中野吉之伴フッスバルラボ

【指導論】負荷設定の大切さはドイツでは最初のライセンス講習会で学ぶこと。基本を知らずの理論じゃ役には立たない

※フットボリスタより転載

▼ 久しぶりの対面指導者講習会リポート

去る11月2日(火)、マインツで久しぶりに対面による指導者講習会が開催されたので参加してきた。

これはドイツプロコーチ連盟(BDFL)主催の日本でいうところのリフレッシュ講習会。ドイツサッカー協会公認A級またはプロコーチライセンス(日本で言うS級)所得者でBDFLの会員になっている人は誰でも無料で参加することができ、会員以外のA級、プロコーチライセンス所得者やB級ライセンス所得者でも講習会費を支払えば参加できる。

今回はブンデスリーガクラブであるFSVマインツの育成アカデミーが全面協力し、プロチームのフィジカルパフォーマンス部門主任スベン・ヘルツォーク、育成指導者ダイレクターを務めるヤン・ジーベルト、U-23監督バルトシュ・ガウル、U-23コーチのジモン・ペッシュら指導者がプレゼンやデモンストレーションを行ってくれた。

ちなみに、ジーベルトは僕がA級ライセンスを所得した時の同期。当時の参加指導者の中でもとびきり有能で、「こういう人がさらに上のレベルで活躍するんだろうな」と思わされるだけのものを見せてくれていた。しかも人間性も最高で、授業後によく一緒にビールを飲みながらいろんな話をしていたのを思い出す。

▼ トレーニングを考えるうえでの基本って何だろう?

さて、今回マインツが選んだテーマは《エネルギーシステムトレーニング》。ひと言で言ってしまえば「運動におけるエネルギー供給システムを考慮し、それに合った負荷バランスでできるように状況を整理してトレーニングしましょう」ということになる。

プロチームから育成まで、フィジカルに関することすべてを統括するヘルツォークが説明する。

ヘルツォーク 大事なのはまず、私たち人間は運動をする時にどのようにしてエネルギーを供給しているのかを知ること。そして、それをもとにクラブとしてどのようなサッカーを目指し、そのためにはどのような能力が必要で、それを高めるためにどのような傾向でトレーニングをした方がいいのかを考えることが大切になると考えています。

エネルギー供給システムというのは、人間が体を動かす際に必要なエネルギーを生み出す仕組みのこと。少し専門的な話をすると、 僕らの筋細胞内にはATPというエネルギー源が貯蓄されている。このATPはとても爆発力があり、使用すればすぐに全力で動くことができるが、その反面持続性がない。

ヘルツォーク マックスで7~10秒しか持ちません。本当の意味で100%の力を出せる時間は本当にわずかでしかなく、回復にもそれなりに時間がかかってしまいます。となると、筋細胞内のエネルギーだけではまったく足りないわけです。迅速に別のシステムでエネルギーが補給されなければ、動き続けることはできません。その1つが《解糖系》(乳酸系)であり、もう1つが《有酸素系》と呼ばれるものです。

例えば、僕らが試合中にダッシュを開始すると体内では何が起こるのか。まず筋肉内にあるATPが利用されるが、3~5秒後から筋肉の連続収縮に伴いクレアチンリン酸を使用したエネルギー供給(ATP-CP系)へと変わっていく。これが10~30秒続く。

さらに、100%に近いエネルギーをねん出するため体は次に糖質(炭水化物)を燃焼させようとする。この時に発生するのが乳酸だ。この状態で持続可能な時間は2分ほど。酸素なしで高エネルギーを作り出すこのエネルギー供給システムは《解糖系》(乳酸系)と呼ばれる。

そして、2分以上経過した後は酸素を用いて、つまり心臓から血の流れとともに全身へ酸素が供給され、糖質(炭水化物)や脂質(脂肪)を燃焼させることで持続性の高いエネルギーを作り出せる《有酸素系》へとスイッチしていく。

ヘルツォーク この3つのエネルギー供給システムがあり、体内ではそれぞれのシステムを行ったり来たりしているということを理解することがとても大切です。先ほど『それぞれのエネルギー供給システムに特化して鍛えることはできるのか』という質問がありましたが、人間の体内では3つのエネルギー供給システムが同時、連続、交互に切り替わりながら動いているわけです。どのシステムをより多く利用した状態という定義をすることはできますが、どれかに特化したトレーニングはできないんです。

(残り 3400文字/全文: 5174文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

日本サッカーの全てがここに。【新登場】タグマ!サッカーパック
1 2
« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ