中野吉之伴フッスバルラボ

【育成論】ボール扱いだけを《センス》扱いしないで。そして街クラブでできることってなんだろう?

▼ ボール扱いだけを《センス》扱いしないで

ドイツのスカウティングにおける取り組み例をREALSPORTSさんに寄稿させていただいた。

「日本で熱心にサッカーに取り組む小学生の子どもたちがJ下部などの強豪チームのセレクション(エリートスクールというセレクションありのスクール含む)に挑む中で、近年は体のサイズと、ドリブルで打開する個の力が何より優先される傾向にあるという話をよく聞きます。

J下部のセレクションを受けた子たちを見ても、確かにサイズのでかい子やごりごりのドルブラーが某Jクラブ育成の最終選考まで残ったと聞き、視野が広くて中盤で黒子に徹するタイプの選手が一次で落ちたりということは何度かありました」

これは編集さんから最初にいただいた問いかけだが、こうした話はいろんなところで聞いたことがある。親交ある池上正さんは以前こんな話をしてくれた。

「いいところを見ている、いいポジショニングを取っている、次のプレーへのアイディアがある。そうした選手を『あの子、いい選手だねぇ』というふうに話すと、『え?そうですか?』みたいな反応をされたりする」

僕自身も日本でなんどかトレセンチームを対象に指導実践をさせてもらったことがあるが、《みんな似たような選手ばかり》という印象をよく受けるのだ。だからゲーム形式になると流れとかがなくて、ごちゃごちゃしてしまう。みんなドリブルをしたがる、みんなセンターに集まりたがる。

起点となれるプレー、相手の起点をつぶすプレー、相手の狙いを外すプレー、ルーズボールをマイボールにするプレー。

そういうところで力を発揮できる選手がいない。おそらくだけど、《個の力》とやらを持っている選手がこれからそうした能力を身につけたらいいという理論がそこにはあるようだ。なるほど、確かにそうしたやり方で取り組むこともできるだろう。

でもボール扱いがうまいとされる選手だと「あの子はセンスがあるね」といって目をキラキラして取り上げて、「センスというのは後天的にはなかなか身につかないからね」としたり顔で話すんだったら、相手が届きそうで届かないところへポジショニングを取ったり、相手の懐に飛び込む《センス》だって一緒だし、重要視しなきゃダメなところ。そしてそうした能力はサッカーというスポーツでものすごく大事だよ。

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