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中野吉之伴フッスバルラボ

【無料コラム】ドイツの首相は選挙だけでは決められない。選挙後の体制づくりのほうが実は大変?

こんにちは!無料コラム「ゆきラボ」今日はちょっと普段と趣向を変えて政治の話です。

日本では先日自民党総裁選が行われ、岸田新内閣が発足したばかりですよね。ちょうど時期を同じくして、ドイツでも連邦議会総選挙が行われました。メルケル首相の後任を選ぶ選挙となったため、国際的にも注目度の高い選挙だったわけですが、同じ首相が決まる場でもずいぶん違う光景だなと感じました。もちろん、議会の総選挙と与党の党首を選ぶ選挙とでは、そもそも別物ではあるのですが、それにしても対照的だと感じることが多かったので、今回はそんなドイツの選挙の模様をお伝えします。下の写真はドイツの国会議事堂。議事堂前の広場までは誰でも行くことができ、散歩する人も芝生でくつろぐ人もいて自由な雰囲気です。

Photo : Daniel Schwen – 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=3223903による

今回、日本では与党第一党である自民党の総裁が決まって短い期間で次期の内閣が発足しましたが、ドイツでは時期首相も内閣の顔ぶれもまだ全く見通しが立っていません。ドイツの選挙は終わってから次期首相や内閣の顔ぶれが決まるまでに長いながーい時間をかけます。次期政権が発足し始動するまでの道のりが本当に長いのです。

戦後の西ドイツ~現在の統一ドイツの中で、一つの党が単独で過半数を獲得できたことはほとんどないのだそうです。したがってドイツの政権は複数政党による連立政権が基本になります。

この連立政権ですが、議席を持つ全ての政党は選挙の後に協議を行い、どことどことが手を組むか、各党が自由に交渉を行うことができます。それぞれの政策の違いをすり合わせて、協力し合えるかどうかを探り合うのです。交渉の結果、連立政権が組めそうだ、となれば政策や閣僚の顔ぶれなど具体的な協議に入りますし、交渉が決裂することもあります。

街頭に貼られた選挙ポスター

今回の選挙で最も得票率が高かったのは社会民主党(SPD)で、その党首であるオラフ・ショルツ氏が、一応、現状では最も首相になる可能性が高いと言えるかもしれません。しかし、僅差で得票率2位だったキリスト教民主同盟(CDU)が他党と協力体制を作ることに成功し、合計議席数でSPDを超えればそちらが政権与党となります。3位以下の政党がどこに味方するかが決まるまで、どこが与党になれるかは分かりません。連立政権=最も議席の多かった党+他の党で発足する日本とは、大きく異なる点です。

前回の2017年総選挙からメルケル氏が正式に首相に承認されるまでには、なんと5カ月以上かかりました。次期首相が正式に決まるまでは、前任者が首相を務めるので、首相の座が空席になることはないのですが、それにしても選挙が終わってから首相が決まるまで、日本と比べるとずいぶん時間がかかりますね。

実は、ドイツの政治では、ナチスの独裁政権を生み出してしまった過去への反省から、1人の人物や1つの党が圧倒的な支持を得る、ということがそもそも起こりにくいような選挙制度になっています。1つの党が圧勝するということがほとんど起こらないので、国会で過半数の議席を獲得するためには、どの政党も、選挙結果を見て「国民は政治に何を求めているのか」を判断し、他の政党と意見を交わして協力体制を作っていかないと与党にはなれません。意見の異なる他者と粘り強く交渉し、折り合いのつく点をさがして、少しでも味方を増やす努力ができない党には政権は取れないのです。

Photo :Norbert Aepli, Switzerland, CC 表示 2.5, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=802793による

このプロセス、先ほども書いたように時間も交渉の手間もかかりますが、1つの政党の考え方だけに沿って政治が進むのではなく、より多様的な考え方を取り入れながら、その中で少しでも多くの人が納得できる方向へ舵を取っていく、という仕組みになっているので、一見とても遠回りに見えますが、それだけの時間と手間をかける意義のある過程だと感じます。メルケル首相が歴代トップクラスの長期政権を担うことができた理由の一つには、こちらのTBSラジオ番組の特集によると、この異なる意見をすり合わせながらかじ取りをしていくという能力に、メルケル氏がとても長けていたからなのだそうです。

【音声配信】「ドイツ総選挙後の引退を表明したメルケル首相。 在任16年の功罪とは」ゲスト:板橋拓己さん▼2021年9月28日(火)放送分(TBSラジオ「荻上チキ・Session」平日15時半~)

今回ここフッスバルラボで政治の話を書こう!と思ったきっかけは、この放送を聴いたことでした。国レベルの大きな集団から、身近で小さな集団まで、私たちは一人一人違う人間の集まりです。だから一見、多くの人に支持されているように見える物事でも、必ず「少数派」「そうではない派」がいることのほうが圧倒的に多いはずです。その「そうでない派」の意見も一定程度組み込まないと政権が作れないようになっているドイツの政治と、同時期に行われた日本の総裁選挙。とても対照的で、考えさせられることの多かった出来事でした。

ところでTBSラジオといえば、中野吉之伴が「アシタノカレッジ」にも出演させていただいたことがあります。YouTubeでアーカイブもありますので、こちらも合わせてリンクを貼らせていただきます。

今週もお読みくださりありがとうございました!次回もよろしくお願いします。

【参考にさせていただいた記事】

BBC:ドイツ、総選挙後の連立交渉スタート 先行き不透明で長期化も

Wikipedia 2021年ドイツ連邦議会選挙

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