【ブンデス】1部昇格2部優勝を果たしたシャルケで板倉滉が積み上げてきたもの。「この一年はめちゃくちゃいい経験をした。プラスしかなかった」
▼ シャルケが1部昇格&2部優勝!
始まりはフランクフルトだった。ヨーロッパリーグ準決勝でウエストハムを下し、夢の決勝進出を決めた夜、フランクフルトファンがゴール裏の応援席から飛び出してグラウンドに殺到。緑が見えなくなる風景を作り出した。
「フランクフルトがやったのなら、俺たちも!」
そんな風潮がひろがったのだろうか。リーグ終盤、ドイツのいたるところでファンいっぱいのグラウンド画が観られている。もちろんシュツットガルトのように土壇場で遠藤航が劇的なゴールを決めて1部残留がかなったみたいなことがあったら、そりゃファンも飛び出したくなる。
そうした感情の爆発こそスポーツにおける素晴らしさの一つだというのは僕も認めるところ。でもどこかで線引きを引く必要だってやっぱりある。記念に何かを持ち帰りたいという心理だって理解できないわけではないけど、ゴールを倒して、スポンサーの看板を引っぺがして、芝を根こそぎ取ってとなったら、被害総額いくらになるの??シュツットガルトではいきなり小競り合いが始まり、見知らぬ男に殴られた人が意識不明で病院に送られたなんてショッキングなニュースも流れてきている。
せっかくのお祭りムードをお祭りのままにすることができないようになったらどこかで取り締まる必要も出てきてしまう。それは悲しい。感情のおもむくまま何もかもをしていいわけではないし、そこで自制する、自制を促す、それを聞き入れるという最低限のことはちゃんとしないと。
そうした点で2部最終節ニュルンベルク対シャルケ戦はそれなりに準備ができていた点を評価したい。昇格はすでに決めていたが、この試合に勝利すれば優勝を確定することができるシャルケ。当然会場では優勝セレモニーの準備が行われていた。
ファンの乱入もある程度想定済みだったのだろう。試合後すぐはスタジアムアナウンスの注意にしたがっていたシャルケファンだが、少しずつほころびが生まれ、決壊し、あれよあれよとファンがグラウンドになだれ込んでくる。
「この後セレモニーだけど、ファンが落ち着いて席に戻るまでかなり時間がかかりそうだな」なんて思ってみていたら、開催サイドは選手入場ゲートの周りにスペースを作り、その周りに通行止めでファンと選手との間に確かな距離を作っていたのだ。そしてその前にはたくさんのセキュリティスタッフ。
ちょうど記者席のすぐ前にセレモニースペースがあるものだから、僕も間近で見ることができた。スムーズにセレモニーは行われ、シャルケ選手はそれぞれ優勝メダルをもらい、優勝皿を手にファンと一緒に祝い合う。
板倉滉も優勝皿を手に満面の笑みで高々と掲げていた。雰囲気を壊すことなく、選手やスタッフが危ない目に合うことなく、被害最小限でこの空間を作り出したというのは素敵なことだと思われる。それでもゴールは壊されていたし、芝もかなり奪い取られてはいたけど、そこを許容範囲とするところは個人的に好きだ。
▼ 約6か月ぶりとなるミックスゾーンでの取材
さて、試合後にはミックスゾーンで板倉と話をすることもできた。バイエルン州ではコロナ対策がさらに緩和化されているようで、この日はFFP2マスク着用でミックスゾーンが許可されていたのだ。振り返ってみると11月28日にレバークーゼンで浅野拓磨のコメントを取って以来。長かった。
選手コメントが取れない中、取材でスタジアムに足を運ぶのはなかなかに心の整理が必要だったのが正直なところだ。いまも選手コメントありきの記事への需要が多いのはよくわかる。監督に質問したり、アナリストに話を聞いたり、ファンと絡んだりして現場の空気と声を届けてきてはいるけど、それもどこまで読者が求めているものかというとわからない。
それでも現場に足を運び続けることはとても大切だと思っている。この空気感がわからないまま記事を書くようになったら僕はおしまいだと信じている。続けていきたい。
今回フッスバルラボでは板倉とのミックスゾーンでのやり取りをアップしたいと思う。昇格、優勝を決めた彼の言葉をぜひ聞いてほしい。
▼ 板倉「優勝したなと、やり切ったという感じです」
—すごい雰囲気で!
板倉 すごいですね!やったぞという感じですね。
—試合を終えて優勝が確定した時の気持ちは?
板倉 優勝したなと!やり切ったという感じです。
—喜びとほっとしたとだと?
板倉 いやぁ、でも先週1部昇格が決まった時点で、そこでまずめざしていたところをクリアできて。さらにこうして優勝できて。
—シャーレを掲げたとき、周りに押し寄せてきていたファンの声とかも身近に感じて
板倉 そうっすね、今日もめちゃくちゃ来てくれていて。前回ホームで1部昇格決めて、アウェーでこれほどまでサポーターの方が応援に来てくれて。優勝できて最高でした。
—今シーズン、いろいろと簡単ではないことがたくさんあった中で昇格、そして優勝できたことに関しては個人的にどこにポイントがあったと思っていますか?
板倉 一気に振り返るのは難しいですけど、やっぱり簡単ではなかったですね。こう、シャルケ自体中々1位に上がれずに、ずっと5位とか6位とかにいて、上がって3位とかで。ドイツ2部はずっと混戦だったので、ずっと気を抜けなかったなというのが今の印象で。毎試合プレッシャーもあったし、ピリピリした雰囲気もあったし。でも1戦ずつ、どうにか勝ち点を積み重ねていく。その結果が今に至っている。振り返るとやっぱり簡単ではなかったなというのが一番あります。
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