中野吉之伴フッスバルラボ

【ブンデス】ミックスゾーン解禁となった試合で聞いた原口元気の談話。ウニオンで欠かせない主力となるために必要なこととは?

▼ マックス75%までの観客動員が可能に

10月3日(日)に行われたブンデスリーガ7節マインツ対ウニオンという試合は、一般のサッカーファンにとってはさして興味を引くカードではないかもしれない。日本のサッカーファンは日本代表MF原口元気と遠藤渓太が所属しているので、少なからずウニオンでの動向は注目されているとは思うが、クラブとしての注目度を考えると、正直大きくとり扱われる試合ではないかもしれない。

でも実は、これからのドイツプロスポーツ界にとって大きなターニングポイントになるかもしれないほどの大きな意味を持つ試合だったのだ。

観客動員がスタジアムキャパシティの最大75%までオッケーとなり、試合後選手にミックスゾーンで取材をすることが可能となったのだ。

マインツのスタジアムは33000人収容できるので26000人までが許可されることになる。

ちなみにそれまでは50%までかマックス25000人までに制限されていて、またスタジアム内は原則的にマスク着用が義務付けられていた。でも実際にほとんどの人がマスクを外していたし、そもそも「これはおそらく誰も守らないだろう」という前提で諸々の条件が考えられていたと思われる。サッカー観戦にくるファンがマスクをしたままずっとおとなしくするなんて想定していない。だから「彼らがマスクを外して応援していたとしても感染のリスクが上がらないように」という視点が必要で、そのための人数制限だったわけだ。

その辺りドイツらしいというか、ジャーナリストへの制限緩和にも慎重だった。最初の1年は地元紙、ドイツの全国紙でいっぱいになることもしょっちゅう。インターナショナルのフリージャーナリストは本当にノーチャンス。

そんな状況からすると取材申請が通るようになっただけでも喜ばしいのに、「この試合からミックスゾーンが再び開かれます」という連絡をマインツの広報からもらったときは、《うぉ!》と変な声も出たものだ。

当フッスバルラボでは当日の試合会場の様子を交えて、久しぶりのミックスゾーンで行われた試合後の原口元気とのやり取りをご紹介したいと思う。自身のプレーについて、ここまでのシーズンを振り返って、遠藤渓太の状況について、そして代表戦に向けて丁寧に話をしてくれた。

少しでも現場の空気感を感じてもらえたらうれしい限りだ。

▼ スタジアムへ向かうファンの雰囲気

フライブルクからマインツへは電車で2時間少し。広報からは混雑を避けるためにカメラマンとジャーナリストの入場時間を分けて行う旨が伝えられていた。14時からジャーナリスト向けに開かれるとのことなので、それに合わせてスタジアムへ向かう。

マインツの中央駅を出て右へ曲がり、しばらく行くとそこからスタジアムへのシャトルバスが出ている。駅前には赤いマインツのユニフォームをまとったファンがたくさん。バスに乗り込んで周りを見渡すとなんとなくだけど、雰囲気がちょっと前とはまた変わってきているのを感じた。

有観客が再び許可された直後は観客のほうに少なからず緊張感があった。マスクは完全着用。不必要なコンタクトを避ける。みんな気をつけている。だからだろう。スタジアムへのシャトルバスやトラム内はこれからサッカーの試合とは思えないほど静かだったのだ。

それがこの日のバスはにこやかでにぎやかないつもの空気感があった。大声で叫ぶファンはいなかったけど、みんなマスクを着用しながら周りの人と談笑する。コロナ禍における互いの距離感というものに僕らはいつの間にか慣れて、それなりに適切なものをみつけてきたようだ。

スタジアムへ着くと早速メディア用入口へ向かう。ここでデジタルのワクチン接種証明を見せて、荷物チェックをして、無事にチケットを手に入れた。普段だったらケイタリングがあるので試合前に食事をとるんだけど、そこはコロナ対策でちょっとしたパンとお菓子とミネラルウォーターが準備されていた。

記者の作業場は室内なので、これまでは使用許可されないところが多く、僕らはすぐに外の記者席にいかなければならなかったのだが、こちらもテーブル間の距離を離してこちらも少し使用することができるようになっていた。今はまだいいが、これから寒くなってくることを考えると、室内で作業できる場所が提供されるのは本当にありがたい。

試合40分前くらいに記者席に移動して両チームのアップの様子をチェック。同じようなメニューでもクラブのカラーが出ていて興味深い。例えば5対5+2フリーマンのようなポゼッションゲームを取り入れるクラブは多いが、エリアの作り方がそれぞれに違いがあり、マインツは正方形に近いエリアでやっていた。フランクフルトなどは長方形で縦方向への意識付けをしてたりする。

この日の観客は16000人。予想入場者数に比べるとちょっと少ないのが残念だったが、ゴール裏は満席で、その声のボリュームは迫力満点。

ちょうどこの日はマインツのベテランDFシュテファン・ベルがクラブ通算200試合というメモリアルマッチ。ベルは岡崎慎司や武藤嘉紀所属時からプレーしているし、それこそ現監督ボー・スベンソンとDFラインで一緒にプレーしていたCBだ。

マインツの象徴とされる選手だけに試合前のセレモニーではファンから大きな声援と拍手が送られていた。素敵な光景に思わずウルっときたし、同時にこの1年半、コロナ禍でこうした機会を静かに迎えた選手が多かったことを改めて思った。みんながみんな、こうしたセレモニーを受けられたわけじゃない。

▼ 原口のウニオンにおける存在感

試合のほうはホームのマインツが先制したものの、後半ウニオンが流れをつかみ、FWタイボ・アボニーの2ゴールで逆転勝利。リーグ3勝目を挙げ、7位へ付けている。

この日、原口は左インサイドハーフでスタメン出場し62分までプレー。前半は守備に追われる時間帯が多かったが、球際へのアプローチタイミングとスピードは素晴らしい。そして状況ごとにポジショニングを変えて、自分がケアすべきスペースと対戦相手を常に修正している。

マインツの先制点の場面ではセンターライン付近でボールロストをし、そこからの攻撃が失点につながってしまったのはもったいなかったが、あとで話を聞くとかなり紙一重の局面だったことがうかがえる。

後半はポジションを前目に取りながら、ビルドアップからの縦パスをうまく引き出していた。相手守備と中盤の間で起点を作れるようになったことで、ウニオンの攻撃がスムーズになっていく。

49分には元ドイツ代表マックス・クロ―セからのパスを原口がスルーし、その後ろにいたアボニーからのパスを受けてエリア内へ持ち込み左から折り返し。好チャンスを作り出した。60分にはクノへから原口へ縦パスを起点にクルーゼからアボニーへとパスが渡り、惜しいチャンスを演出。

原口は直後に交代となったが、チームに確かな流れを作り出したと思われる。ウニオンのウルス・フィッシャー監督が記者会見で話していた「ここまで6試合で3失点しかしていなかったマインツ相手に2点を奪っての逆転勝ち。賛辞に値するパフォーマンスだった」という賞賛の言葉には、原口の貢献も間違いなく関わっているはずだ。

原口はやはりインサイドハーフだと生きる。攻守の運動量は本当に随一のものがあるし、次の展開を意識したプレーをすることができる。足を止めずに走り切ることができて、攻守をつなぐことができる大事な存在だ。だからこそ、ウニオン移籍1年目でしっかりとポジションを確保しているのだ。

▼ 原口元気:試合後インタビュー

中野 ミックス(ゾーン)があまりに久しぶりで、こちらもあれなんですけど(苦笑)。まずは勝利おめでとうございます。

原口 そうっすね(笑)。(交代で)出てから、(決勝点が)入ったからあれですけど、後半いい戦いできていたし。前半ちょっと苦しかったですけど、後半ぐらいできれば勝利に値するできたっだと思います。

中野 前半苦しんだというのはどのあたりで?

原口 ああなるのはなんとなくイメージできていたし、監督も相手がパワーでプレッシャーかけてくるんで、ああいう展開になるだろうというのはミーティングでも話していたので、イメージはしてました。

予想以上に相手はパワーがあって、なかなかうまい具合にパスが回せなかったんですけど、後半になって勇気をもってプレーできたかなって、チームとして。それはハーフタイムにすごい言われたんで。それを表現できたんで。結局点が入ったのはカウンターでしたけど、自分達のサッカー、後半は少しできてたんで、流れは取り戻せたかなと。

中野 具体的にはどのあたりを修正した?後半入ってすぐ原口君が絡んでチャンスがいくつか作れていていたけど。

原口 やっぱりその、落ち着けと。ボールもって、相手のプレッシャー早いのはわかるけど、そこで一枚はがすなり、しっかりつなぐなり、パニックを起こすなと。ちゃんと落ち着いてプレーしろというのは言われましたし。それをある程度選手が、後半は実践できたので、流れがうちに傾いたかなと思います。

※後半部分は次ページ。自身のプレー内容について、これまでの振り返り、遠藤渓太選手に対する話も出てきます。

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