「ゼルビアTimes」郡司聡

【無料公開】天皇杯1回戦・盛岡vs町田/盛岡・鳴尾直軌監督、井上丈選手、松田賢太選手、町田・相馬直樹監督(5,564文字)

■天皇杯全日本サッカー選手権大会1回戦8月30日13:00KICK OFF
岩手県営盛岡運動公園陸上競技場/476人
グルージャ盛岡 0-3 FC町田ゼルビア
【得点者】町田/20分 37分 重松健太郎、74分 戸島章

 

■鳴尾 直軌監督(盛岡)
——まずは試合の総括をお願いいたします。
「町田さんとはJ3リーグでも対戦している。なんとか拮抗したゲームに持っていく中で勝利することを思い描いていた。ただ先に失点をしてしまうと、相手との力の差もあるし、難しいゲームになると思っていたら、0-3というゲームになってしまった。今日は前半からわれわれの出足が良くなく、加えて町田さんのボール際の強さ、セカンドボールへの執着心に圧倒されてしまったなと思っている。少しボールを持たせてもらう時間もあったが、シュートまでいけるシーンを作れなかった。守備を機能させて拮抗したゲームに持ち込みながら、相手の良さを消しつつ、自分たちの良さを出さないと良いゲームに持ち込めないのかなと感じている。今日はJ1と対戦できるチャンスを手にできるゲームでもあったが、その気持ちを表現できずに結果的に残念なゲームになった」

——試合は[4-4-2]で始まって、二枚替えのあと、3バックへの布陣変更をしましたが、選手たちに戸惑いはあったのでしょうか?
「ミーティングの中でいよいよという状況になっていれば、普通にやっても勝てない状況になっているだろうから、状況によってはシステム変更もあるし、逆にリードしていれば5バックで逃げ切ることもあると話してきた。また点を取りに行きたいのであれば、3バックにして両ウイングバックを高くしてポゼッション率を上げる、シーズン序盤のような高い位置から攻める形をやるかもしれないという話をしてはいた。ただそれをトレーニングでやってしまうと、本来[4-4-2]でしっかり守るということがボケてしまうのかなと思ったので、共通認識として想定させておくけど、最初のプランを遂行することを考えていた。ただ途中から[3-4-2-1]にしてぶっつけ本番に近い形だったが、まったくやったことがないことではないので、チャレンジをさせた」

——今日の3バックの出来についてはどのように感じていますか?
「町田さんは相手の2トップがボールを引き出すことがうまいチームだし、最後のほうにはサイズのある選手(戸島章)が出てきたので、後ろはマッチアップして、カバー役がいて、分かりやすい部分もできた。ここは機能する、ここは難しかったという問題ではなく、チーム全体として勝つために何をすべきかが重要なので、ただ布陣を変えた時点でうまくいっていないんだなと思ってはいる」

——前線に益子(義浩)選手を起用した意図については?
「前線からのプレスをある程度しかけたいと思っていたけど、ただ(プレスに)行き過ぎると相手にはがさせるので、ブロックを作って守備をすることを考えていた。守備をして飛び出すという意味では、いまいる前線の選手の中で守備と攻撃がハードワークできるとすれば、彼(益子)が良いと前線に起用した」

——3枚目のカードは松本(圭介)選手でしたが、その意図は?
「1トップの役割をゴール前に飛び込むタイプにするか、最前線をゼロトップ気味にしてサイドから飛び出させるという考え方の中で、前者を選択したが、ただクロスが上がっていないので作りの部分を機能させること、ポゼッション率を上げた中で、サイドから飛び出すシーンを増やせればなと思っていた。ボールを収めてその前(シュートを打つ)の一歩前の段階には行けたと思っていた。もっとプレッシャーをかけてゴールを奪うところまで行ければ良かったと思っていたが……」

——現状、チーム状況としては良くない状況にあると思いますが、チームに根付いている、根っこの(問題の)部分は何でしょうか?
「そうですね……(熟考)。いろいろ問題はあると思う。ある程度、方向性を決めて戦いたいところだが、第1クールでのチャレンジと第2クールで得たもの、そして第3クールにつなげるために、それぞれのクールでアプローチしてきたし、今回の天皇杯はトーナメント戦ということで是が非でも次のラウンドに行きたかったので、選手へのアプローチが変わったことに対する選手たちの戸惑いがあるんじゃないかと思っている。ここからはリーグ戦に集中することになるので、そうした迷いがなくなるように取り組んでいきたいと思う」

——天皇杯予選の県決勝のあとに、1-0で勝てるゲームをしたいという流れの中で、(今日起用された)ボランチ齋藤(恭志)は守備がそんなに良くないというイメージもあるのですが……。
「森英二郎が負傷して、SBを誰にするかで非常に並んだ。田中舜はけが上がりで、万が一120分の試合になったときに難しい状況になるのかなと。守田(創)をSBにしようと考えて、守田と木村(勝太)、左右どちらに配置しようかと考えると、松田賢太とコンビを組んで、守備ができるボランチは誰だろうなとなったときに、なかなか選択肢がなかった。できるだけ体の強い、球際が強い選手がいいなと考えて、守備全体のことを考えると難しい部分があるが、齋藤はボール際の強さは高いものがあるし、展開力もあるのでボール際のところで攻撃に移ったときに攻撃力を発揮できれば良いなと、そうすれば松田と齋藤は良い関係を築けるんじゃないかと思った。またそれは当初からの構想にもあったし、トライさせた。ただ彼の弱さの部分が出てしまったし、セットプレーのマークや不用意なプレーもあの位置でやってしまったということは、素質はあるけど、もう少し経験が必要なのかなと感じている」

——ここからリーグ戦に集中できるという話だが、国体もあって抜ける選手もいる中で、ここ最近のJ3の3試合や県予選決勝は、岡田(祐政)選手と橋本(真人)選手のCBコンビでした。今後、グルージャのディフェンスラインの中心は、今日の小林(亮太)選手と畑本(時央)選手のコンビなのか。岡田選手、橋本選手のコンビなのか、どちらなのでしょうか?
「どっちがということはない。良い状態の選手を起用していくことを考えている。誰が出てもそれぞれが近い力を発揮できる。対戦相手やどういうサッカーをやるかによって(選ぶメンバーは)変化するというイメージを持っているので、競争を良い形で生かしていきたいなと思っている」

——今日はあまり決定機がなかった試合なのかなという印象なのですが、決定機を作れなかった一番の原因は何でしょうか?
「われわれはボールを持って崩せるチームではないし、セカンドボールを拾って、守備で良い形でボールを奪ったときが、力を発揮できるときなのかと思っていたが、なかなかそういうシーンを作れなかった。相手CBには、はねかえされたし、逆にウチのCBはなかなか弾き返せなかった。そういう意味ではボール際の強さ一つひとつが、決定機を作る機会になっているのかなと思っているので、そういう場面(ボール際の強さを発揮する場面)を作れなかったことがチャンスを作れなかった原因なんじゃないかと思う」

——0-2で折り返して、後半に向けてはどんな指示を出したのでしょうか?
「町田戦のときにしっかりと守って拮抗したゲームに持ち込んだ場合と、ある程度前からボールを奪いに行って拮抗したゲームに持ち込めた場合があったので、今回はどっちにすべきか、非常に悩んでいた。ホームであり、アグレッシブな攻撃をしかけたかったので、前線の運動量に期待したが、そのあたりの行けるときは行く、引くときにはしっかり引こうと、その整理ができていないのかなと思ったので、後半に向けてはとにかく前から行くよ。行けるチャンスは全部逃さずに前から行こうという話をして後半に臨んだ。0-2で失うものはない状態だったので、それによって守備の部分はスッキリしたと思う。その勢いもあって後半のスタートは球際の部分でアグレッシブな印象はあったと思うけど、その一つ先に行けなかったのでそこは課題かなと思う」

——周囲が第3クールに向けて期待していることはゴールを奪うことで、勝ち負けよりもチームが一つになって戦うとか、覇気を感じる戦いを見せることだと思われますが、正直覇気を感じられません。周囲は覇気がある戦いを見たいと思っていると思います。そのあたりはどうしていこうと思っていますか?
「おっしゃられるとおりだと思います。今日の試合に関しては、そのあたりが感じられませんでしたし、足元がうまいとかではなく、控えには足元のうまい選手も置いたが、とにかく今日は走ること、走ってほしいなと思っていました。ただそういった(走ることや覇気を持って)戦うことのバランスが保てていない状況があって、それぞれの方向性の中でまだ選手それぞれが思うサッカーというのはあると思うが、チームとしてのサッカーはこうだと方向付けて、やらせるように私のほうでしっかりとコントロールしないといけないと思っていたので、そういう大まかなイメージはあるし、それに近付けられるように取り組んでいきたいと思っている」

 

■MF 20 井上 丈(盛岡)
「チームとしてやりたいことをしっかりと全員で統一できなかった。相手のCBからCBに入ったときに自分がプレスをかけに行ったり、フリーで持たせないアプローチをするとか、そういうことができなかった。僕たちは守備から入るチームだし、コンパクトにしてプレスに行けなかったことが相手にボールを持たれた原因だと思う。守備だけに追われて攻撃をできずに終わってしまった。(攻撃について)僕はサイドでクロスボールを上げたり、シュートを打ったり、そういうプレーが狙いだった。攻撃でもチャンスを作れず、攻撃に出る回数自体も少なかった。そこは課題でもあるので反省している。途中から1トップ2シャドー([3-4-2-1])になって攻撃に出る形になったけど、変則的なシステムなので、中盤で相手にボールを持たれてしまったり、サイドを突かれたりしていることが多かった。相手がそういうところを上回っていたと思う。ポジションやシステムを変更して、チームとして対応できなかったことが敗因の一つだと思う。(J3リーグ再開に向けて)同じ過ちを繰り返さずに全員が積極的にボールに食らい付くことで、結果が変わってくる。失点をゼロに抑えて、1点でも取ったら、ウチは守り切れるチームだと思う。次の相模原戦に向けて、チームを高め合っていけば勝てるんじゃないか」

 

■MF 8 松田 賢太(盛岡)
「完敗かなと思う。試合の入りは悪くなかったと思うけど、攻守両面でセットプレーを大事にしていこうと監督から言われていた中で、先にセットプレー1本でやられてしまった。点を取られると厳しいということは自分たちでも分かっている。失点した後にガクっと来てしまった。(試合途中に[3-4-2-1]にシステムが変わったことについて)監督からもそういうことがあり得るかもしれないから準備してほしいと言われていた。配置は気にならなかったし、スムーズに入れたと思う。(チームの一体感や覇気について)ほかのチームよりも個々の力は劣っている部分があるので、チームで戦わないといけない。試合に出るために毎日の練習を100%やることで(試合に出られるかは)決まってくる。競争意識を高めないといけない。国体もあって、チームを離脱する選手がいて、難しい部分はあったかもしれないが、試合に出る以上、全力を尽くさないといけない」

 

■相馬 直樹監督(町田)
——まずは試合の感想をお願いいたします。
「まずは少し天候も悪い中、ここ遠く盛岡まで町田からたくさんの方が応援に来てくださいました。感謝申し上げたいと思います。盛岡さんとはリーグ戦ではいつもタイトなゲームを戦って、前回はわれわれのホームですが、敗戦を喫しています。そういうゲームが盛岡さんとは続いていますが、勝利を信じて盛岡まで来てくださった方々に勝利を届けることができてうれしく思っています。選手たちを後押ししてくれたことに感謝しています。ゲームのほうはリスタートの形からだったが、先に点を取れたことが大きかった。試合のスタートは五分の戦いの流れだったと思いますが、われわれが先に点を取れたことが大きくわれわれにとって優位な状況に持っていくことができたと思っています。今回の試合は遠征ということもあって、ベテラン勢を起用しないと決めてこちらに乗り込んできました。その中で誰がリーダーシップを取れるのか、実際に選手にもそういう話をして彼らを送り出しました。キャプテンマークを巻いた平をはじめ、みんなそれぞれがチームを引っ張るプレーを見せてくれたと思っています。ひとまず天皇杯が空きまして、次はリーグ戦に戻りますが、J3としては第3クールに向けて良い勝利をつかめたと思っています。勢いを付けてリーグ戦に臨みたいと思っていますし、連戦となりますが、J1クラブの名古屋さんに挑戦する権利を得ましたので、思い切って戦っていきたいと思っています」

——約1カ月前にホームで盛岡相手によもやの敗戦を喫したわけですが、その教訓をどう修正して戦いましたか?
「2週間後にまた対戦がありますので、すべてをお話しすることはできませんが、まずは先ほどの話ではないですが、五分のゲームがずっと続いていて、勝てる試合もあればドローの試合もあって、この前のように敗戦する試合もある。その中で、相手に対してネガティブな印象を持ってほしくないという、持っていきかたをしました。その中で選手たちは自信を持ってボールを動かしています。そういったことと早い時間帯に点を取れたことが全体の流れで良い方向に働いてくれたと思っています」

——結果的に重松選手は2ゴールを決めました。公式戦では13試合ぶりのゴールでしたが、長らく点を取れない期間、練習と試合での重松選手は監督の眼にどのように映っていましたか?
「本来の彼はFWの選手ですが、われわれのチーム事情の中で、アタッキングの中盤でプレーしてもらっています。その中でゴールに向かうプレーが減ってしまっていたり、彼の春先は練習生としてチームに参加してきました中で、トレーニングマッチでゴールも決めて、ガムシャラさもあったのに、どこかいまゲームに出られている中でそういった姿勢が薄くなってきている部分があったんじゃないかと思っていましたし、本人にもそういう話はしてきました。中盤の選手で起用している以上、ゴールを奪うことだけが彼の仕事ではないですが、彼自身が持っている特有のギラギラしたものが失われていました。ここ最近、2、3週間前ぐらいでしょうか。彼にそういう話をして、次第にそういったものを取り戻しつつあったので、いつしかゴールが生まれるんじゃないかと思っていましたし、実際に今日の結果によって彼の自信にもつながると思います。そうしたギラギラしたものをチームに還元してくれたらいいなと思っています」

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