【マッチレビュー】第12節 vs. 北海道コンサドーレ札幌/結果は連敗も、前節からリカバーして首位に善戦。
- 明治安田生命J2リーグ第12節
- 北海道コンサドーレ札幌 1−0 ロアッソ熊本
- 得点/オウンゴール(67分:札幌)
敗れはしたが悪いゲームではなかった。シュート数も互角の10本(後半は2本)で、与えた決定機も多くない。それでもほんの一瞬の隙を逃さずゴールに結びつけるのが首位を独走する札幌の強みであり、いくつかチャンスを作りながらも得点が奪えなかったのが、熊本が今の順位に留まっている理由でもある。
北九州戦で累積4枚目の警告を受けたDF植田龍仁朗が出場停止となるのを受け、センターバックの1枚を代えざるを得ない状況にあるなか、清川浩行監督は薗田淳と新加入の小谷祐喜を組ませる選択をした。それだけではなく、左サイドバックに片山奨典、ボランチに上原拓郎、左のアウトサイドに菅沼実、さらにFWには巻誠一郎と若杉拓哉と、北九州戦から7人を変更。中3日というスケジュールのタイトさ以上に、「試合に出たくてギラギラしている」(試合後の会見、Jリーグ公式サイトより)というモチベーションを重視。北九州戦で押し込まれる要因となった入りの悪さや、局面での甘さを払拭しようと試みる。
結果としてこれが奏功した。「2トップが献身的にディフェンスしてくれた」と上原は言い、「ボールに近い方がアクションを起こすことを意識して、巻さんの動きを見ながらディフェンスができた」と若杉が振り返るように、札幌の選手達の動きの悪さや判断の遅さも関係していたとは言え、積極的な姿勢を取り戻したことで守備からペースをつかんでいく。
特に良いパフォーマンスを見せていたのが、加入後初先発でJ2デビューとなった小谷だ。ここまで15得点を上げている札幌のFW都倉賢に対しても臆せず身体をぶつけに行き、納めてからの展開を許さない。こうして1人1人が玉際の勝負を意識したプレーを続けつつ、闇雲に奪いに行くのではなく状況に応じてポジションをセット、ブロックを作って対応したことで、札幌にリズムを作らせなかった。
攻撃でも立ち上がりからゴールを意識したプレーが見られ、思い切ったミドルや、隙を見たボール奪取からの仕掛け、巻をターゲットにした落としからの展開など、チャンスは創出。チーム全体で札幌の攻撃を抑えていたからこそ、前半アディショナルタイムの若杉のヘディングなど、好機を確実に決めていればまた違った展開になったろう。
後半に入って札幌の出足が多少良くなったものの60分ごろまではよくしのいだ。ただ、65分頃からの押し込まれる展開、つまりは札幌にしてみれば流れをつかみかけた時間帯、一瞬の隙を突かれた。
「あの時間帯で、もう1つ集中を高めて、良い準備をしないといけなかったし、もっといい声をかけることができていたら、ひょっとしたらあの失点はなかったかもしれないので…、もったいなかったです」とは小谷。「ホームゲームでは今季で一番悪い」(四方田修平監督)流れにありながらも、ここというタイミングをしっかりモノにした札幌の勝負強さが表れた場面だった。
熊本は齋藤恵太、八久保颯、最後は園田拓也を前線に送り出して点を取りに行ったが、先制して慌てず時間を進めれば良くなった札幌の守備を崩すには、後半の攻撃には工夫や押し上げ、あるいはタメをつくっての連動が物足りなかった。そうした中でも、個の力を見せてボックス内へ運んでいった菅沼のプレーなど、得点の可能性を感じられるシーンが見られたことはプラスに捉えたい。
リーグ戦は連敗となったが、早くも中2日で日曜にはFC TOSUを迎えての天皇杯1回戦。このゲームでもさらに新しい力が存在感を示すことが、シーズンの残り1/3で浮上していく鍵となる。