kumamoto Football Journal

【マッチレビュー】第2節 vs.徳島/開幕からの連勝で得た手応えと、改めて見えてきた課題。

齋藤恵太

交代出場で期待に応え、加入後初ゴールを決めた齋藤恵太

  • 2016明治安田生命J2リーグ第2節
  • ロアッソ熊本 1−0 徳島ヴォルティス
  • 得点:齋藤恵太(83分)

開幕戦で松本山雅FCをくだした熊本は第2節、アウェイで徳島と対戦。交代出場した齋藤恵太の加入後初ゴールで1−0と、2試合連続の完封勝ちで勝点を6に伸ばした。本稿では、熊本に帰って来てからの監督や選手のコメントを交え、この試合をレビューする(※現地取材を行わないアウェイゲームに関しては、試合を終えての監督・選手のコメントをお伝えしながら、ゲームのポイントを振り返ることにします)。

 

ゲームコントロールとカウンター精度の向上が今後のテーマ。

熊本の清川浩行監督は、開幕戦から先発を2人入れ替えた。高柳一誠に代えて上原拓郎をボランチに、そして岡本賢明に代えて中山雄登を右のアウトサイドMFで起用した意図を次のように話す。

「まずは風や雨など天候状況、それとゲーム展開を予測して、蹴り合いになる状況が考えられるので、そうなると中盤が絡む回数が少なくなる。当然、アップダウンが激しくなるので、運動量のところにウェイトを持っていった」

序盤にペースを握ることに成功したのは、この判断も有効だったからだろう。立ち上がり7分にカウンターから上原拓郎がシュートに持ち込む場面を作っているが、この試合では左ワイドで先発した嶋田慎太郎がやや中よりのポジションを取る事によってコンパクトなゾーンで相手ボールを奪う場面も少なくなく、同時に左サイドバック黒木晃平が上がっていくスペースも創出。開幕戦で「奪っても1発でクリアしたり、逃げるキックが多かった」(清川監督)という反省も踏まえ、自陣で奪ってからも狭い局面を細かくつないで打開し、広いエリアへ展開するという形を作った。特に顕著だったのが39分。インターセプトして縦パスを入れた黒木はその勢いを持ったまま駆け上がり、清武功暉、嶋田とつないで背後のスペースへ。黒木から平繁龍一を狙った低いクロスは相手に引っかかったが、守備から攻撃への切り替えにおいて共通意識を持ってプレーに表現できた場面だった。

後半に入ってからは前節同様に運動量が落ちた事も影響して徳島にペースを握られる展開になったものの、決して全体は自陣に押し込まれっぱなしになったわけではなく、「下げすぎないでなるべく高い位置、自分たちのゴールから遠い場所でプレーできた」と園田拓也は振り返る。その分、バックラインの後方にできたスペースを渡大生に抜けられる危ない場面はあったが、65分に迎えた決定的なピンチは佐藤昭大が勇敢に出てセーブ。見事無失点で乗り切った。

「あまり早く出すと、一発の体力が出るかどうか分からないので、またギリギリの判断」(清川監督)で起用された齋藤は、スピードあふれる突破から83分の決勝弾につながる右CKを演出して期待に応えたが、この試合ではやはり、GK佐藤をはじめ、1つ高いところまで潰しに出た園田や植田龍仁朗、そして開幕戦に続き危険な局面を察知して身体を張ったカバーリングを見せた藏川洋平ら、守備陣の奮闘に目を向けたい。

佐藤昭大と植田龍仁朗

徳島の攻撃を落ち着いて跳ね返したDF植田龍仁朗(左)と2試合連続完封のGK佐藤昭大

佐藤に関しては、プレシーズンに話を聞いた澤村公康GKコーチが「鹿島で長くプレーした影響もあって、ニアと頭上を抜かれる事だけは絶対にダメという意識が強い」と話していたが、徳島戦を受けての評は、「エアバトルでも1対1のセーブでも、自分からボールに向かって行けた。意識が変わってきた手応えは、僕も彼も感じています」と話す。佐藤自身、「勝つとか負けるとかいう結果以前に、全力で戦う事だけは約束しないといけないと新体制発表の時にも話したし、試合の中でのゴールキーパーの立ち居振る舞いが、味方の選手に与える影響も小さくない」と話している。

無失点での連勝は、ここまでの時点ではいうまでもなくベストな結果。しかし一方ではまだ課題もある。開幕戦に比べれば自陣に押し込まれる時間そのものは短くできたが、やはり後半に苦しい展開になったことは継続して修正が必要。これはゲーム体力と合わせて試合のコントロールに関わる部分で、「体力的にも落ちてきたところで『奪いに行く』という思いが強すぎると、前と後ろの間が間延びして危ない形を作られる。そういう時間は『受け身になる』のではなく1度リセットして、どうコンパクトにして奪いに行くか、全体がもっと連動するようにならないと、もっと質の高いチームが相手になるとやられる確率が上がってしまう」と、清川監督は言う。

ただ、この2試合、耐える展開も含めて先制できていることも大きく、また無失点で抑えていることによる自信も得ている。一方でより安定して、楽に試合を運ぶためには、攻撃で畳みかけることも重要になる。その意味では、徳島戦で何度か作ったカウンターからの好機をしっかりフィニッシュへと持ち込みゴールに結ぶ、最後の質を高めることがこれからのテーマになっていく。

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