中野吉之伴フッスバルラボ

【きちゼミ】野球でもサッカーでもスポーツはスポーツ。できないからやらないじゃなくて、できないからできるようにするにはどうしたらいいかを考えるのが指導者

▼ ドイツの野球事情をブンデスリーガ監督

現在ドイツ野球ブンデスリーガ1部のカージナルスケルンで監督として活躍する片山和総(かたやまかずさ)さんと先日WEB対談を行った。日本人にとって野球はおそらく、だれでも知ってるメジャースポーツの一つだけど、ドイツは完全なマイナースポーツ。

片山 ドイツ野球のブンデスリーガというのはトップリーグだけど、プロリーグではないんです。

こんな話を聞くと、「なんだ、ただのアマチュアスポーツか」というふうにとらえる人も少なくないかもしれない。実際現在ドイツの野球人口は3万人ほど。日本の高校野球の人口だけで約14万人なので、野球人口総数では相当の差がある。

では競技人口3万人規模のスポーツというとどんなものがあるのだろうか。片山さんによると、日本だとアイスホッケー、アメフトが2万人ほど、ラクロス1万7千人ほどだという。

そうしたスポーツが日本のグラスルーツでどのくらいプレー環境が整っているだろうか。

ドイツ全国で3万人規模のスポーツである野球でもリーグのシステムは整えられており、トップリーグに当たるブンデスリーガは北部と南部8チームずつの全部で16チームが参加している。ドイツで一番多い地域は7部まであるという。

全国リーグができる規模の施設があり、専用競技場もある。場所によっては何千人もの観客が入れるスタジアムもある。

もちろんどこもそうというわけではなく、例えば片山さんが所属しているカージナルスは1部所属なので、規定に則った球場があるが、下部リーグには規定通りには整ってない野球場もある。それはそうだ。

ヨーロッパはサッカー場を野球場として共有している球場も多い。長方形のグラウンドだからレフトのほうが広いというのは「ヨーロッパ野球」あるあるだという。

それでも野球ができるように専用のラインが足されていたり、野球用のベンチがあったり、キヨスクがあったりと設備が整っている。フライブルクのスタジアムは市営なので、ホーム後ろのネットが市からの補助金で最近新設されていた。こうしたメジャー、マイナー関わらず、国や地域からの補助が受けられるというのは印象的な話だ。

プロリーグではないけど全国区のブンデスリーガがあり、その下には2部約40チーム、3部、4部とシステムが整えられている。2020年の時点で235の野球クラブ。マイナースポーツだけど、規模・組織としてはとてもしっかりしている。ドイツ野球は、日本で思われているよりも盛んにおこなわれているスポーツなのだ。

日本との大きな違いでいうと、やはり部活動ではなく、すべてがスポーツクラブとしての活動という点が挙げられるだろう。

例えば片山さんが所属しているケルン・カージナルスには1部所属のトップチーム、高校生、中学生、小学校高学年、中学年、低学年、未就学児のチームがそれぞれある。

そしてクラブに入ればだれでも野球ができる。

スポーツが学校に依存していないので、どの子どもでも、どの大人でも、自分がやりたいスポーツクラブを探して、そのスポーツを楽しむことができるという点はやはり興味深い。

【対談】ドイツ野球ブンデスリーガ日本人監督片山和総さんとWEB対談「ドイツスポーツのあり方から考える 生涯スポーツと無理なく向き合う社会を作るために僕たちができること」

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