中野吉之伴フッスバルラボ

【無料コラム】ドイツ人が考える「健康で文化的な最低限度の生活」の話

こんにちは!基本的に毎週水曜日更新のこのコラムですが、先週のコラムをアップしてからさらに週末にかけてひと悶着がありました。

ドイツ社会の中でも、特に厳しいコロナ対策が取られてきた飲食店や宿泊施設・屋内レジャー施設の利用・屋内イベントへの参加のために必要だった2Gルール(予防接種完了(Geimpft)かコロナ完治(Genesen)のいずれかの証明書の提示が必要)が、週末から2G+に引き上げられたのです。

これは、2Gを満たしている人であっても、さらに追加でコロナの簡易検査を受けて陰性の照明をしなければならないということ。せっかく予防接種を済ませていても、簡易検査をまず受けてからでなければ、店でコーヒー1杯飲めない、という措置です。ただでさえ客足が遠のいている飲食店関係者からは悲鳴しか聞こえてこなかったのですが、4日土曜日に施行されて、5日日曜日には早くも改定になりました。

この2G+ルール、接種済・回復済であってもその後抗体の力が弱まってしまっている人が感染することを防ぐために設けられたので、後日、「ブースター接種を受けた人は2G+の対象外とする」という追加策が発表されました。ドイツでブースター接種が必要とみなされるのは、原則として2回目の接種から6か月以上が経過した人

2G+に合わせるように、街中にはまた何件もの無料コロナ検査所が復活しています

ん?てことは、2回目の接種か完治から6か月未満の人はまだ抗体があると見なしてよいってことになるんじゃないですか??ということで、この人たちもさらに追加として2G+の対象外となりました。予防接種の優先職種や年齢のカテゴリーがなくなり、一般的に誰でも予防接種が受けられるようになったのは夏頃からだったので、その頃に接種を受けた大多数の人は年明け頃までは2G+は要らないということになります。

もちろんこの6か月という数値は、ルール作成の便宜上のものなので、実際にその人の抗体力がどのくらいあるか……ということとはあまり一致しないとは思うのですが、ともあれ、これで8月上旬に2回目接種を終えた私の場合、2月上旬までは2G +の追加検査は不要になりました。

デパートの入り口で3Gのチェックを受ける入店客。建物の中に入ってからのチェックでいいのか?という気もしますが

朝令暮改を地で行くようなコロナ対策、新聞では2Gプラスマイナスなどど揶揄され、振り回されている飲食店の人は気の毒ですが、ドイツの国営放送ARDのインタビューに答える居酒屋経営の女性が「それでもロックダウンよりはずっとマシ。従業員全員に『明日から仕事がなくなる』と言わなくてはいけないことに比べればまだ許容範囲」とコメントしているのをニュースで観ました。

それと、一度走り出したら停止も変更もできない政策よりは、少々の混乱はあったとしても必要なアップデートは躊躇せずきちんと行ってくれる政策のほうが信頼はできるな、とも個人的には思います。

2Gだ3Gだと規制がややこしいですが、これと関係なくどんな人でも普通に入れて利用できる商業施設もいくつもあります。バスも路面電車も3Gなしでは乗れなくなっている昨今ですが、日本の憲法にもあるような、いわゆる「健康で文化的な最低限度の生活」に必要な店舗での買い物には3Gのチェックがありません

どんな店がラインナップされているかというと、まずはスーパーマーケットやドラッグストア、パン屋・肉屋などの食料品店、そして銀行や郵便局やガソリンスタンドといった、生活のインフラになる店が挙げられます。眼鏡店や補聴器店、ベビーグッズや介護・福祉用品店、ペット用品店など、自分や家族のケアに欠かせない店もここに含まれます。花屋や園芸店、ホームセンターが入っているのはDIY好きでガーデニング好きのドイツ人らしいところ。さらに、年末の迫るこの季節、「クリスマスツリー販売所」もここに名前を連ねています。

クリスマスツリー販売所は12月に入るとスーパーやホームセンターの駐車場など、屋外の広いスペースを利用して設置され、みずみずしい匂いのする生のモミの木が売り出される季節限定の店舗のこと。ここでツリーを買うことは3Gの有無に関わらず基本的な人間の権利として認められるべきだ!と考えられているわけで、クリスマスという行事がここドイツでいかに大切にされているのかが伺える設定だなと実感します。

ただ、1つの建物の中に要3Gと3G不要の店舗が混在しているケース、さらにそこに要2Gのフードコートも混ざっているケースも当然普通にあるので、多くの店舗ではチェックの人員配置や客の動線のコントロールに苦慮しているようです。

クリスマスまであと2週間少々。11月から繰り返し発動されている行動制限の効果がそろそろ出てきてほしいところですね。来週はこのクリスマスツリーのことも書きたいと思います。その前に、我が家のリビングにも今年のツリーをお迎えしなくては!

来週の無料コラム「ゆきラボ」もよろしくお願いいたします。

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