「ゼルビアTimes」郡司聡

【無料公開】J3第27節・YS横浜vs町田/YS横浜・有馬賢二監督、宗近慧、町田・相馬直樹監督コメント(5,859文字)

■明治安田生命J3リーグ9月5日18:00キックオフ
ニッパツ三ツ沢球技場/1,631人
Y.S.C.C.横浜 0-2 FC町田ゼルビア
【得点者】38分 オウンゴール、53分 久木野聡

 

■有馬 賢二監督(YS横浜)
——まずは試合の総括をお願いいたします。
「選手たちには創立29周年のホームゲームで、今までの自分たちのチームを支えてきてくれた、作ってきてくれた先輩や仲間に自分たちの情熱を見せようと伝えて試合に入り、その試合の入りは気持ちを見せてくれたゲームだったと思う。ただ最初から警戒していたセットプレーでやられてしまったし、当たり前のことを当たり前にやらないと勝ちには近付かないんだなとあらためて思った。ちょっとしたことでゲームを落としていくんだなという感触のゲームだった。でも選手たちは感謝の気持ちを表に出して戦ってくれたし、常にこういう感謝の気持ちを持って、ピッチに立っている意味を感じながら戦えば、もっともっとできるということを選手たちに言いたいゲームだった」

——チームとして良い入り方ができた中で0-2の敗戦でしたが、敗戦につながった決定的な原因は何だとお考えですか?
「先ほども言いましたが、分かっていてやられることが多い。一人が分かっていてもサッカーはそこから水がこぼれるもので、出ている11人、サブメンバー、またメンバーに入れなかった選手も考えないといけない。気付いていない選手がいるのならば変えていかないといけない。例えばファウルをするなという声かもしれないし、味方に『お前行け』とチャンレンジさせた中で、カバーに入る声だったりが必要。サッカーは一つのミスが失点につながることもあるし、小さなことが積み上がって失点につながることもある。一人ひとりの意識も大事だし、ウチのチームは一人ひとりがすごい力を持っているわけではないので、ミスをミスでなくす努力が必要。いろいろなことを積み上げていくことでミスはなくなっていく。100%を出し切って、初めて勝負になる自分たちだと思っている。お互いに100%を90分間出し切れる、お互いに90分間、言い合えることが足りないチームなんだなと思っている」

——事前にセットプレーを警戒していたとのことですが、セットプレーの対応策や事前に選手たちに落とし込んでいたことはありますか?
「セットプレーの準備はするが、相手が何をしてくるか分からない中、何が危険で何を消しながら最低限失点にならないようにするためには、ストーンを2枚にするとか、壁の横を抜けてくるシュートがある中でどこに壁を立てたらいいのか、考えないといけない。ただいろいろなアクシデントがある中で、ストーンがいるべきところにいなかったりしていた。それは映像を見て検証をしてみたいと思う。これまで町田さんにはセットプレーで苦い思いをさせられてきたので、それでも入れられてしまうということは、まだ準備が足りないのかなと。ただ失点の場面はもう一度検証していきたい」

——非常に良い入りでしたが、相手が10人になったあとにブロックを作られて、縦パスも入らない状況になりました。そういう状況になったときにあらためてどうするべきだったのでしょうか?
「もちろん、ボールの置きどころ一つで縦パスを入れるチャンスを作れるだろうし、ボールを動かしたときにフリーランできる選手がいないといけない。ウチとしてはCBとSBの間を誰が取りに行くかという話をしている中で、常に縦パスを入れられるボールの動かし方や立ち位置も含めて、ボールを動かしている間に縦パスを入れるポジションを常に取ることも大事だと思う。そういう連動性やタイミングの質を上げていかないと、なかなか引いてブロックを作った相手を崩すことは難しい。ただそのチャレンジはやり続けないと崩すことは難しいと思う。でもテンポ自体は悪くなかった。縦パスを入れられる体の向きや立ち位置も含めて、もっともっと意識しないと難しいのかなと思う」

——相馬監督からも話が上がったのですが、10人になって数的優位に立ったチームは推進力を失ったように見えましたが、その原因は精神面でしょうか? もしくは先制点を与えたダメージが響いたのでしょうか? そのあたりどのようなお考えでしょうか?
「最初はスペースがある中に飛び出していく形や、味方を追い越す動きでチャンスも作れたと思う。(試合前には)とにかく前半は慌てるな。ボールを動かしていく中で相手を疲弊させていけば十分だと。その中でフィニッシュで終わる、アウト・オブ・プレーで終わらせて、ボールも保持していれば相手の足は止まってくると話していた。そういうイメージを持って試合を進めようとしている過程での失点だった。そして失点したあとは前がかりになってカウンターを食らうことを気を付けようと後半に向けて話している中で、起点になるところを意識していたけれども、起点をつぶせずにカウンターを食らってしまった。自分たちがボールを持って主導権を握って試合を進められるゲームが多くあるチームではないので、慌てずに保持しながら相手を走らせる余裕が持てるチームになっていかないといけない。トータル90分でゲームを考えるようになると違う結果も出てくると思う。あとはセットプレーの話だが、対策はもちろんそうだけど、無駄なファウルをしないことを強調して試合に入った。でも結局は勝負というものはそういう細かいところで結果が分かれるのかなと思っている」

 

■DF 15 宗近 慧(YS横浜)
「(試合を振り返って)最初の入りは結構良かったし、やりたいこともできていたけど、相手が退場したあとの失点はもったいなかった。相手が退場者を出せば有利になるのに、さらに失点をして慌ててしまった。落ち着いて戦えずにシュートを早く打ってしまっていた。セットプレーになる前の場面でも、僕もボールホルダーの近くにいたので、もっと寄せて挟み込むような形を作れれば良かった。セットプレーになる前に突き詰めるべきことを突き詰めていけば問題が起きることもない。状況を判断して、もっと寄せるべきなのか、二人で囲んだのならばアプローチを詰めてボールを奪いに行くのか、そういうことを判断しないと上には行けない。それができないとチームとして勝利を手繰り寄せることはできない。(11対11のときはスペースがあって、数的優位に立ったあとはスペースがなくなったと)相手はやることがハッキリして中を締めて守っていた。外へ揺さぶりながら中を突こうとしていたけど、縦パスを通せなかった。相手からすれば怖くないだろうし、試合が終わったあとに町田の選手と話しても、怖くなかったという話だった。ボールを失うことを恐れ過ぎた。もっと中にパスを通しても良かった。遠めからシュートを打つことも必要だった。アイディアも少なかったし、どうやったら崩せるかというのもなかなか引き出しが少なかった。攻撃が単発だった。(チームとしては創立記念マッチだったので気持ちも入っていたのでは?)クラブの方も力を入れて活動をしてくれた中で迎えた試合だった。試合に来てくださった方々もすごく多かったので、勝ちで締めくくれれば良かった。それもできずに悔しい結果になってしまった。(チームとして当たり前のことを当たり前にやろうとしている中で、それが前半の最初はできていたと思うのですが?)最初はできているけど、途中からできなくなることは練習の中でもある。当たり前のことを当たり前にやろうということを何日間かはできたけど、残りの日はできないとか。続けてできるようにならなければ試合で表現することはできないし、練習でできないことは試合ではできない。練習がすべてなので、練習をしっかりとやっていかないといけない。でもそれはいつも言っているんだけど、できていないからこういう結果を招いているのかなと思う。もっと僕が変えられるようにやっていきたい」

 

■相馬 直樹監督(町田)
——まずは試合の総括をお願いいたします。
「隣町の横浜まで町田からたくさんのサポーターに来ていただいてホームのような雰囲気を作っていただいた中で、最後、笑顔で帰ってもらえることをうれしく思っています。10人になるような展開を支えてくれたのはサポーターの方々の声援が大きかったと思っていますし、そのお礼を申し上げたいと思います。ゲームについては、早い段階で10人になるという展開になりました。正直、それによってゲームの流れが大きく変わったと思いますし、最終的に我々にとっては良い方向に出たと思っております。立ち上がりは長いボールが多くなってはいましたが、YS横浜さんの一つひとつの球際や縦への推進力に押されるような展開になりました。その中でいくつかチャンスは作っていましたが、そのいくつかのチャンスを決められずにいたと思います。我々が1人減って、相手のほうが人数が多くなったことで我々のやるべきことはハッキリしましたし、YS横浜さんは数的優位に立ったことで球際の強さや縦への推進力が失われる部分があったのかなと思います。結果的に少ないチャンスを決めることができて、我々にとっては最終的に良い形でゲームをクローズできたと思っています。失点ゼロであることも含めて、この結果はチーム全体の守備に自信が付くものだと思っています。今後に向けて、こういう試合をたくさんはしたくないですが、こういうゲームを勝つことは上位に上がっていくためには大事なことです。結果を手繰り寄せたことに対して、選手たちを称えたいと思いますし、ホームのような雰囲気を作ってくれたサポーターに本当に感謝したいと思います」

——1点リードして後半に入って、相手がロングボールを放り込んできた中で、深津選手、増田選手のCBコンビは落ち着いていたと思いますが、彼らへの評価をお願いいたします。
「真ん中の2人だけでは守り切れませんし、前からパスコースを限定することも必要です。1人少ない中で選手たちがよくやってくれていると思います。(CBコンビは)特に横のボールへの強さを感じますし、1人少なくなった状況でもしっかりと強気にラインをコントロールして、最終ラインで相手の攻撃をコントロールすることもできていたと思います。また最終ラインでよく守備をオーガナイズしてくれたと思っています」

——4試合ぶりの公式戦出場となった髙原選手、深津選手、李漢宰選手らベテラン勢に対して、監督は試合前に「クオリティーや意地を見せてほしい」というお話をされていましたが、実際の彼らの今日のプレーをどう評価しますか?
「彼らにもプレッシャーはあったと思います。実際に3試合は彼ら抜きのチームで勝利を収めていますし、来週の水曜日に天皇杯で名古屋への挑戦権を得た選手たちがいました。そしてリーグ戦に変わった中で、パッとリーグ戦の試合に彼らが入っていくことは、チームに対してもプレッシャーにつながる空気があったと思っています。ただ図らずも10人になるという、チームが一つの方向に向きやすいシチュエーションになったことでリーダーシップや勝利への気持ちを含めて、それらを勝利に結び付けてくれたと思っています。彼らだけでなく、天皇杯で自信を付けたチームの力もあります。こういった競争を続けていけることが、残りの3か月で勝利の確率を少しでも高める一つの要因につながると思っています」

——ゴールを決めた久木野選手に対する評価は?
「(最初は久木野のゴールとアナウンスされた)1点目は公式記録がオウンゴールに訂正されたようですが、10人になってからの局面で1トップに入った中で、彼が点を取れるかどうか、時間を作れるかどうかは大きなポイントだったなと思っています。そういった中で1つ目はセットプレーで彼が競ったところからオウンゴールが生まれましたし、チーム2点目は彼のスピードを生かしてカウンターの脅威を与え続けてくれた結果だと思っています」

——10人になった場面で監督がどんな指示を出されるのか、興味があったのですが、あまり監督は指示を出されていなかったように見えました。実際のところはどんな指示を出されていたのでしょうか?
「数的不利に立つのは今季3度目だと思いますが、長い時間という意味では、アウェイでの富山戦で同じような状況はありましたし、その試合は10人になっても勝つことができました。そのときに出ていた選手ばかりではないのですが、10人でどう守ってどう攻めるかは11人でやっているときと大きく変わることはありませんから、選手たちは自信を持ってやってくれたと思います。あえて言うと、久木野が(前線から相手を)追っかけ過ぎていたので、それよりもカウンターの脅威になれるかどうか、時間を作れるかどうかということのほうが重要でしたので、少し相手にちょっかいは出してほしかったですが、(久木野が前線で)攻撃の起点を作ることで相手の攻撃の自由を奪ってほしいぐらいのことは話しました。選手たちが自信を持ってやってくれたと思っています」

——先ほど監督もおっしゃられていましが、押されていた展開の中で10人になって展開が変わって面白いゲームになったと思います。11対11の状況が続けば、相手に押される展開が続くことになったかもしれませんが、そうではなくなったことで、相手の前への推進力がなくなったことでやり方を変えた部分はあったのでしょうか?
「あの形(引いてブロックを作ってカウンターを狙う)以上は難しいと思います。10人になった28分の段階で、置いてあったキャストの中で違ったことができるようなことがあれば(選手交代を)考えるところはありましたが、0-0でしたし、早い時間で点を取れたことを含めて、我々としては(セットプレーで点を取ったあとに)大きな自信を持って追加点を狙う形が、選手や僕の中での適切な判断だったと思います。あのままもし、人数は多いけど、前へ前へ入っていったときにどんな展開になったかは分からないですが、ただ前半立ち上がりからの相手の球際の部分(の勢い)がずっと続くとは思っていなかったですし、どこかでボールを落ち着かせればいいと思っていました。YS横浜さんもパワーを使って試合に入ってきましたので、10人になった瞬間に(パワー)を落とさざるを得ない、落としたいという意識が働いたのではないかなと思っています」

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