「ゼルビアTimes」郡司聡

【★無料公開】【マッチレビュー】Fリーグ第4節・府中vs町田/ペスカドーラ町田、白熱の“東京ダービー”で惜敗

■SuperSports XEBIO Fリーグ 2016/2017 第4節・7月1日(金)19:30キックオフ
郷土の森府中市立総合体育館/1,421人
府中アスレティックFC 2-1 ペスカドーラ町田
【得点者】府中/01:17 皆本晃 38:21 山田ラファエルユウゴ 町田/14:46 中井健介

▼まさに“ダービー”

白熱の“東京ダービー”だった。東京都府中市と東京都町田市を本拠地に置く府中アスレティックFCとペスカドーラ町田の一戦は、フットサル版の“東京ダービー”と称されており、平日のナイトマッチにもかかわず、府中のホームアリーナには1,421人もの観衆が詰めかけた。球際では激しいバトルが繰り広げられた上に、ワンプレーワンプレーに対する観衆の反応も熱を帯びていく。郷土の森の空気感は、“ダービー”のそれにふさわしかった。

規定のピッチよりも狭いコートである郷土の森は、その分狭い局面での競り合いが多く、強烈なフィジカルを持ち味とするフィールドプレーヤーを多く擁する府中とのゲームは、局面での競り合いが勝敗に影響する部分が少なくない。敵地に乗り込んだ町田のプランニングは、「しっかりとパスを回してリスクを冒してでも攻めていくこと」(岡山孝介監督)。高い位置からプレッシャーをかけて、局面では強烈なフィジカルバトルに持ち込む傾向が強い府中を、持ち前のパスワークでいなしながら、ゴールを陥れるイメージで試合に入った。

しかし、前節敵地での“王者”名古屋オーシャンズ戦の敗因を引きずる格好で町田は先制点を許してしまう。開始早々の1分17秒。右サイドでFKを与えた町田は、府中のキャプテン皆本晃に直接FKをブチこまれた。府中の皆本がゴールシーンをこう振り返る。

「初めはパスを出そうと思ったけど、GKの立ち位置や味方の動きを見たら、パスを出すほうが難しいと感じた。最初のシュートだったからGKも準備できていないのかなと考えて、ニアが空くと思った。可能性があると感じて決めた」

前節の名古屋戦でセットプレーから5点を取られていた町田にとって、セットプレーの守備という弱点を突かれた先制点献上だった。

▼1点が遠く……

痛恨の先制点を奪われた町田だったが、「リーグ優勝を目指す上では負けられない試合だった」(岡山監督)チームが、このまま黙っているはずはなかった。持ち前のパスワークで相手のプレッシャーを回避しながら、背後を突く攻撃の狙いを持っていた町田は、前半の14分46秒、サイドからのグラウンダーのクロスに中井健介が合わせて同点に追い付く。

スコアが振り出しに戻った試合は、スタンドが醸し出す“ダービー”の雰囲気の下、一進一退の攻防が続いた。町田はカウンターや相手の背後を突く形からチャンスを創出。しかし、チャンスの数は多くとも、町田は相手の体を張った守備を前に勝ち越し点を奪えず。終盤には5ファウルを超えていた町田がファウルを与え、第2PKを献上。これを山田ラファエルユウゴに叩き込まれた。

せめて追い付きたい町田は、残り時間2分を切った時点でフィールドプレーヤーの篠崎隆樹にGKユニフォームを着せて、“パワープレー”を敢行していた戦略を継続。最後の最後までゴールを狙ったが、1点が遠く力尽きた。チームキャプテンの金山友紀が「カウンターやゴール前の決定的なシーンを仕留めることができなければ、なかなか難しい結果になる」と振り返ったように、決定機を逃していたツケを最後に支払う格好で、町田は惜しくも“ダービー”に敗れた。

Photo&Text by 郡司 聡(Satoshi GUNJI)


【監督・選手コメント】
■谷本 俊介監督(府中)
——まずは試合の総括をお願いいたします。
「力が拮抗した相手との試合なので、1点を争うゲームになることをイメージしながら、我慢をして前回のホームゲーム(バルドラール浦安戦)も同じような展開だったが、最後のラストチャンスでビッグチャンスが転がり込んでくるというシナリオどおりの展開で試合を決めることができた。お互いにチャンスがあったと思うし、素晴しい演出をしてくれたレフェリーの存在のおかげで試合も盛り上がった。ホームチームにとっては最高の結果になってくれたと思う。ただあくまでも現時点では通過点に過ぎない。来週のフウガドールすみだ戦もしんどい試合になると思うが、しっかりと勝てるように頑張りたいと思う」

 

■FP 5 皆本 晃(府中)
お互いのレベルが上がって、中盤でのつぶし合いが続いた
「まだ試合が終わったばかりで頭が整理できておらず、何とも言えない状況だけど、とにかく勝てて良かった。相手のプレーも精度が高く、苦しめられた。僕たちも良い攻撃があったし、その一方で止められた場面もあった。その中で監督が言ったように、均衡したゲームになることは分かっていて、それを勝ち切ったことは今後に向けて良かったのかなと。ただ、リーグのためにも圧倒して勝たないといけないと思っている。あとはあまり言いたくないけど、子供たちにとっては、リスペクトができる部分の少ない試合になったのではないか。Fリーグが発展していく上で、お互いにリスペクトし合うゲームが必要だと思う。僕たちは勝利を続けて上を目指していきたい。お互いに最後の場面は体を張っていたし、町田も中盤ではゲームを作れるけど、最後の場面で決め切る力のある選手が少ないのかなという印象を受けた。チャンスの数はお互いに似たような感じだと思うし、『これを外すか』というほどの決定機はお互いに少なかったのではないか。良くも悪くもお互いのレベルが上がって、中盤でのつぶし合いが続いたのかもしれない。それをなんとか打破しなくてはいけないし、それが自分の仕事でもあるけど、最後を打破する場面は少なかった」


■岡山 孝介監督(町田)
——まずは試合の総括をお願いいたします。
「リーグ優勝を目指す上では勝たないといけないゲームだったが、負けてしまって残念」

——内容に関しては良いゲームをしていたと思いますが、なぜ勝ち切れなかったのでしょうか?
「ゴール前までボールを持って行って点が取れないということは、決定力の部分が一番大きいと思う。最後の場面は第2PKで、どちらのファウルでもおかしくないプレーだったと思うが、それ(判定)は仕方がない」

——今日のゲームプランは?
「しっかりとパスを回してリスクを冒してでも攻めていこうというプランを掲げていた。ディフェンス面ではアグレッシブにプレーをして、リスクをかけるところは怖がらずにかけていこうという話をしていた。最近の府中は動きが良かったので、中途半端なプレーをしていたらかわされてしまうことは分かっていた。そこは思い切りよく、アグレッシブに行こうと話した結果、試合の頭から体現してくれたので、選手たちの動きには満足している」


■FP 7 金山 友紀(町田)
試合はまだ残っている。下を向いてはいない
「先週の名古屋戦に負けて、試合に懸ける思いは強かったけど、それが結果につながらず負けて悔しい気持ちです。流れの中でチャンスも多かったと思うし、決定的なチャンスは町田のほうが多かったと思う。ディフェンスに関しては、前節の名古屋戦の反省を生かして、ボールサイドにしっかりと寄せて行こうと話している中で、そこは行けていたと思うが、ファウルコントロールは選手も意識していたけど、その最後の部分でファウルになるようなディフェンスではなく、冷静にやらないといけない。内容は悪くなかったけど、最後に第2PKを取られて先制点も相手のFKからだった。流れの中ではディフェンスで止められているけど、前節の名古屋戦もセットプレーから5点を取られている。

セットプレーのディフェンスは、課題になっている。セットプレーでの守りの連係という意味では1失点目の守りの部分は直接FKを蹴り込まれたので、壁を増やして対応するなりしないといけない。府中の戦い方はいまに始まったことではない。相手のディフェンスにつかまらないように、ボールを回して動いて裏に出て行くことを考えていたし、それを相手はイヤがっていたと思う。相手はGKクロモトを前に上げてきて、前に人数をかけてくる戦い方をしてきたけど、それにも対応していかないといけない。次に戦うときにはその形にも対応できるように、ウチ主導でディフェンスをやりたい。

(東京ダービーについて)近くの府中での試合だし、ここの会場は盛り上がる。僕たちが点を取ったときの沈黙が最高に気持ちが良い。今日も気持ちを入れて戦おうとは思った。(今後の修正点は)セットプレーの守備を改善すること。あとはフィニッシュの場面でしっかりと決めないと、チャンスを作ってもそのチャンスを決め切ることができなければ相手としては気持ちが乗ってしまう。助かったとメンタル的に思わせてしまうので、フィニッシュへの意識は高めていかないといけない。試合は全然残っているし、下を向いてはいない。次の試合に勝って連敗を止めて、一戦一戦を勝っていく姿勢が必要。今後も強い気持ちが伝わるようなプレーや試合をしていきたいと思う」


■FP 13 中井 健介(町田)
チャンスはあったし、もっともっと点を取れる場面があった
「前半から府中が来ているときに、崩せる場面があっても決め切れずに相手に勢いがいってしまった。チャンスをモノにできなかったことが大きいと思う。(ゴールを決めても)チャンスはあったし、もっともっと点を取れる場面があった。1点は取ったけど、もっとチャンスを決めないといけない。(攻撃の狙いは?)前から相手が来ていた中で、特に前半は裏を取れていた。相手は体が強いことも分かっていたし、前から来るので、テンポよくボールを回して、裏を突いていくことが狙いだった。いまはいろいろなセットを試していることもあるし、(大会を制した)全日本選手権のセットもある。また(新加入の)ユウキ(室田祐希)や昇格組の選手が入ることもあるけど、自分たちのベースがある中でもっともっとレベルアップしていかないといけない。1試合1試合全力で戦っているし、練習でもワンプレーワンプレーにこだわってプレーしている。試合で全力を出しているので、ぜひ試合会場で僕たちを後押ししてください」

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