「ゼルビアTimes」郡司聡

【★無料公開】J2第36節・町田vs熊本/町田・相馬直樹監督、熊本・清川浩行監督、齋藤恵太選手、巻誠一郎選手(4,174文字)

■明治安田生命J2リーグ第36節・10月16日(日)16:00キックオフ
町田市立陸上競技場/4,218人
FC町田ゼルビア 1-0 ロアッソ熊本
【得点者】町田/48分 松本怜大

■相馬 直樹監督(町田)
ーーまずは試合の総括をお願いいたします。
「まず今日の試合を含めてリーグ戦は残り7試合となりましたが、われわれのクラブとしてはJ1ライセンスを所有していないため、来季のJ1昇格がないということが公になっている中で迎えたホームゲームでもありました。その結果、正直われわれのクラブをどれだけの方々が応援してくださるのか、不安に思う部分はありましたし、その一方で、対戦相手の熊本さんは、震災の影響もあっていろいろなご苦労された中での試合なので、すべてを出し切る試合をしてほしいと選手たちに話して準備を進めてきました。

その中で今日は4,000人を超える方々にスタジアムへお越しいただき、試合前の応援から良い雰囲気を作ってくださったことで本当にたくさんのエネルギーをいただきました。また、ファン・サポーターのみなさまがゼルビアを盛り上げてくださいましたし、熊本さんとこういう環境下で戦える幸せを共有しようと話して選手たちを送り出した中で、たくさんのエネルギーをスタジアム全体から感じることができました。そんな雰囲気を作ってくださった方々に感謝を申し上げたいですし、ウォーミングアップを見ながら本当に勇気付けられる思いでいました。

ところで試合のほうですが、開始早々に井上裕大が負傷で途中交代を余儀なくされるというアクシンデントがあった上に、PKを決められない展開にもなった中で、熊本さんもタフに戦ってきました。お互いの最近の試合を見ると、球際や攻守の切り替えが激しくなる試合になるだろうと想定できました。そして思っていたとおりの、いやそれ以上に激しい球際の攻防や攻守の切り替えの戦いがありましたが、その部分で相手を上回ることができたと思います。

全体的にシュートの数は少なかったですが、(松本)怜大が足を振り抜く中で素晴らしいシュートを決めてくれました。これまでも点を取れそうなシーンはありましたが、今日は本当に貴重なゴールを決めてくれたと思っています。本人も足を振ってみるもんだなと思っているでしょうし、ほかの選手たちもそう思っているでしょう。ゴールを決めてくれた怜大に続く選手がこれからも出てきてほしいと思っています。

ただ後半は受け身に回りそうな時間帯もありました。リードしたあと、少しバックパスをしてみたり、早い時間帯で時間を使おうという姿勢を見せる場面もありましたが、それが長く続くことはなく、選手たちが前への姿勢を貫いてくれたおかげで勝てた試合だったと思います。その中で一歩、足を出させてくれるプレーができた要因は、スタジアムのファン・サポーターの方々が一緒に戦っていこうというエネルギーを作り出してくれたからだと思っています。そういったスタジアムの雰囲気を作り上げてくださったことなど、いろいろなことに感謝を申し上げて、総括のコメントを締めたいと思います」

ーー相手の背後を突くロングパスなどが効果的に使えていた印象です。それは意図していたことでしょうか?
「そこまで多かったとは思っていませんが、熊本さんがSBが持ったボールに対してプレッシャーをかけに来ていることは感じていました。そのプレッシャーを回避する意味で少し長いボールを入れる形が多かったのかなと思います。SBはあまりボールを持たせてもらえる時間は少なく、一方でCBはボールを持たせてもらえる時間がある中で、顔を上げている選手が背後を突く形を狙っているのは今日に限った話ではないですが、パスの出し手と受け手の狙いが合う形もあったことで、相手にとって嫌な攻撃をすることができていたと思います。その過程で一つPKを取れましたし、そういうプレッシャー・圧力をかけることができていたと思います」

ーーゴールを決めた松本選手に対しては、今週のトレーニングの中で松本選手に対してマンツーマンでクロスボールの指導をする場面もありましたが、ご自身の現役時代のポジションである左SBの選手として、さらに松本選手が成長を遂げるためにはどんなことが必要でしょうか?
「今週はシュートの練習をしていませんので、欲を言えば(今週練習をした)クロスボールでバチンとアシストを決めるプレーをしてほしかったですね(笑)。ただそれは冗談として、これは怜大に限った話ではありませんが、彼も欲と自信をもっと付けてくれれば、もっと上でやれると思っています。いろいろな選手に対して120%でやることを求めてきていますが、そういう気持ちを忘れずに、積極的にプレーしたことが結果につながったことで自信を深めたと思います。今後ももっともっと、という姿勢を出していってほしいと思っています」

 

■清川 浩行監督(熊本)
ーーまずは試合の総括をお願いいたします。
「熊本からたくさんの方に来ていただき、本当にありがたく思っています。そして最後に、町田さんのファン・サポーターみなさまに温かい言葉をかけていただき、本当にありがたく思っています。今日は熊本の地震から半年ということで、なんとか勝ち点を持って熊本に帰りたかったですが、それができずに熊本の方には申し訳ないと思っています。

試合に関しては、前半から厳しい展開になることは予想していましたし、DFの背後にボールを出されることも予想していました。町田さんの2列目から背後への質の高いランニングで危険なシーンも何度か作られました。なんとかそのボールを奪っての素速いしかけ、カウンター、あるいはショートカウンターで状況を変えようと思っていて何本か良い形もありましたが、決めることができずに前半が終わってしまいました。

後半、立ち上がりも『戦う』という部分は落とさず、やるべきことをやろうと言いましたが、立ち上がりにすぐに失点をしてしまいました。それから、前線へ、より攻撃的な選手を入れながら得点を奪いに行きましたが、最後の質や泥臭さが少し足りずに得点することができませんでした。残りの試合を何とか勝ちにつなげなければいけないと思います」

ーー中盤でボールの奪いどころがなかったと思いますが、いかがでしたか?
「相手の最終ラインから出る背後へのボールが多かったぶん、なかなか前に対してプレッシャーをかけられませんでした。中盤のバランスが少し悪くて、相手の出どころに対してプレスに行けなかったと思います。全体的に蹴られる場面が多く、最終ラインが下がってしまった部分もあるので、距離感が伸ばされて、出どころに対してなかなか行けなかったと思います」

ーー黒木選手が9試合ぶりの先発でしたがその評価と、佐藤選手がPKを止めた働きについてはいかがだったでしょうか。
「黒木については、走力を生かしてのサイド攻撃に期待して、今日の試合は起用しましたが、良さは非常に出してくれたと思います。佐藤については、あの時間帯でPK取られましたが、それを防いだことによって、チームの流れはこっちに傾いたと思います。前半をその流れでしのぎ切れたのですごく助かりました」

 

■FW 29 齋藤 恵太(熊本)
ドキドキしながら決定機を迎えてしまった
「相手のCBがボールを持ち出してくる形をしてくる中であまりプレッシャーをかけることができませんでした。それが押し込まれる原因の一つになったと思います。試合の中でCBにもう一枚プレッシャーをかける修正ができれば良かったのかなと。

前半はPKストップもあって、無失点に抑えることができました。相手は後半に勢いを持ってくる中で相手の勢いに呑まれて、僕のサイドから失点を食らったことはハッキリ言ってダメですね。相手が一枚上手でした。前半の決定機の場面はもっと落ち着きがあっても良かったですが、公式戦3試合連続で先発で出られるようになって、経験や感覚が積めてきたのですが、ゴールをもっと貪欲に狙って決めないといけない。それを今日の試合で痛切に感じました。

(あらためて決定機の場面について)普通にトラップできた感触があった。自分の落ち着きで相手をいなせるようにしないと。ダイレクトでシュートを打たなくても良かったかもしれないですし、久しぶりにあんな決定機が来たので、自分の中でドキドキしながら決定機を迎えてしまった。もう一つ余裕を持って、ワントラップできれば良かったと思う。

CBに清武がプレッシャーをかけに行ったときにインサイドハーフもプレッシャーに行ければ、もう一つ高い位置でディフェンスができたと思う。後半の入りで相手が勢いよく来た中で、相手に呑まれてしまったことが失点につながったと思う。相手がパスの選択のときに余裕を持ってできてしまうので、もう少し高い位置でプレッシャーをかけられれば、慌ててロングボールを蹴ってミスを誘うような展開にもなると思う。高い位置でプレッシャーをかけられれば中盤も高い位置を取れるけど、今日はそれができずに相手に押し込まれるような展開になったと思う。ただ球際の部分は日ごろからやっているので、負けたくはなかった。

 

■FW 36 巻 誠一郎(熊本)
最低でも1点を取るチャンスはあった
「相手の先制点がすごいシュートでした。その失点によって、チームがシュンとしてしまったので、同点、逆転するパワーが足りないなと思っていました。ゴールを奪うことや自分たちに流れを引き戻すためのパワーが足りないなと思っているタイミングで起用してもらえました。その中で試合に入って、次第にセカンドボールを拾えるようになり、ボールを奪えるチャンスも増えていく中で、それは今季の課題でもあるのですが、最後の精度やシュートが足りずにゴールを割る場面まで持ち込めなかったことが残念でした。

清武選手とは縦関係のイメージですが、コウキはゴールを決める力があるので、最前線だと前向きにボールを持てないので、自由にプレーさせたいなということで、コウキとは縦関係の位置を取るようにしました。最低でも1点を取れるチャンスはありましたし、パワーを持って途中から入っていけたけど、ゴールまではたどり着けませんでした」

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