中野吉之伴フッスバルラボ

【ドイツ便り】フランクフルトの美術館でレンブラントを見ながらサッカーのことも考えていた話

▼ 美術館で感じた世界観の拡げ方

先日、マインツで開催された指導者講習会に参加してきた。対面での講習会となるといついらいだろう?2019年7月下旬の国際コーチ会議以来ではないだろうか。本来今回の講習会ももっと早いタイミングで開催予定だったが、新型コロナウィルス対策で延期に次ぐ延期。

このまま中止になっても別に不思議ではなかったけど、無事にこの度開催されることとなった。ブンデスリーガクラブのFSVマインツ育成アカデミーの指導者から直接レクチャーを受けられて、スタジアムではU23チームによるデモンストレーションも見れて、いろんな刺激をもらえた。

で、この講習会についても取り上げたいし、取り上げる予定だけども、今回はその前に講習会翌日にフランクフルトのシュテーデル美術館を訪れたときのことを書きたいと思う。

ドイツサッカー関連WEBマガジンなのに美術館?

そう思われるかもしれないが、実は美術館や博物館めぐりは頭の中を整理するのにすごくお勧めだったりする。なのでお付き合いいただけたら嬉しい限りだ。

僕は別に美術に造詣が深いわけではない。正直わからないことのほうが多い。それでも日本の学生時代、欧州に一人旅にきた時には、各地にある美術館や博物館を訪問して回った。そういえば当時を振り返ってみると、欧州各地サッカー名門クラブがある地に行っているのにサッカーの試合を観に行ったり、スタジアムツアーに参加したこともない(苦笑)。

そんなだからだろうか、試合を観に行こうとすると変なトラブルに巻き込まれることが多かった。余談だけど、ある時リバープールへ行ったときの話。大学3年生の春だったか。

「今回くらいはサッカーの試合を観に行ってみよう!」と気合い入れてアンフィールドへ向かおうとしたら、スタジアムへ近づこうにも一向にファンの姿が見えない。

「あれ?こんなに今日のゲームは人気がないの?」

この時はまだ何も気づいていない。不思議に思いながら近くにあったキオスクで地元紙をかって、試合情報をチェックしたら、この日はホーム戦じゃなくてアウェー戦だったという…。

その日の試合はリバープールとローマのUEFAカップで試合会場はまさかのローマ。そして当時のローマでは中田英寿が所属しており、そしてこの試合ではしっかり出場して、さらには見事にゴールを決めているというね。リバープールの街で飲んだビールの苦さをしっかりと覚えてる。

さて、しっかりと脱線したのでそろそろ美術館の話へ。そんなわけで欧州旅行に来た時の僕は、いつも現地にある史跡や美術館や博物館での時間を楽しんでいた。世界的に有名な絵画や作品を数多く僕は見てきた。欧州3大美術館とされるパリのルーブル、マドリードのプラド、ウィーンの美術史博物館にも行ったし、フェルメールの絵がみたいとオランダのデンハークにあるマウリッツハウス美術館にも足を運んだ。ハンガリーのブタペストやチェコのプラハでは国立博物館で時間をかけて回った。

ドイツに来た当初暮らしていたミュンヘンではアルテピナコテークやノイエピナコテーク、レーンバッハ美術館なんかも何度か行ったりしていた。

とはいってもだ、そんな若かりしのころの僕は《知ったか美術好き》でしかないし、それこそ世界的に有名な画家だったり、それぞれの時代背景なんかまではパンフレットに書かれている内容をチェックしていたけど、それ以外はやっぱり薄い知識しかなかったと思う。じっくり絵を見てもわからないことのほうが多い。専門的な分析なんてできっこない。

でも美術館にある空気感がすごく好きなんだ。

特にヨーロッパの美術館はどこも建物が大きくて、吹き抜けが高くて、開放感があって、その中で数多くの作品が並んでいるわけだけど、訪問客の表情とか鑑賞の仕方を観察していると、みんな思い思いに好きなように楽しんでいるんだ。

眉間にしわを寄せて偉そうなことを言ってる人なんていないし、にわか美術愛好家を毛嫌いする自称美術評論家みたいな人もいない。いなくはないけど、そもそも楽しみ方は自由だし、感じ方だって自由なんだ。

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