【高校】平成28年度 熊本県高校総体・男女決勝レポート
■男子決勝
熊本国府 1−0 熊本商
4月の地震の影響で会場変更などを余儀なくされたなか、7日(火)、水俣市のエコパーク水俣で平成28年度熊本県高校総体の男女決勝が行われた。男子決勝のカードはここまで無失点で勝ち上がってきた熊本国府と、6連覇を狙った大津を準決勝で逆転の末にくだして勝ち上がった熊本商の対戦。
序盤は熊本商が左サイドMF上村明司の仕掛けなどから攻め込むが、熊本国府はゲームキャプテンのDF久野龍心、GK生田千宝らを中心に枠へのシュートを許さない。
「昨日の準決勝の前半がとても悪く、ゲームの入りを意識していたのでうまく入れた。あとは、監督からは徹底して距離感のことを言われていました」と久野が話した通り、佐藤光治監督が選手達に求めたのは適切な距離感でバランスを保つこと。「ボールは持てていたので失い方には気をつけながら」(佐藤監督)ミスマッチを生み出し、サイドを起点に攻撃の形を作るというのが、描いていたゲームのイメージだった。
徐々にペースをつかんだ熊本国府は、中盤のMF坂本幸広らから広く展開して熊本商をゆさぶる。前半の24分に生まれたゴールも、右サイドで作ってから中へ送り、「ニアで1人潰れたところにペナルティスポットのところへ入っていく、練習していた形」(FW杉田達哉)でフィニッシュに持ち込んだもので、最後は杉田がファーのサイドネットへ流し込んで先制に成功した。
リードして試合を折り返したものの、「熊商さんは残り15分に強い」ことも警戒していた佐藤監督は、「そうしたところの回避の仕方」もマネジメントしつつ、早めの追加点を狙いFW高原悠太らを投入。結果的に追加点は取れなかったが、前線からの守備も効いて1点差を逃げ切る形で15年ぶりとなるインターハイ出場を決めた。
「熊本(の代表権)を獲るイコール、全国で戦わないといけないということ。全国大会へいくのが目標ではなく、上位にくい込む事が目的だ、ということを生徒たちには言ってきましたた」と佐藤監督。チャンスを作りながらも追加点が奪えなかった事に関しては、「チャンスをしっかりモノにする、そういうところは個でもチームでもまだまだなので、もうひと回り大きくなれるよう鍛えて、インターハイに向けて準備したい」と話す。
だが一方、今回の地震を経験した事で、「ボランティア活動にも率先して参加する子が多く、そういう『誰かのために動ける』という人間性は、うちのサッカーらしい行動がとれたのかなと思います」とも述べる。チーム全体としてのリスク管理、あるいはリスクをかけた攻撃のなかでそれぞれが役割を果たすんだという意思や覚悟が、決勝戦で表現した距離感やサポートの連動といった部分に少なからずつながっている。
「地震のあとたくさんの方から支援をしてもらっているので、熊本が少しずつでも元気になっているところを、サッカーを通して全国に見せられたらと思います」(杉田)と、熊本代表としての自覚を持って、今月の九州大会、そしてインターハイへ挑む。
一方、惜しくも敗れた熊本商だが、最後まで運動量も落ちず非常に良く鍛えられていた好チーム。両サイドからの仕掛け、相手陣内に入ってからもコンビネーションで崩そうとトライする姿勢、そしてベースになるハードワークや球際のバトルなども1人1人が献身的。数ヶ月後には高校選手権の熊本県予選も始まるが、短い期間でもさらに変貌して、冬も楽しみな存在になりそうだ。
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