これで朝が来るのが1時間早くなります。通常、ドイツと日本の時差は8時間あるのですが、サマータイムに切り替わる3月の最終日曜日から10月の最終土曜日までは7時間に短縮されます。

現在では、スマートフォンやパソコンはもちろん、ほとんどのデジタル時計にサマータイムと通常時間を自動で切り替える機能がついています。あとは日曜日の朝起きたら、スマホやパソコンの時間に合わせてアナログ時計の針を1時間進めるだけ。以前は「サマータイム切り替え直後の日曜日に待ち合わせの約束をすると1時間遅刻する」というのがヨーロッパあるあるでしたが、自動切り替えが主流になってからは、そういう話もそれほど聞かれなくなりました。とはいえ、意外と目につくところにある公園や商店街のアナログ時計が切り替えられておらず、あれ?と焦ることも。

このサマータイム、実は今年からは廃止の予定でした。EUは2019年3月に「2021年以降はサマータイムを運用しない」ということを決定したのですが、その後のコロナ禍でそれどころではなくなり、廃止される時期は未定のままとなっています。

このサマータイム、導入当初のメリットとしては「人間が昼間の明るいうちに活動を開始し、夜の余暇時間を長く持つことができる」「太陽光を十分に利用し、照明等に使用する電力を抑えることができる」などがうたわれていました。ご記憶のある方もいらっしゃるかと思いますが、開催時期に猛暑が見込まれる東京五輪のため、日本でもこのサマータイム導入が検討されたこともありましたね。旗振り役は当時のオリ・パラ組織委員会会長でした。敢えて名前は挙げませんけれども。

実際にサマータイムを導入している欧州からすると、現在では健康面へのデメリットの方がより問題視されています。夏時間を採用している地域に住む人は、年に2回、強制的に1時間の時差ボケを経験することになります。たかが1時間と侮ってはいけません。海外旅行を経験された方なら実感していただけると思うのですが、時差ボケは症状の出方も回復の度合いも個人差があるものです。睡眠障害を筆頭に、疲労感や倦怠感、頭痛、心肺機能などへの負担などなど。さらにこれらの不調がストレスとなって鬱症状を引き起こすリスクも報告されています。EUでサマータイムの廃止に踏み切ることになったのは、EU市民の実に8割が廃止を望んでいるという調査結果と、医学・社会学など様々な側面における悪影響を示す科学的データに基づくものでした。

私も夫も息子たちも、幸いそれほど深刻に時差ボケにかかる方ではないのですが、それでも切り替え直後は寝つきが悪くなったり、体のだるさを感じたりします。また、私たちの住んでいる州では、たまたま春と秋の切り替えの時期が両方春休みと秋休みにかかっており、比較的子どもたちの健康問題は少ないのですが、州ごとに学校休暇の時期が違うドイツにおいては、切り替え直後の月曜日から、子どもたちは時差ボケ状態のまま登校しなければならない州がいくつも存在します。

個人的には、日没が遅くなり、夜いつまでも明るい爽やかなヨーロッパの夕暮れを楽しむことが出来る、このサマータイムの雰囲気そのものは悪くないと思っています。仕事を終え、子どもたちがサッカーから野球の練習から帰宅しても、まだ空に明るさが残っているというのは、冬の長い長い夜が終わったことを実感できるとても解放的なひとときです。でも、そんなことを言えるのも、私たちがこの時間の切り替えに対応できる体質だからでしょう。実際に苦しんでいる人が多いのなら、やはり「雰囲気」だけでサマータイムを維持するべきではないと思います。

ただ、コンピュータのプログラムなど、既に社会のあらゆる場面にこのサマータイムという制度が組み込まれているため、それを廃止するのも簡単なことではありません。少なくともコロナ禍において社会のあらゆる面に強烈なマイナスの影響が出ている今、敢えてさらに大きな変化を起こすことはないだろう、ということで、この件は現在保留中です。

人間がこの切り替えをしてもしなくても、夏になれば日の出は早くなり、日没は遅くなります。サマータイムがなくなっても、上手に自然のリズムに体を合わせてコンディションを整えていきたいものです。

今週もありがとうございました!次回のゆきラボもよろしくお願いします。

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