中野吉之伴フッスバルラボ

【ゆきラボ】ドイツの父の日は明日です!日本とちょっと違う父の日の風景

こんにちは。毎週水曜日の無料コラム「ゆきラボ」本日はいきなりですがタイトルにも書いた本題から入ります。

ドイツでは、今年は明日5月13日が父の日です。あれ?でもこの前の日曜日に母の日があったばかりですよね?

ドイツではイースター(復活祭)から数えて40日後にあたる木曜日が「キリスト昇天祭」というキリスト教の祝日になっています。十字架にかけられたのちに復活したキリストが、天にあげられたことを祝う日です。ドイツでは州や地域によって祝日が異なることがありますが、イースターとキリスト昇天祭はドイツ全国で統一されたお休みになります。そしてドイツでは、この「キリスト昇天祭」が父の日を兼ねているのです。

ちなみにドイツの母の日は赤いカーネーションでなくても、お母さんの好きな花なら何でもよいようです

日本では「母の日」も「父の日」も、大切な家族に日頃の感謝の気持ちを伝える日になっています。「母の日」は、ドイツでも日本と同じ日に、同じように母親に贈り物をしたり、メッセージを送ったりするのですが、「父の日」はというと、日本とはかなりコンセプトが違います。実はドイツの父の日は「お父さんたちが連れだって出かけて男同士でビールを飲みまくる日」なのです。

もともとドイツには、このキリスト昇天祭の日に、自分の所有する農地や野原や山林などを仲間と見回る習慣があったそうです。それが巡回ついでにちょっと一杯飲むことになり、やがてその一杯がどんどん増えていき……ということになったと言われています。19世紀頃まではこの男性同士の飲み会は「紳士の日」「紳士パーティー」などど呼ばれていたそうですが、20世紀に入って世界各国で「母の日」が定められたのを機に「ではこの日は父の日にしよう!」ということになったのだそうです。

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週末ではないけれど祝日、そして初夏の陽気の良い時期(その年のカレンダーによって多少前後しますが、4月末~6月初旬のどこか)ということもあり、お父さん同士でトレッキングやサイクリングなどのレジャーに出かけたり、昼間からビアガーデンやワインバーをハシゴしたりと、気の合う男性の友人同士でゆっくりお酒を楽しむのがこの日の伝統的な過ごし方。おじいちゃん・お父さん・成人した息子と、世代を超えて男同士でグラスを交わすのを楽しみにしているご家庭もあります。

ドイツ人というと普段からビールやワインが大好きなイメージがありますが、プライベートの時間を大切にするという価値観が強いので、普段は仕事が終わったらまっすぐ帰宅する人のほうが圧倒的に多いです。一杯ひっかけてから帰る人は少数派ですし、いわゆる日本の「飲みニケーション」のような、職場や取引先との飲み会もとても少なく、それよりもこのドイツ式の「父の日」や地元のお祭り、友人の誕生日会などの機会に、気の合う仲間とのんびり飲む時間のほうをとても大切にしています。

というわけで、子どもやパートナーからお父さんに贈り物をする習慣はドイツにはほとんどありません。飲みに行くお父さんを見送るのが、いわば父の日の贈り物がわりといえそうです。とはいえ、快く「いってらっしゃい」と送り出してもらえるか、配偶者や子どもに嫌な顔をされるかは、その男性の日頃の行いにもよりそうですね。普段からさんざん飲んでるのにまた飲みに行くつもり?と言われそうな人もいるかもしれません。

この日にうかれて飲んで羽目を外して事故を起こしてしまう残念なお父さんも後を絶たず、ドイツ連邦統計局によると、昇天祭の日のアルコールに起因する交通事故の数は、他の日の平均の3倍となり、年間を通してのピークに達するのだとか。

ドイツ独特のこの父の日のスタイル、近隣のオーストリアやスイスにはこのような習慣はありません。そして、昨年に引き続き今年ももちろんコロナ禍のため、大人数でお酒を楽しむスタイルでの父の日はもちろん現状では禁止。飲みにも行けず、母の日のように家族に囲まれてプレゼントをもらえるわけでもなく、ただのお休みの日になってしまった父の日に寂しい思いをしているお父さんは少なくなさそうです。

ちなみに、日本人夫婦の我が家の夫は、一度もこのドイツ式の父の日の飲み会に参加したことがありません。また、アメリカや日本のように「感謝を伝える」方式の父の日も少しずつドイツに広まりつつあります。家族の形もライフスタイルも変わりつつある昨今、ドイツ伝統の「父の日」もまた、コロナ禍を機に変わっていくものの一つなのかもしれません。

今週もお読みくださりありがとうございました!来週のゆきラボもよろしくお願いいたします。

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