「ゼルビアTimes」郡司聡

【★無料公開】J2第9節・町田vs長崎/町田・相馬直樹監督、長崎・高木琢也監督、梶川諒太選手、松本大輝選手、永井龍選手コメント(6,349文字)

■明治安田生命J2リーグ第9節・4月23日(土)13:00キックオフ
町田市立陸上競技場/4,431人
FC町田ゼルビア 1-0 V・ファーレン長崎
【得点者】町田/76分 中島裕希

 

■相馬 直樹監督(町田)
——まずは試合の総括をお願いいたします。
「今日、久々のホームゲームになりましたが、たくさんの方々に集まっていただき、感謝を申し上げたいと思います。前節の会見でも少しお話ししましたが、このたびの震災で亡くなられた方、そしてまだ熊本を始め、九州のほうで避難生活を余儀なくされている方々へ、少し今日は募金活動などもさせてもらった中で、心のこもったゲームを長崎さんと一緒にできたのではないかなと思っています。最後は後味が悪くなった形になりましたが、かなりタフに、そしてお互いに勝利を目指したゲームを、またそういった雰囲気を作っていただいたことを含めて来ていただいた方々に感謝を申し上げたいと思います。ゲームのほうは毎回自分たちのホームゲームで言うのも何ですが、ボールがころがりずらい面があった上に、ゲームの中で風の向きが風上になったり、風下になったりするなど、風の向きが変わる中で、お互いにダイレクトで前へ行くプレーや、セカンドボール、球際の争いが多いゲームになったなと思っています。前半に関しては、そういった相手の徹底したサイドチェンジにラインを下げられてしまった。ただ自分たちは今回のゲームにチャレンジする姿勢で臨もうと、千葉戦で追い付かれた展開からチャレンジャーとして戦っていこうと送り出しました。前へ行こうという部分はたくさんありましたが、長崎さんのほうがセカンドボールを取ること、そして狙いをハッキリとさせてきたことで押し込まれた前半を無失点で終えられたことは大きかったと思います。だいぶラインを下げさせられて、ボックス内にボールが入ってきたことは事実ですが、GK、CB、SBもそうですが、ウチの選手たちがよくフリーにさせずに戦ってくれたと思います。そのあたりは最終的に勝ちを手繰り寄せられた要因として大きかったと思います。後半は相手が少し形と選手を代えてきたこともあって、後半はわれわれも少し前に出られるはずだと高くプレッシャーをかけていきました。そうした中で自分たちの時間帯、相手ゴールに迫るシーンが増えていったと思っています。多分ですが、今回の震災のあとで、長崎はやはり九州ですので、前節試合がなく、いろいろな思いを抱えて臨んできた試合だと思います。そういったことを含めて、前へ出たいという意識が働き、長崎さんのほうが前へのエネルギーを先に使ったのかなと。最後、われわれのほうが相手の隙を突くエネルギーは残っていたゲームだったのかな思います。非常にタフで我慢する時間帯が多く、チャレンジしてくれた選手たちに感謝して、次も同じように……と言うと下がってしまうので、今回を超えられるように準備をしてきたいと思っています」

——終盤にキム・ソンギ選手をボランチに入れましたが、その意図を教えてください。
「長崎さんは前半に佐藤選手を使って、高さの部分で言うと、後半のほうが足元で崩してくるシーンが多かったという事実があったと思います。残り10分のところからロングスローを入れて、3バックの選手が前に残って、3バックの選手が前へ入ってくるケースが増えてきました。そういった中で前節は最後に横からのボールで点を取られてしまったので、ソンギの選手ぐらいのサイズの選手が入ってくると、CBが気を緩めてもらっては困りますが、気持ちの面で安心してはじき返すことがしやすいかなと、そういう狙いを持って、ソンギに(ボランチへ)入ってもらいました」

——セレッソ大阪の結果を受けて、得失点差でJ2首位となりました。今後はどうやって選手たちの心のマネジメントをしていきたいと考えていますか?
「先ほども申しましたが、22番目の立ち位置からチャレンジできるか。昨季、6位以内のJ1昇格プレーオフに進出したチームにどれだけできるか、ということを話して選手たちを送り出しました。苦しい時間帯はありましたが、よくやってくれたと思っています。これからもいかに1試合1試合という姿勢を続けられるかだと思っていますので、そこを選手たちとそういう心持ちでゲームに入れるように今後もやっていきたいと思います。これが38節や39節ならばまた違った心境だと思いますが、まだ10試合にも満たないので、一つひとつ先は長いですが、積み重ねていけるか。そういうことを選手たちとやっていきたいなと思っています。(1試合1試合という姿勢を貫くことについて)僕自身はそう思っていますし、選手がそう思ってくれるとうれしいのですが、僕自身はそう思ってくれていると思います

——今季は昨季と違って、前半は勢いがあって、後半に勢いが減少する傾向がありましたが、今日の試合は後半に押し戻せた、勢いを出せた理由は?
「相手との関係が大きいかなと思っています。長崎さんも現状の成績は満足していないと思いますし、そういった中で立ち上がりにわれわれがチャレンジャーという言い方で主導権を取ってくる中で、長崎さんがそれを上回ろうとして(前半は)来られたと思っています。そういった展開の中でも、焦れずに我慢できたこと。もう一つは後半に0-0のシチュエーションの中で、少し長崎さんのほうが力攻めになった部分があったかなという気がしています。その中でわれわれにスペースができたんじゃないかと感じています。最終的にはよく分かりませんが、長崎さんが前半にパワーを使ってきた結果なのかなという印象です」

 

■高木 琢也監督(長崎)
——まずは試合の総括をお願いいたします。
「準備の段階でわれわれができることを100%やって狙いを持ちながらゲームを進めることができたと思っている。ただ結果が出ずに非常に残念で、その結果が出ないことにはいくつかの原因がある。例えば、町田さんを分析すると、チーム全体がオーガナイズされているチーム。体を張ってプレーをするシーンや、例えば森村選手や谷澤選手のように小技が効く選手もいる。また李漢宰選手のように、心の中の気持ちを表に出せる選手など、いろいろなキャラクターのある選手たちがいる中で非常にチームとしてまとまりがあるチームでもあります。正直に言うと、かなりこのチームを崩すのは難しいと思っていました。対角のボールをSBの背後に入れることを意識して、ラインを下げて、そのセカンドボールを拾っていく、そういう相手の隙を作る作業を今日のゲームで繰り返しましたが、それは良いときも悪いときもありました。ただそれだけを使って攻めると単調になってしまいますが、そういった狙いも相手に抑えられてしまったと思います。ともすれば、ゴールかなというシーンもありました。それは三上主審を筆頭にした4人の審判団の判断だったと思うので何とも言えませんが、ゴールかなというシーンはありました。ただ失点の場面を振り返ると、戻りの動きが遅くなったかなと。そのあたりは町田さんが試合巧者だったと思います。われわれが退場者を出したことも踏まえて、それはいけないことですが、僕もプレーを見ていましたが、正直言うと、ここでは何とも言えません。ただ村上選手はああいうことをする選手ではありません。それは彼が柏や新潟や愛媛でプレーしてきた中で彼があそこまでするということはどういうことか。でも私は彼を信じたいです。いけないことはいけませんし、そのように彼にも言いましたが、ただ彼のパーソナリティーを見ても、絶対にそんなことをする選手ではありませんので、その場面には何かがあったとしか言いようがありません。スカパーの映像やスカウティング映像をチェックして、またあらゆる情報をチェックして、レフェリーのジャッジを検証する役割をしているのは誰か分かりませんが、トップには上川(徹)さんもいらっしゃるので、しっかりとアプローチして判断をしていただきたいと思います」

——コイントスでエンドの変更を選択しましたが、その狙いがあれば教えてください。
「狙いはあるけれども、そんなに大きなことではないし、キックオフを取ったからどうこうということもないと思う。たまには違うところに寄りながら家に帰りたいなというぐらいの感じです(笑)」

——熊本地震のあと、初めての公式戦となりました。熊本は監督ご自身としてもご縁のある場所です。どんな気持ちでこの試合に臨んだのか。そして選手たちへどんな声をかけてピッチへと送り出したのでしょうか?
「僕も3年間お世話になったクラブだし、一刻も早い復興・復旧を願っています。われわれにも一人熊本の選手がいて、彼の家族も被災している中で、試合の内容・結果は勝つか負けるか引き分けるか、それは分からないが、試合が終わったあとにこれだけやったんだというプレー・姿を見せようという話をした。その結果、負けたこと、そして退場者を出したことは残念なことだけど、選手たちが気持ちを持って試合に臨んでくれたことに対しては感謝している。そういう位置付けでゲームをしました」

——長崎さんにせよ、金沢さんにせよ、今年の町田も初めてJ2を戦うチームが躍進を見せるというのが近年のJ2の傾向です。その要因を監督はどのようにお考えですか?
「われわれが昇格したときと、金沢さんや町田さんが昇格したときとは実際に違うと思う。金沢と町田の2チームに共通していることは、複数年で(監督がチームを)指導しているということ。僕は長崎1年目なので、よく分からない部分はあるが、ゲームをするにあたって、J2に昇格してきたチームがJ1を狙おう、J2で優勝しようというのは、予算の規模も考えて難しいと思う。その一方で昇格してきたチームは思い切りやることに集中できるポジションでもあると思う。その1年目を戦ってみて、良い状況ができたときに次にステップアップしないといけないという中で、2年目はもっと順位も上げないといけないし、ポイントも挙げないといけないということで、選手の考え方やチームの考え方が変わってくると思う。昇格してきたチームが徹底するプレーでとんとん拍子に行くことは、僕自身も経験してきたけど、いろいろなおいしいものを食べたいが、例えばご飯と味噌汁だけにしておこうと、あまり考えずにとにかく目の前の相手と、置かれる立場で集中して戦えたことがこういう結果を招いている要因だということは、町田さんにも同じことが言えると思う。その結果、こういう状況があると思っている。今日の町田さんで言うと、中島選手はJ1での経験もある選手だし、そのほかにもJ1とJ2の経験者がいる。力のある選手もいる中で、各チームは分析をしているかどうかと問われるとしていると思うけど、やってみないと分からないこともある。どれだけのスピード感とどれだけの正確なパスや全体的なプレーか分からないのが現状。この試合に向けて町田の試合を6試合を見て、違う発見もあったし、(実際に戦ってみての)ギャップもあった。やはり一度対戦してみないと分からないという側面はあると思う」

 

■MF 23 梶川 諒太(長崎)
最後のクオリティーをもっと上げないと
「拮抗した試合展開の中で点を取り切れないことが長崎の現状だし、それは真摯に受け止めないといけない。とにかくもっと一つひとつのプレーを厳しくやっていかないといけないと実感した試合になった。町田はボールサイドに寄る傾向があったので、空いたスペースを(パク・)ヒョンジンと突ければ良かったし、二人で絡む形は作れていたと思うけど、最後のクオリティーはまだまだ低いと思う。そこのクオリティーをもっと上げないといけない。(後半は)相手の運動量が落ちてきたし、前半の終わりぐらいから間のスペースが空いてきたので、そこを突けるかなというシーンが増えてきたけど、まだまだクオリティーが足りない。下を向いても仕方がない。自分たちがやるべきことは開幕当初に比べて精度が上がってきているので、何か良い一つのきっかけがあればなと思う。(試合の中止が決まってからは町田戦に向けてフォーカスしてきたのでしょうか?)長崎はやることが変わらないので、相手のクセを落とし込む部分はやってきた。(仲が良かった三鬼海とのマッチアップについて)技術が高いし、縦パスで絡んでくるのでやられたくないなと思いながら戦っていたけど、別のチームだったので変な感じはした。頑張ってはいると思うけど、負けたくないなとあらためて思った。海自身もアグレッシブに上がってくるので、それを逆手に取ってやれればと思ったけど、そのあとのクオリティーがまだまだ。そこは改善していきたい。とにかく結果を求めてやらないといけない。結果が出ればチームは向上する。応援してくれるサポーターのためにも頑張りたい」

 

■FW 30 松本 大輝(長崎)
やってやりたいという気持ちは強かったけど……
「自分の出来が悪過ぎて何とも言えない。(故郷である熊本のことが)気になっていたし、親もオレがサッカーをしているということが一番楽しみで見ていると思うから、やってやりたいという気持ちは強かったけど……。逆にそれで空回りしちゃったのかなと。ゴール前までは行くけど、最後の最後で守られて、失点もカウンターからやられてしまった。やり切ることが大事だなと思った。シュートで終われていないことでそこからカウンターを食らうことが一番キツい。成長しないといけないと思っているし、コンスタントに試合に出たい。昨季はプレーオフまで行ったし、今季は昇格を目指して頑張っていきたい」

 

■FW 9 永井 龍(長崎)
自分が点を取らないとチームが勝てない
「今日できていたことはたくさんあったし、今までできなかったこともできている部分はある。やっていることを続ければ点も取れると思うし、勝てると思う。いまは踏ん張って頑張りたい。(梶川選手やパク選手からのクロスボールがチャンスになる場面がありました)開幕から8試合ぐらいしているけど、試合ごとにコミュニケーションを取って関係は良くなっている。関係を良くすればもっと点を取れるようになる。チームが勝つためには自分が点を取らないと勝てないと思っているので、連係を深めていきたい。(オフサイドになった場面はありましたが、あの場面は狙いどおりで?)クロスボールへの入り方だったり、ワンタッチゴールが僕の美学というか得意な形なので決められれば。運が味方しなかったけど、続けるしかない。前を向いて頑張りたい。始動したときはキツかったけど、試合には慣れてきた。オフ明けも走るチームなので自分にはプラスになっている。それによってコンディションも上がってきている。(昨季、セレッソ大阪で負傷したことについて)8月29日の天皇杯1回戦・FC大阪戦で相手のひじが入って腎臓を損傷した。そこからはサッカーから離れて、今季までずっとサッカーをしてこなかった。1カ月ぐらい入院もしていたし、1週間は集中治療室にいた。ドクターも交通事故やトラック事故で亡くなった方とCTやMRIが同じレベルだと言われていた。そこから復活してプレーをできていることを幸せに思う。だからこそ結果を出したい。その試合は70分が経っていて、交代枠もなく、しかもFC大阪という格下相手に負けられなかったので、やるしかないとアドレナリンだけでなんとか戦っていた。終わったあとは、顔は真っ青、唇は真紫になっていたので病院に直行することになった」

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