「ゼルビアTimes」郡司聡

【★無料公開】J2第42節・町田vs愛媛/愛媛・木山隆之監督、小島秀仁選手、茂木力也選手、町田・相馬直樹監督コメント(6,040文字)

■明治安田生命J2リーグ第42節・11月20日(日)14:00キックオフ
ニンジニアスタジアム/4,519人
愛媛FC 0-1 FC町田ゼルビア
【得点者】町田/35分 リ・ハンジェ

■木山 隆之監督(愛媛)
ーーまずは試合の総括をお願いいたします。
「勝って終わりたかっただけに試合の結果は残念です。勝負の世界は勝ち、引き分け、負けの中で収まるので結果のことはグッと堪えたいと思います。選手たちは頑張ってくれましたが、町田のほうがわれわれを上回っていたことは事実です。そういう意味でも今日の敗戦は残念です。

ただ、スタジアムの雰囲気やプレーオフに行けないとなったときの選手たちの立ち振る舞いには満足しています。決して手を抜く選手たちではなく、いつも全力で戦う選手たちと一緒に2年間仕事をできたことが僕自身の誇りであり、財産です。いろいろなことを認識した2年間でしたが、監督としてのまた一つ経験値が増えたと思います。しんどい、どんな事情があったとしても、そしてどんなときでも、われわれを後押ししてくれたファン・サポーターに感謝を申し上げて、この総括を終わりたいと思います」

ーーこの2年間で愛媛に残せたものは?
「数字もそうですが、それ以上にわれわれのチームはどういうスタンスでフットボールに向き合っていかなければいけないのかを選手たちには伝えてきたつもりです。クラブの財政は豊かなものではないですが、相手よりも頑張り抜く、相手より戦い抜く気持ちを持ってピッチの上に立つ。そういうところで選手たちは成長してくれたと思っている」

ーー心残りはありませんか?
「プレーオフのあの場面で点を取っておけばとか、今季あと二つ、三つ勝っていればと思いますが、それは勝負の世界のこと。自分たちに力がなかったと思っています。心残りが多少はないと人間は先には進めないと思う。またそれをチームの力にして成長してほしい。僕自身もそれを上回っていけるように努力していきたいです」

ーー来季以降、愛媛が相手になった場合、どんなチームだと感じるのでしょうか?
「厳しい嫌な相手になると思います。社長が自分で無骨な選手たちと言っていたが、90分間戦い抜くし、多少技術が伴わなくてもプレーを止めません。そういう意味では愛媛に勝つことは大変なことなんじゃないかと思います」

ーーセレモニーで感極まったようですが、その理由は?
「そんな理屈っぽい人間ではないですし、感情など自分の思いのままに生きています。それがすべて真実。2年前にここに来たときに監督という仕事は、最後どこかで辞めないといけないと思っていました。自分で辞める、解任になるなど、いろいろなパターンがありますが、最後は辞めることになります。

果たして自分が愛媛を去るときにどういう形で辞めるんだろうということは、一番最初に思い浮かびました。ちょっと自分の予想とは違って、こんなに応援してもらって、こんなにたくさん温かい言葉をもらって辞めることに関しては、本当に感謝の言葉しかありません。逆にそういう思いを味わえる監督という職業に戻してもらった愛媛に本当に感謝しています。その気持ちしかなかったです。だから胸にこみ上げてきたものがありました。本当に愛媛に来て良かったなという思いがありました」

ーー退任に踏み切るまでの経緯は?
「先ほども言いましたが、とにかくファンの方たちや一緒に戦ってくれた選手、スタッフ、そしてクラブに心から感謝をしています。ただ、来季、僕が監督をすることになれば3年目になります。ここに来たときに本当にいろいろな問題があって、厳しい中でスタートをして、3年くらいの間にチームをいまの厳しい状況から引き上げられれば自分の仕事としては、最低限の出来になるかなと思って引き受けました。

ただ、1年目に選手たちの頑張りといろいろな人の後押しでプレーオフに行けました。今季もプレーオフを目指すという目標の中で戦ってきました。では3年目、実際に思い描いていたところよりは高いところでトライをするべき1年になるのかなと。それをするかしないかという判断を迫られたときに最終的にはしないという判断を僕とクラブとの間で話し合いをしました。これ以上のことはクラブが来季のチームを運営していくので(クラブに)話してもらえれば良いです。それだけではなく、いろいろなことを判断した中で自分自身が指揮を執らずに違う人が指揮を執ったほうがベストだと思いました。それが大まかな経緯です」

ーーこの愛媛での2年間は今後どのようなものになっていくのでしょうか?
「指導者をスタートしてから決して僕はエリートじゃないと思っていましたし、頭を打たれてきた経験もあります。その中でも何で物が動いたり、人が動いたりすることは最後は心なのかなと。そうずっと思い続けて監督をやったりコーチを続けてきました。その考え方がやっぱり間違っていないんだと。それが一番大事です。それがないと勝負の世界に対しても、何か作り上げていくことはできないんだというのを認識した2年でした。

先ほども選手に話しましたが、僕が今まで指導してきたチームの中でこんなに全員がチームのために戦える、全員がチームのために自分を犠牲にできるグループというのはなかなかありませんでした。今までなかったことを乗り越えることがやっぱり大事なんだと。彼らはそれを証明しましたし、僕もそれをあらためて認識しました。僕にとってはこれからどういう道が待っているか分かりませんが、これからも大事にしたい2年間でした。また、彼らがやってくれたグループとしての素晴らしさは、また次のチームでも作れるように頑張っていきたいです」

ーー今季の10位という数字、20引き分けという数字について、昨季と比べて今季は何ができて、何ができなかったのでしょうか?
「細かいことを言えばキリがありません。昨季が65ポイントで今季が56ポイント。9ポイント足りません。6位の岡山が引き分けたので65ポイントでしょうか。5位の京都が勝ったので69ポイント。昨季、われわれは65ポイントで5位でしたが、それだけ上のチームが上がっています。決してわれわれがダメだったわけではなく、その同じポイントを足せば昨季と同じくらいのポイントを取っています。ということは他のチームのほうがわれわれよりトータルで見て優れていたと。ただそれだけのことです。

もちろん、もう少し点が取れていたらとか、今日の失点で昨季より1失点多いのかな。それはちょっとした誤差だと思います。サッカーはそういったところで差が出ますし、それを埋めるためにナン億円も使うチームがあります。でも、われわれが使ったお金を考えるとその差は致し方ないです。それが選手たちの価値を表すものではないですし、そういう意味ではこの選手たちは本当に素晴らしかったと思います。逆にそういう細かいことを追求することのほうが無意味。ジャーナリストの皆さんには申し訳ないのですが、僕はそう思います」

 

■MF 8 小島 秀仁(愛媛)
ゲームの流れを読める選手にならないと
「僕が浦和で厳しい状況にあるときに、声をかけてもらって1年半前に愛媛に来て、木山さんは僕のことを信じて使ってくれました。本当にお世話になりました。プレー面でも自分に足りないことを真摯に何も包み隠さずに話してくれるので、感謝しています。プロの世界でこういう別れはあるので、それぞれのチームでまた頑張ればいいのではないかと思います。

この1年半は試合に出続けられたので、課題も見付かったし、もっと試合に出たいという欲も出てきました。もっと上のレベルやJ1でやりたいという気持ちもあるので、日々精進して頑張りたいです。

前半は相手にハメられて前になかなかボールを運べませんでしたが、後半は修正をして押し込みました。でも今季は押し込んでも点を取れない状況が続いたので、それが今季を通しての課題だったのかなと感じています。相手の1本にやられましたが、1回プレーを切るなど、ゲームの流れを読める選手・チームにならないといけないのかなと思います。今日の試合に関しては、木山さんになってからの愛媛のサッカーを出そうと話していました。相手どうこうではなく、自分たちからしかける結果だったので、悔いはありません」

 

■DF 15 茂木 力也(愛媛)
ゲームの流れを読む力がまだまだ足りない
「たくさん試合に出るために愛媛に来て、その点ではたくさんの試合に出られたので良かったと思います。得るものも多かったですし、木山さんにたくさん使ってもらえて自分が成長するには良い1年になったのかなと。こういうプロの世界にいれば、監督と選手の移籍は普通に付き物。サッカーをやっていれば、どこかでまた会えるし、そのときに自分が成長した姿を見せたいと思います。

(木山さんから刺激を受けた言葉は?)リベロの選手として年齢は関係なく、指示を出せないとやっていけないと、直接何かを言われたというよりはそういうことを感じました。

(前回の町田戦とは違ってアグレッシブに戦っていました)最近は自分たちからしかける試合をして、うまくいっていたので、このやり方を続けるということで今日の試合に臨みました。ホーム最終戦で前回対戦のような引いた試合はサポーターの方も望んでいなかったと思います。ああいう自分たちからしかける勝負で勝ち点を取れれば良かったのですが、ピンチもチャンスもありました。今季1年は1点を取り切る、1点を守り切る、そういうことが一歩足りなかったと最後に感じさせられました。

今季を経験して、最後の最後で相手が一歩上回って点を取るとか、一歩や半歩の世界かもしれませんが、ゲームの締め方としてディフェンスの選手として体を張ることが必要だったのかもしれません。あとは最後の時間帯に相手の陣地でボールを持てるようになればいいわけで、ゲームの流れを読む力はまだまだ足りなかったと思います。

(リベロのポジションで学んだことは?)いろいろなポジションを経験した中で、リベロをやったときはほかのポジションの選手のことも分かるので、指示を出しやすくなったことはありました。いろいろなポジションを経験しましたが、良い経験で終わっていけないと思います。浦和の阿部(勇樹)さんはどのポジションでプレーをしてもトップレベルでできるので、そういう選手に追い付くためにも、自分自身のレベルを上げたいと思った1年でもありました」

 

■相馬 直樹監督(町田)
ーーまずは試合の総括をお願いいたします。
「まずは遠く町田からたくさんの我々のサポーターに駆け付けていただきました。まずそのことにありがとうございますと申しげたいと思います。また一緒に勝利を喜べたことをうれしく思っています。最後の3試合が前半戦で負けた相手との連戦だったのですが、その3つすべてに勝つことができてうれしく思っています。この結果は選手たち一人ひとりが勝利に集中して戦った結果です。

前半をリードした中で、前半のうちに追加点を取ることや後半の苦しくなってきた時間帯でも、カウンターなどで追加点を取れるようになれば、言うことはないのですが、今季最後の試合でしっかりと勝ち点3を積み上げることができたのも、選手はもちろんのこと、私を日頃から支えてくれているコーチングスタッフ、そしてクラブスタッフやクラブに関わるサポーターも含めた、みなさまの思いがあったからこそ、こういう結果につながったと思います。そうしたみなさまのご支援に感謝しながら、また来年を見据えていきたいと思います」

ーー惜しくも得失点差で届かずに7位という結果に終わりましたが、率直にこの成績についてどのように捉えていますか?
「まだ試合が終わったばかりで、そこまでの振り返りはまだしていませんが、J2リーグで6位という順位は意味があることです。今日の結果にかかわらず、その位置を最終節まで狙える立場であったことにより、そういう目標があってプレーやトレーニングができること、また日々の生活の中でも6位を意識して生活できるということは幸せなことだと感じています。そういった経験が選手の成長を促してくれるだろうと思います。

ただ当初は『22番目のチーム』として、まずはJ2残留を一つの目標にしていました。また今日の他会場の結果がどうだったかは分からず、残留ラインとして想定していた『42』という数字が実際の残留ラインだったかは分かりませんが、実はそういうことを意識しながらシーズンをスタートしたのが正直なところです。でも選手たちがそれを上回る成果を出してくれたことに感謝したいですし、先ほども申しましたとおり、この結果を残せたのも、コーチングスタッフやクラブスタッフ、ファン・サポーターのおかげだと思っています」

ーーシーズンを終えてのファン・サポーターのみなさまへの感謝のメッセージと来季に向けた意気込みをお願いします。
「岡山さんと勝ち点こそ並びましたが、7位という順位に終わったことで、やはり今日の選手たちと同様に、ファン・サポーターのみなさまも落胆した表情がありました。実際にプレーオフに出場できるという次のステージがあるとなれば、それはクラブにとって大きな力になっていくのかなと思います。そのためには、われわれが熱いプレーを見せ続けるのはもちろん必要なことですが、やはりわれわれの力だけでは物事は変わっていきません。J2ライセンスが付与されたという発表がなされたあとも、変わらずにわれわれをサポート・応援をしてくれる方々がたくさんいらっしゃいますが、今後はこれをさらに大きく、もっと熱いものにしていかなくてはいけないと思っています。

われわれがプレーオフに出場する(J1に昇格する)といったステージを狙うにふさわしいチームとなれるように、頑張っていかなくてはならないな、という思いでいます。ファン・サポーターのみなさまへのご挨拶として、『今年のサポートもありがとうございました』という言葉とともに、『これからも引き続きよろしくお願いいたします』という言葉で締め括りたいと思います。

さらに来季に向けては、勘違いをしてはいけないということです。2年目はもっと難しい状況があると思っていますし、もちろん今季、われわれにも苦しい時期もありました。ただ今季に関しては、そこからもう一度、自分たちが自信を持てる状況を作れたと思います。ただこれが過信となったときには、あっという間に崩れるものだと思っています。こういったことは、さすがに今日、選手たちにその話はしませんが、来年もチームを預かる立場としましては、来季はすでにスタートしていますし、厳しい戦いが待っていると思っています。その中で今季、自分たちのやれたこと、やれなかったこと、そして大事にしてきたことをしっかりと見つめて、また来年も自分たちが一番下からスタートするという気持ちでやっていきたいと思います」

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