【抄訳】ナーゲルスマン「クラブ会員数が17人でも、30万人でも、どちらも大事なクラブなんだ」
▼ ナーゲルスマンのインタビュー抄訳
今季バイエルン監督に就任するユリアン・ナーゲルスマン。
現在33歳ながらすでにプロ世界での指導者としての経験にはすごいものがある。ホッフェンハイムで28歳でプロデビューを果たすと、チームを2年連続CL出場へと導き、移籍先のライプツィヒでも選手の能力を引き出し、今季は2位でフィニッシュしている。
優れた指導者の定義とは何だろうか。
チームに好結果にもたらす指導者は何が優れているのだろうか。
一時期、いや今もそうかもしれないが、ナーゲルスマンはドイツメディアでノートパソコンを意味するラップトップを用いた《ラップトップ監督》という言葉で言い表されることが少なくない。
プロデビューをしたホッフェンハイムでは世界的に有名なソフトウェア会社SAPが、メインスポンサー。
イノベーションをクラブ哲学の一つとするクラブだけに、ハイテクノロジーが現場に積極的に導入され、指導者もどんどん活用していたという背景がある。データ分析、管理は使い方次第で大きな武器になる。それは確かだ。
ただどうもそうした外観的なことだけであたかもすべてをデータ管理し、人をコマのように扱おうとする、現場を知らない指導者のような表現をされてしまうこともあるのだ。《ラップトップ監督》という響きは僕にはとても冷たいように感じられてならない。
でもね、人は理論だけでは動きはしない。
ナーゲルスマンがどれだけ優れたアイディアを持っていたとしても、それに選手がのってこなければ何もできないのだ。
指導者にはアイディアや理論だけではなく、選手の信頼を勝ち取るための説得力、選手が自分は大事な存在なんだと実感してもらえるためのアプローチ、その気にさせるためのスピーチ、スタッフとの信頼関係、正直な言葉で会話ができる空気感の創出など、様々な資質が必要となる。
ホッフェンハイム、そしてライプツィヒで披露されている躍動感あふれるサッカーを見ていたら、どれだけナーゲルスマンが選手の心に入り込んで、心を震わせているかを感じ取ることができるではないか。
実はナーゲルスマンは20歳の時、父親を亡くしている。二人の姉はすでに家を出ており、一番下のナーゲルスマンが葬儀に関する手伝いを担わなければならなかった。母親のために新しい住まいを見つけ、葬儀の準備をし、書類関係を整理するというすべてを担わなければならなかったという。
僕が20歳の時にそんな事態に襲われたら、どうしていいかわからなくて途方に暮れてしまっていたかもしれない。それともそんな感傷に浸る時間もないまま、流れ作業のように必死に一つずつ解決していくしかないのかもしれない。
「僕の人生で一番つらい体験だったのは間違いないけど、それでもあれが僕を成長させてくれたというのはある」
彼もまた一人の人間なのだ。そんな悲しみを乗り越えて、力に変えて、ナーゲルスマンは歩き続けている。
今回はナーゲルスマンがライプツィヒの地元メディアに答えたインタビューの抄訳を次ページで紹介したいと思う。彼の人間らしさが感じられるはずだ。
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