「ゼルビアTimes」郡司聡

【無料公開】第20回東京都サッカートーナメント準決勝・町田vs東洋大学/町田・相馬直樹監督、東洋大学・古川毅監督コメント(3,483文字)

■第20回東京都サッカートーナメント準決勝8月20日19:00キックオフ
味の素フィールド西が丘/1,071人
FC町田ゼルビア 7PK6(0-0) 東洋大学

 

■相馬 直樹監督
——まずは試合の総括をお願いいたします。
「一つコマを進められたことはすごく良かったと思います。トーナメントである限り、次にコマを進めることが大事だと思っています。ウチは連戦の中でチャンスを与えている部分もありますし、その中でチームとして力を発揮できるように戦いましたが、90分、延長を含めた110分の中で勝ち切るところまでは持っていけなかったことは事実です。ただ危ないシーンを作られながらも、選手たちはよく頑張ってくれたと思います」

——このメンバーで戦った中での収穫と課題を教えてください。
「収穫は苦しい時間帯を耐えることができたこと。われわれとしては普段延長戦があるレギュレーションで戦っていないですし、交代のカードも切りづらい部分がある中で、特に最終ラインを中心に粘り強く戦ってくれたと思っています。ただ攻撃のところでなかなか時間を作れなかった。何回か時間を作れた場面もありましたが、そういったところでのラストプレーやコンビネーションを含めて、その質が低かったかなと。それは今後の課題になると思っています」

——この天皇杯予選をFC町田ゼルビアというクラブはどんな立ち位置で捉えていますか?
「天皇杯への道を切り開く大会ですし、選手にも話しましたが、東京都サッカートーナメントというタイトルが懸かった試合でもあります。プロである以上、タイトルを獲ることが仕事でもあると思っています。そのタイトルは求めていかないといけないと思っています」

——仮に本戦に出られた場合の話になりますが、天皇杯はカテゴリーが上のチームと対戦する機会にもなりますし、自分たちの力を発信する機会にもなると思います。天皇杯出場の価値をどのようにお考えですか?
「天皇杯はジャイアントキリングが起こり得ることが一つの醍醐味ではあります。ただ自分たちのいまの立場はアップセットを起こそうと相手が向かってくる状況ですので、今日も格好良くはない形ですが、勝ち進んだ選手たちのことは評価したいと思います」

——相手がアップセットを起こそうと向かってくる中で戦う厳しさはありますか?
「(準決勝で敗れた)昨年もそうですし、昨日の神奈川でも起こりました(J3のY.S.C.C.横浜、SC相模原が神奈川県予選準決勝で敗退)。今日の第1試合でも学生チーム(早稲田大学)が社会人チーム(東京23FC)を倒したわけですし、当然簡単ではないと思っています。次のゲームもしっかりと準備をしないといけないとも思っています」

——今日はペ・デウォン選手がキャプテンマークを巻きましたが、それに込められたメッセージとは?
「今日は絶対にラクな試合にはならないと最初から思っていましたし、その中でトレーニングマッチやトレーニングで、デウォンの心の強さ、どんな状況でもファイトしてくれるところを期待していました。もちろん彼一人の話ではないですが。出た選手の中で年齢も上のほうだし、そのあたりも含めてデウォンにキャプテンをお願いしました」

——監督の期待に対してのデウォン選手の実際の評価はいかがですか?
「期待に応えてくれたと思っています。本当に厳しいシチュエーションでカウンターを受けているシーンもあったと思いますが、最後体を張って守ってくれました。もちろん、それは彼一人の話ではないですし、マグ(増田)も内藤もほかの選手も含めて体を張って守ってくれました。ギリギリで人を助けてくれるプレーや、無理が利いたプレーをすることで、それは前にも波及しますし、後ろも勢いを付けることにつながります。デウォンも例えば、最後はオフサイドになったシーンでも心のこもったプレーをしてくれましたが、それができることは分かっていました。そういうプレーを出すことで最後勝ち抜くことに貢献してくれたと思っています」

——決勝は(出身校である)早稲田大学ということで特別な感情もあるのでは?
「初めて(公式戦で)対戦します。監督も古賀(聡)さんでよく知っています。PK戦で勝ち上がったチームが3-0で勝ち上がったチームと対戦するわけですから、われわれにとってはチャレンジャーとして挑まないと。今日は110分戦っていますので、コンディションの調整を含めて勝ちに持っていきたいと思います。相手の大学生のほうが気はラクだと思います。ただ今日に関しては相手をねじ伏せることができたわけで、時間は短いけれどもしっかりと準備をしていきたいと思います」

——延長戦に関しては、町田さんがシュートゼロで東洋大学さんが6本となっていますが、延長戦についてはどのように捉えていますか?
「かなり苦しいなと。マグ(増田)を上げるという選択肢も考えましたが、こちらがボールを持たないとパワープレーはできません。相手が引いてこちらがボールを持つという展開にはなりにくいので、そう考えると難しいなと。相手もパワーをかけて攻めてきましたので、カウンターをしかけられるシチュエーションもありましたが、いつもゲームを出ていない選手が出ていることも含めて、イージーな取られ方をしてしまうこともありました。それが続いて攻撃にパワーをかけられなかったと思います」

——事前の東洋大学のイメージと戦ってみての東洋大学の印象は?
「イメージどおりだったと思います。ボールを外から動かしてくる形だったので、ポイントは真ん中でいかにはね返せるかでした。ただ思ったよりもSBが高い位置を取ってきましたので、本来はSBの裏のスペースを使わないといけなかったのですが、今日はそこに攻撃のパワーをかけられなかったなと思います」

 

■古川 毅監督(東洋大学)
「失点をせずにゲームを作っていけば何回かチャンスは訪れるだろうし、それぐらいの成長を天皇杯予選や総理大臣杯で経験してきた。総理大臣杯も明治大さんにやられたときは最初に不用意な形で失点をしてゲームが壊れてしまっていたので、守備のところで安定感を出せれば十分にやれるんじゃないかというイメージはしていた。(無失点という結果については評価できるのでしょうか?)総理大臣杯の試合を振り返って、同じ過ちをせずにミスから学んで次に生かしてくれれば、敗戦の意味があるということで映像を見せたりした。ディフェンスラインの選手にとっては見たくないシーンだっただろうけれども、特にネガティブになる必要はないからここから学ぼうとこのゲームを迎えた。1週間ほどしか準備期間はなかったが、公式戦の中で格上相手にこの間の成長は見せてくれたんじゃないかと思う。(事前に町田のストロングポイントなどはどんなことを落とし込んで臨んだのですか?)J3のゲームを一度見たし、誰が出るかどうかは当日になってみないと分からないが、町田さんはしっかりとボールを動かそうとするチーム。特徴としてはパワーストライカーがいるわけではなく、背後へランニングして縦パスを背後で受ける形やSBが高い位置を取って、例えばCBからボールを入れたときにフリック気味にストライカーにパスを入れてバイタルエリアを使ってくるイメージだった。守備ではそういったことをケアすることを意識させました。攻撃面でのポイントは相手の最終ラインがボールを奪うという狙いの下、食い付いてくることで最終ラインにギャップが生まれたり、ラインがそろわないときがあるので、最終ラインに2枚、3枚が入っていって相手を食い付かせて、その空いたスペースを突いていくこと。また遊馬に圧力はかかるだろうけど、ボールを受けて落とすぐらいの時間は作れる選手なので、遊馬に対してほかの選手が良いサポートの距離感を保てればバイタルエリアで前を向くこともできるんじゃないかと思っていた。それができれば相手とのフィジカルの差は生まれないんじゃないかと思っていた。選手たちはそれを体現してくれたと思う。今日の試合のようなプレーを続けていければ、個々の選手たちも見てもらったときに評価してもらえる。ただ仮に天皇杯に勝ち上がった場合でも、J2やJ1のクラブともこういうゲームで勝たないと相手を悔しがらせることはできない。惜しいで終わってしまうと、結局相手は『ヤバかったな』で終わってしまう。勝つか負けるかで大きな差がある。今回の結果で大学としても惜しいではダメなんだと共有できる。さらに上のレベルで試合ができるようにやっていければと思う」

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