【指導論】勝利至上主義とはなんなのだ?結果を優先した育成が子供の成長にとって大きな弊害となる理由
柔道で小学生の全国大会が中止となった。
歴史的な決断ではないだろうか。そして為末大さん、益子直美さんをはじめ、多くのトップアスリートの方々がこの決断を支持するメッセージを出していることはとても重要だ。
全柔連が小学生の全国大会を廃止するという決定をしました。私は素晴らしい決断だと思います。なぜ若年層での全国大会を行わない方がいいのか三つの理由で説明します。
①そのスポーツが弱くなるから
②全ての子供がスポーツを楽しめないから
③競技を超えた学びが得られないから— Dai Tamesue 爲末大 (@daijapan) March 18, 2022
バレーも柔道に続きたい!
2022年度から小学生全国大会、全柔連が廃止へ
『行き過ぎた勝利至上主義が散見する』
代替イベントとして練習会や講習会を開催。 pic.twitter.com/Q02732Nmas— 益子直美 (@masukonaomi) March 18, 2022
こうした決断への反対意見もまだ多く存在する一方で、《行き過ぎた勝利至上主義は子供たちの成長に悪影響を及ぼす》ことへの理解を深めている人が増えてきていることを素直にうれしく思う。
全国大会の是非については、以前幼稚園大会の時にまとめたものがある。小学生に対しても根本的な考えは一緒なので、まだ読んだことがない方はこちらを参考にしていただきたい。
さて、だからといって今回の件について何も言わないというのもまた違う。そこで今回フッスバルラボでは《そもそも勝利至上主義とはなんなんだ?》というテーマについて、掘り下げてまとめてみたいと思う。
▼ 勝利至上主義ってなに?
よく聞く言葉だ。ここ最近はよくメディアでもお目にかかる。僕自身も記事で書いたりする。
でもそもそもだけど、勝利至上主義ってなんだ?
言葉からそのまま解釈すれば《勝利することを最重要視してとりくむ考え方》となる。
でも勝利することを最重要視ってどういうこと?
ここが丁寧に定義されないまま、主張したり議論しようとするから話がこんがらがる。スポーツでもなんでも、試合や大会となればだれだって勝ちたいし、そのために準備をする。僕だってそうだ。育成指導者を20年以上やってるけど、どんな試合だってできたら勝ちたい。それはだれも否定しない。
それに《勝利する》ってなにをさして言ってるのかもあいまいだったりする。
週末の試合?来月の大会?5年後のリーグ戦?大人になった時の社会的な地位?親になった時の価値観?定年退職後の充実感?
《何かを勝ち取る》ことを勝利というのであれば、誰だって何かを勝ち取るために取り組むはず。だから極端なことを言えば、誰だって《勝利至上主義者》ではあるのだ。
じゃあ、何を議論しなきゃいけないのか?
例えばドイツでの表現でいうと、《結果重視主義》と《パフォーマンス重視主義》という考えがある。
《結果重視主義》は試合や大会での結果を出す、つまり試合に勝つ、リーグで上位につける、トーナメントで勝ち残るという結果を出すためにどうしたらいいかをベースに取り組む考え方。
《パフォーマンス重視主義》は選手個々のパフォーマンスを成長させるために、どのように取り組み、どのように刺激を与え、どのように自主的に取り組ませ、どのように成長へと導くことができるかをベースに取り組む考え方。
そしてどちらをより大切にすべきかを考えるためには、様々な前提条件を設定することが必要になる。
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